表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 守利上 響
1/17

ルル

 貴方と過ごした三ヶ月はとても幸せでした。貴方はとても優しくて、愛しくて・・・

貴方しかいない、そう思っていました。確かにあたしと貴方は歳が十五も離れていて、貴方に取ったらあたしなんて娘みたいな存在だったかもしれません。それでも、あたしは貴方に抱かれている間は一人の女でした。

 急に目の前からあなたがいなくなって、あたしは苦しくて苦しくてどうしたらいいのか解らない。涙も止まらない。何故あなたがいなくなったのかは解っているの・・・ 恋人としてでなくてもいい。もう二度とあたしを抱いてくれなくてもいい。だから、だから戻って来て・・・


 高校三年。推薦で大学受験をしたため暇な毎日。部活もやってない。脳みそをあまり活動させていないあたしのまわりは何故か頭のいい努力家な友達。彼氏もいるけどみんな一般受験。遊んでくれない。・・・ひまだな〜ってなんとなく携帯をいじってたらいつのまにかメル友ができてた。二人。あたしは杏ちゃんと名のってメールをしていた。ルルというタメの女の子と拓という二十七の会社員の男。ルルはなかなかいい奴であたしと合うって言うか、お互いにメールしたいときにメールし合えた。さばさばしてて男らしいんだけど、あたしが悩んでたり、落ち込むような事があったりすると、メールでのやりとりなのに気づいてくれて、話をきいてくれたりと優しい子だった。その転、拓は、何回かメールしていくうちにエッチなメールしか送ってこなくなったから最後の方は無視を決め込んだ。なかなかしつこい奴だった。

 今もルルとメール中。実は今度会おうって事になってそのことでメールしてるのだ。

「愛!」

呼ばれてメールを打つのを中断して声のした方に振り返った。

 洋平だった。

愛の彼氏で高三の初めのころからつきあい始めた。

受験勉強が忙しく、最近はあまり遊んでない。

しかも会っていても愛がメールばかりしているせいで小喧嘩が絶えない。

今もそのせいで少しいらついた声がしたのだ。

「お前俺と一緒にいるときくらいメールやめろよ」

いらついてはいるもののなるべくそれを押さえようとして愛の手を握りながら言った。

最近は学校が終わると洋平の予備校まで一緒に行っていた。今もその途中である。

「だって今ルルといつ会うか決めてんだもん〜。」

またメールを打ち始める。

洋平は呆れたようなため息をついて握った手をほどいてさっさと先に行ってしまった。

愛は少し驚いたが、またか、とそのままメールを打ち続けた。最近は毎回これの繰り返しである。悪いとは思ってはいるのだがルルとのメールが止められないのだ。こんなに人に興味を持ったのは初めてだし、何より、ルルとの会話が楽しくてしょうがないのだ。

メールが来た。

『来週の土曜はだめ???』

『いいよ〜☆何時にどこにしようかぁ???』

『あたしが杏ちゃん家の方行くよ(o^ε^o)家は田舎で何もないし(>o<;』

『じゃあ、横浜駅で待ち合わせでいい???』

『うん☆よいよ〜

 何時にしよっかぁ?杏ちゃんって夜も遊べる人?』

・・・と、メールが続く。

 夜・・・って何時くらいの事を夜と言っているのだろう。愛の家は夜遊び禁止で門限は九時。いまどきの高校生にしたら考えられない時間だ。しかし箱入り娘の愛は親の意向にしたがって、きちんと夜九時には余裕に家にいるようにしている。しかもバイトもしていない。彼氏がいることさえ内緒ににしている。そんな愛が携帯のサイトで出会ったメル友と会うなんて事を両親に知られたら大変な事になるだろう。携帯を取り上げられるだけでは済まないだろう。だから親にはばれない様にルルと会いたい。そう思って、いまどき門限九時なんて恥ずかしくて言いたくなかったけど、正直にメールを送った。


その後、メールはなかなか帰ってこなかった。バイトでもしてるのかなと特に気にせず家に帰った。いつもと変わらず何もする事が無い。愛は制服のままベッドに横になった。なんとなく枕元においてあった読みかけの漫画を読みはじめたところで携帯がなった。ルルかと思い勢いよく起きて鞄から携帯を取り出した。ルルではなかった。洋平だった。今日怒って先に行ってしまったことを詫びるメールだった。そんな事どうでもよかった。とりあえずルルからの返事が欲しかったのだ。

愛は溜息をついた。そんな時、下から「ごはんよ〜」と言う母親の声が聞こえ、携帯を机の上の充電機にさして下へ降りていった。洋平のメールには返事を返さなかった。

最初は誰も遊んでくれないと言う理由からはじめたメル友の関係。だけどメールをしていくうちに暇つぶしの相手に魅力を感じて惹かれている自分がいる。ここまで一緒にいて(正しくはメールをしていて)楽しさを感じた事は無い。出会ってまだ一ヶ月弱、彼氏よりも重要な人物になってきている。メールの内容や言葉遣いからしてどこにでもいるような女の子なのだが、なぜか気になる。そんな自分が不思議で仕方が無い。少し怖い気もする・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ