玲子
「子供ができたの」
そういわれて少年はくわえていた煙草を落としそうになった。
「はぁ?」
あまりのとつぜんの言葉に声がうらがえってしまった。
今年の夏に15になったばかりの中学生が言い渡される言葉ではない。
しかし、目の前に正座して座っている女の目は真剣だ。
「病院に行ってきたの。三ヶ月らしいわ。あなたの子よ、どうする?」
目の前の女は落ち着いた様子で聞いた。どうするもなにも、まだ中学も出ていない少年に何ができるわけでもない。少年は煙草を灰皿に押しつけた。
着信音がなった。今度こそルルからだった。
『返事遅れてゴメン
(>o<;バイトだったんだ〜!
てかそっかぁ、箱入り娘なんだねぇ☆べつにただ単に聞いただけだから気にしないで☆じゃ待ち合わせは十二時くらいでいいかなぁ???』
返事が返ってきて安心した様子の愛は即座に返信メールを打ち始めた。
最終的にお互いの携帯番号を交換し、待ち合わせの改札のどこにいるのか分からない時電話することに決まった。
愛は来週の土曜日が楽しみで仕方がなかった。ルルはどんな子だろうか。実際に会ってもメールの時と同じように楽しくできるだろうか。そんなことを考えながらその日は眠りについた。
「どうしたんだ?急に呼び出したりして。」
政夫は待ち合わせの喫茶店に入り、呼び出された相手の顔を見つけるなり言った。
「急にごめんなさい。どうしても早くあなたに言いたいことがあって、、」
「いや、休憩中だから大丈夫だけど、、、
玲子から呼び出すなんてめずらしいな」
政夫はいぶかしげな顔をして見せた。ウエイトレスが後から来た政夫に気づき、お冷を持ってきた。
玲子はコーヒーを一口飲み、少しためらった様子で政夫を見た。
「どうした?」
なかなか話を切り出せないでいる玲子を不思議そうに見つめる。
玲子の口が開く。
「妊娠したの、、、」
「えっ、、、?」
あまりの急な言葉に声がでなかった。落ち着こうと水を一口飲んだ。
本当に?という視線を玲子に送る。玲子は軽くうなづいた。
「そうか、、、わかった。玲子、結婚しよう。」
「政夫、、、」
「もう付き合い始めて五年になる。そろそろ結婚してもいいと思ってた。子供もできた事だし、ここらへんで一回落ち着こう。」
「うん、、、」
「でも、避妊は一応してたのにできるときはできちゃうんだな。」
そう、避妊は毎回ちゃんとしていた。確かに毎回コンドームをしていたからと言って必ずしも避妊できているわけではない。しかし、あの子とは違った。毎回会うたび二人とも普段の自分を忘れて抱き合っていた。避妊なんか特に考えてもいなかった。直接中に出す事は無かったが、コンドームなんか平気で使っていなかった。別に愛していたわけじゃない。なんとなく同じような生活に飽きて、いつもの自分ではないような自分を誰かに知って欲しかった。それか、政夫の仕事が忙しく、寂しかったのかもしれない。
罪悪感を感じた。このお腹の子は政夫の子じゃない。でもまだ子供なあの子ではなく、政夫の子としてこのお腹の子を育てる事を決意したのだ。
五年間も続いていて、その間の少しの過ちでできてしまった不幸な子。私が絶対どんな手を使ってでも守ってあげる。どんなひどい女になっても。玲子はそう誓ったのだ。
いきなりなんの話??? と思ったかもしれませんが次でわかるかも。いや、その次かも、、、




