九条と愛
誕生日が近いと言う事で、今日はデパートに買い物に行った。
最近財布が欲しいなと思っていたので財布を中心に見ていた。
今日は買わなかったが、次、愛の誕生日に会う約束をしたのでその時に九条が買ってくれるらしい。
「そろそろ、時間だね。送ってくよ。」
二人はレストランで食事をしていた。
洋風なインテリアが目立つ、小さなレストランだ。
窓辺には手作りらしい色とりどりのテディベアが飾ってある。明るい雰囲気のお店。
小さいながらお値段ははっていた。
二人あわせて二万三千二百円也。
またもや九条が払ってくれたが、さすがに申し訳ない気がして払うと言ったがだめだと言われた。
見栄を張って言ってるわけでもなさそうだ。やはり九条は金持ちらしい。
「さ、乗って。」
と言いながら車の助手席のドアを開けて愛を促した。
愛はそのレディーファーストにちょっとくすぐったさを覚え、恥ずかしそうに笑った。
「じゃ、行くよ。」
エンジンをかけ、アクセルを踏んだ。
二人を乗せた車はレストランの駐車場を出ると、愛の家へ向かった。
その間、二人の会話は尽きなかった。
ばかばかしい話もしたし、真面目な話もした。
洋平の話・・・。
押し倒されたことは愛自身、忘れたいことだったので、その事には触れなかったがそれ以外はきちんと九条に話した。
そうしたら九条はただ、ありがとうと一言言った。
そして愛の家の近くで車を止め、煙草を一本つけた。
「ちょっと話す時間ある?」
愛の手を握った。
「うん、いいよ。」
ほんとはギリギリだったが、九条ともっと一緒にいたかった。
九条は煙を肺いっぱいにいれると、思い切りはきだした。
「いや、やっぱりだめだ。親に心配かけちゃうからね。」
そういうと握っていた愛の手を放し、煙草を車の灰皿に押しつけて火を消した。
「えっっ・・・。あたしなら大丈夫だよ?」
急に意見が変わりびっくりして九条を見る。目があった。
「またメールするよ。」
頭をぽんぽんとたたかれた。
子供扱いされたような気がして少しむっとして見せると九条は笑って愛を抱き寄せた。
「ほんとはこのままつれて帰りたいんだよ?」
耳元でささやく声はとても優しく、愛の全てを受け止めてくれるような響きがあった。
それにずっと酔いしれていられたらどんなに幸せだろうか。
優しい声と抱かれている心地よさに愛は身を任せていた。
気づくと九条の顔が目の前にあり、唇が触れ合っていた。
好きだ。私はこの九条と言う男が好きだ。ずっと一緒にいたい。今、はっきりと確信した。溢れる想いは止められない。愛は自ら九条の首に腕を回していた。だが、その腕は九条によって解かれてしまった。
「なんで?」
聞くと、今度は軽いキスが返ってきた。
「お子様には手を出せません。」
「子供扱いしないで!もう高校卒業するし。あたしの事好きなんでしょう?」
「好きだよ。でもそれとこれとはべつ。」
なにがべつなのかよく分からなかったがキッパリ言われてしまったのでそれ以上突っ込まないことにした。
「わかった。今日は帰る。」
おとなしく帰ることにした。
「ん。じゃあ、また今度な。」
愛は車から降り、車が視界から消えるのを見送るとため息をついた。
「確かに子供だけどさっっ。」
ぶつぶつ文句を言いながら家へと入っていった・・・