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You & I -Reverside Drunker-  作者:
第一章"片翼の少女"
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RequiemⅤ

「負け……た……?」


 舞い散る光子の中、倒れるシュナイダー。

 あの体力でプロトリオンフォースを食らってしまってはもう……。


「マスター」


「IRIA……」


「まだ負けたわけではありません」


「勝手なことを!」


「よく見てください」


「えっ?」


 シュナイダーが……立ち上がった?

 よく見ると体力がミリ残りしていた。


「IRIA……どういうこと?」


「マスター、パンドラの技ダークホールは始動補正88.2%、コンボ継続時の補正34%とコンボに組むと総合ダメージ係数がかなり落ちてしまう技です。あの体力ならば無理に脱出して削りダメージを食らってしまうよりそのまま食らったほうが生存確率が高いと当機は計算しました」


「なるほど……それでさっきの私のレバガチャを止めたんだ」


 さすがIRIA、絶体絶命の状況でも落ち着いて戦況を見ている。というかパンドラの技のダメージ補正なんてよく知ってたねIRIA。


「生意気ね、でもその体力でなにができるというのかしら?」


「なんでもやってみせるわ」


 ……いける。

 相手の残り体力は5割強。

 さっきのプロトリオンフォースで私のゲージはMAXだ。

 防御力の高いギューカクにだって半分以上のダメージを与えるあれなら。

 私の新しいコンボ――真・姫スペシャルなら倒しきれる!


「IRIA!新しいコンボだけど、できる!?」


「……イエス、マスター!」


「いい返事だっ!」


 パンドラは確実にこちらに止めをさそうと魔法弾を放ってくる。

 IRIAの絶妙なムーブコントロールにより最小限の動きで魔法弾を避けていく。

 真・姫スペシャルの始動技、シャイニングソード……あれさえ当てることができれば!


「生意気な……この人形共が!」


 来た!

 中距離、この場面でダークフォースを放ってきた。


「避けろIRIAーーーっ!!」


 ただ、叫ぶ。そうしてくれると信じて。

 刹那、スローモーションになる私の視界。

 そして静寂、まるで心臓の音まで聞こえるような静寂が空間を支配する。

 IRIAの表情はただ冷静だった。

 私のシュナイダーは弧を描くように跳躍、隙だらけのパンドラの目の前に着地する。

 そしてその小さな口から放たれた言葉はそうとうに頼もしいものだった。

 


「Mission complete. 後は任せます、マスター!」


 

「しかと受け取った!そなたの忠義と……魂をっ!!」


 

 ……なんだ?この、不思議な感覚……。

 私はなにを口走っているのだろうか。

 姫、そして付き人……私がはるか昔、もっともっと昔に信頼していた……そうか。

 思い出したぞ!もう一つ!


「私は……私は姫だぁぁぁぁ!!」


 シャイニングソードを放つ。

 吹っ飛ばされた相手は壁にぶつかりバウンドする。

 そしてパンドラを地上を走る衝撃波、グランドソードによって拾う。

 たとえ右腕が動かなくとも、コマンドなんて気合でなんとかできるものだ。


「ダッシュだ!IRIA!」


「イエスマスター!」


 グランドソード共にダッシュで接近し、浮いた相手にそのままエリアルコンボを加える。

 着地、そして同時にシャイニングソードでコンボを締める。

 一度光の剣を直し今度は拳と蹴りのみでコンボをつなげていく。

 そしてここでゲージを使用し相手を上空へ打ち上げる技、ヘブンインパクトを入力する。


「そして……ここで最速入力チャージ!」


 先ほどシャイニングソードなどで消費した光の剣ゲージをディスチャージによって回復する。

 チャージを終え、ちょうど落下してきた相手を掴み、画面端へと投げる。

 壁にたたきつけた相手に向けシャイニングレインで追撃。


「これで終わりだ!シャイニング・ソード・ブレイカァァァァーーー!!」


 632146P、素早く必殺技、シャイニングソードブレイカーの入力をする。

 画面が暗転し巨大な光の剣が生成される。

 そして……パンドラは光の剣によって切り裂かれ消滅していった。


「か……勝った……?」


 私は勝ったのか?


「や、やったよIRIA……私とうとうっ……」


「マ、マスター……」


 IRIAが、青ざめたような表情をしている。

 その震えた視線の先にあったのは……。

 


「パンドラ!?」


 

 シュナイダーの後ろに黒い空間と共に転移してきたのは倒したはずのパンドラ。

 あれは確かパンドラのワープ技、プロトディストーションだ。

 でも倒したはずなのに……なぜ!?


「くっくっく……それがあなたの新しい技かしら?水無瀬優紀?」


「な、なんで……」


「真・姫スペシャルですって?笑わせないで、私はこの間ゲームセンターで見たわ……あなたのそのコンボレシピは繋がってなどいないのよ」


「そんな……私は確かに……」


「思い込みの激しい娘ね……そんなことでは真実にたどり着くことなんてできない。5割強を減らしきるコンボなんて夢物語だったのよ」


 私はレバーを動かすもシュナイダーはシャイニングソードブレイカーを放った硬直により動くことが出来ない。


「さようなら、人形さん……」

 


 K.O!


 

 ああ……また私は……闇の中。

 やっと掴んだと思った真実の扉が……また遠ざかっていく。


「水無瀬優紀」


 その声に顔を上げると、皇円寺姫竜がこちらを見下ろしていた。


「勝負は……まだ終わっていないわ」


「なに……が?」


「私が試合前にいったこと、よく思い出してたどり着いてみせなさい……真実に」


 それ以上はなすことはない、とでも言う風に皇円寺姫竜は背中を向けた。


「マスター……」


「帰るよ……IRIA」


「……はい」


 そうだ、姫竜さんはなにか気になることをいっていた。


「サブリミナル……」


 それはなんだったか、聞いたことはあるのだが意味は忘れた。

 家に帰ったときに調べてみることにしよう。

 姫竜さんが何者なのか、何を知っているのか、今回の事件についてどれだけ関わっているのかこれでわかるかもしれない。


「マスター……すみませんでした……私がふがいないせいで」


「ううん……違うんだよIRIA、あなたは悪くない」


 歯をくいしばり、あふれ出しそうな感情を我慢する。


「でも……でもね……」


 IRIAに顔を見せないようにそっぽを向く。こんな顔を見られるのは……嫌だ。


「くやしい……くやしいなあっ……凄くくやしいよIRIA……」


「……帰りましょうマスター。今日はマスターの好きなものなんだって作ってあげますよ」


 IRIAが私を抱きしめてくれたおかげで泣き顔を見られずにすんだ。

 もしかしたらIRIAはもう気づいていたのかもしれないけど、でもIRIAはやっぱり優しかった。


「ありがとう……IRIA」

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