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  作者: 守利上 響
3/17

洋平

なかなか返事を返さない愛に痺れを切らしていた。メールを送ったのは一昨日。金曜日の夕方だ。喧嘩の後でもあるし、もう一回こちらからメールをするのも癪だ。そのため、洋平はこの週末を終始いらいらして過ごす事になった。もちろんこの休み中も予備校に通っていたが、あまり勉強に身が入らなかった。最近の愛はどこかおかしい。ルルとかいうメル友ができてからと言うもの、メールに夢中で彼氏である洋平との時間より優先順位が高い。ルルとか言う名前だが実は男で、自分よりそっちに心が動いているのでは、と思うときさえある。

考えれば考えるほど胸が痛くなる。本気で愛の事が好きだし、高校卒業してもずっと一緒にいたいと思っている。だから愛がメル友に夢中なのはいい気がしないし、ましてその相手が男で自分よりもそっちに気持ちが揺れていたら自分はどんな行動に出るか解らない。それくらい愛を想ってる。確かに今は自分が勉強勉強で愛には寂しい思いをさせているかもしれないが、受験が終わればそれも無くなる。それまでは耐えていて欲しい。

結局、自分もわがままなのかもしれない、、、



愛は鏡にうつった等身大の自分を真剣にみつめていた。髪型ok、服ok、メイクok、バッグok。と、チェックをしていく。今日は初めてルルと会う待ちに待った大切な日だ。

変な格好をしていくわけにはいかない。最後に全体のバランスをチェックする。

約束の十二時の十五分前。愛の家から駅まで歩いて十分。今から出れば五分前に待ち合わせの改札に着く。愛は自分の部屋を出ると急ぎ足で階段を降り、リビングでテレビを見ながら笑い転げていた母親と弟に、出かけてくる、とだけ言って家を出た。

そのまま急ぎ足で駅へと向かう。今日はいい天気だ。太陽の光を浴びながら愛はこれから初めて会うルルの事を考える。こんな何が起こるかわからないドキドキ感はどれくらいぶりであろうか。愛にとって洋平がはじめての彼氏なのだが、その洋平と付き合い初めの頃だろう。

洋平、、、愛はそこまで考えてはっとした。そういえば洋平のメールを返していない。ルルからのメールを楽しみにしていたあまりに洋平からのメールにがっかりしていたのと、この一週間、洋平は休み時間も勉強していたし、クラスも違うため、すっかり忘れていた。たぶん怒ってるだろうなと思いながら携帯を開いた。そして、洋平からのメールをもう一度確認した。

『今日は何も言わず先に帰ってごめん。』

初めに見たときは何も思わなかったが、冷静になってみると自分がルルとのメールに夢中になって洋平をほったらかしにしたから怒ったわけで、洋平が謝る事ではない。そんなこと初めから解っていたのにメールをシカトしてしまった。今更になって返事を返すのもどうかと思ったが、とりあえずそうしないと自分の気がおさまらないので歩く速さを少し緩めて洋平へのメールを打ち始めた。むしろメールなんかじゃなく直接会って謝れって話だが、今日はルルと会う日であるから、それはまた日を改めて、、、ということで自分で納得した。

『こないだはメールの返事返さなくてごめん。』

とだけ送った。自分でもこれじゃいくらなんでも、、、とは思ったが、それ以上言葉が浮かばなかったからとりあえずそれだけ送ることにしたのだ。今日も予備校のはずだから返事はすぐには返ってこないだろうと思い、送信完了を確認するとすぐに携帯を鞄の中にしまった。だが予想ははずれ、洋平からのメールはすぐに返って来た。すぐにメールを読んだ。

『うん、いいよ。今日はルルってメル友と会う日でしょ?楽しんできなね。でもやっぱメールだけの関係って怖いじゃん。出会い系とかさ、いろんな事件とかあるしさ。気を付けなゆ。』

、、、ゆ? 急いでメールを打ったのか語尾がよくわからないことになっていた。それを見て愛は少し笑ってしまった。

『大丈夫だよ☆ずっとメールしてた子だし。心配しないで (>_<)☆てか今日予備校じゃないの?』

というメールを送ったところで待ち合わせの改札に着いた。丁度五分前だ。改札付近で誰かと待ち合わせているような人はいない。まだルルはいないようだ。メールが来た。今度はルルからだ。少し遅れるというメールだった。了解メールを送り、改札の端っこで壁によっかかった。しばらくして洋平から返事が来た。

『そうなんだけど、熱出して今日は休んだ。ここんとこ疲れてたみたいで、、、つーか学校も休んでたし、、、』

それを見て驚いた。一週間も会ってなきゃそりゃ解らないかもしれないが、彼女である自分が彼氏である洋平が熱を出して寝込んでた事さえ知らなかったなんて、、、 だんだん自分が情けなくなってきた。

返事をどう返していいのか悩んでいると、もう一回洋平からメールが届いた。

『やっぱり知らなかったんだ。俺が寝込んでる事。ほんとは今日見舞いにでも来て欲しいけどメル友と会うんだもんな。来れるわけ無いよな。』

少し突き放すような言い方にどきっとした。何だかんだいってやっぱり怒っているのだろう。今までは愛がどんなに冷めた態度をとっても洋平が我慢して愛の機嫌が直るのを待ってくれていた。だが今は洋平の方から不満をぶつけてきた。それには返す言葉が無く、ただごめん、とだけ送った。

返事はすぐ返ってきた。

『、、、いや、ごめん。別に怒ってるわけじゃないんだ。ただ、最近愛は俺よりメル友って感じだからさ。寂しいんだよ。愛は今どうかわからないけど、俺は愛のこと好きだよ。』

好きだよ、、、  その言葉に目が少し潤んだ。ものすごく久しぶりに聞いた言葉だ。そのぶんその言葉の重みも増して聞こえる。

そんなとき、携帯にルルからの電話がかかってきた、、、

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