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You & I -Reverside Drunker-  作者:
第一章"片翼の少女"
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Akashic RecordsⅠ

 パチッパチッ……。

 ノイズというよりは火花に似た感覚が私の頭の中でスパークする。

 ここは教室、だったか?

 記憶と意識が混乱している。

 私は水無瀬優紀。よし、大丈夫だ。


 しかしなんだろうか。

 胸の辺りがとても痛む。

 それにこれは……涙?

 私は泣いているのか、なぜ?

 とても辛くて、悲しい?


 そんなはずはない、私はいま充実した生活を送っているはずだ。

 そうだ、辛いことなどなにもない。

 ないはずなのに……なぜ涙が止まらないのだろう。


 そして……とても寒い。

 今は夏ではなかったのか?

 それにここは……窓の外?

 確か落下防止のためのものだったか……そんな場所に私はいる。

 こんなところでなにをしているのだろう。

 右手に握っている手のひらには、なぜか私のものではない消しゴムがある。

 はやく教室に戻ろう。


 ……あれ?

 窓が開かない。

 鍵がかかっているのだろうか?

 私がここに降りたということはなにかしらの理由があるわけで、そして鍵がかかっているということは私に気づかずに鍵を閉めてしまったということなのだろうか?


 ……いや、今嫌な想像が私の頭の中をよぎった。


 "もし、私がいることを知っておきながら鍵を閉めたとしたら?"


 そんなことをする生徒が私のクラスにいただろうか。

 でも、もしもそうだとしたらそれはイジmパチッパチッ!

 思考中の私の頭はまたもスパークする。

 ああ、視界が真っ白だ。

 次に思考できるようになったときにはまた知らない場所にいた。


「ここは……もしかして遊園地?」


 周りを見渡すと様々なアトラクションにたくさんの人々。

 しかしそれらはさながら昔のビデオの一時停止ようにモノクロの人、機械、景色はピタッととまっている。


「冷たっ……!?」


 気がつくと私はたくさんの缶ジュースを抱えていた。

 どうしてこんなにいっぱいジュースを持っているんだろう?

 それになぜか私の心はまた悲しいと、そういっている。

 この状況が悲しいということなのだろうか?

 周りに見知った人物は居そうにない。

 遊園地に一人でいることが、悲しい感情の正体なのだろうか?

 ……そういうものではないような気がする


 またも嫌な考えが私の頭をよぎる。

 "もし何者かによって、意図的にこの状況がつくられているとしたら?"

 でも、もしもそうだとしたらそれはイジmパチッパチッ!

 思考中の私の頭はまたもスパークする。

 ああ、視界が真っ白だ。

 次に思考できるようになったときにはまた知らない場所にいた。


 ここは……学校のトイレ?

 見ると私は上は制服、下はジャージという奇抜な格好をしていた。

 そして洗面台で本来履いているはずのスカートを水で濡らしている。

 なんで私はこんなことをしているんだろう?

 自らスカートを水で濡らして、なんの意味があるのだろう。

 そしてやはりというべきか、私の心は悲しい感情に満たされている。

 それには怒りの感情も含まれていた。

 一体この状況はなにがどうなっているのだろう。


 グチュッ。


 その時、スカートを触る手に嫌な感触を感じた。

 どうやらスカートにへばりついているようだ。

 心なしか、粘着性があるようにも思える。


「ああ、そうか」


 ここで私は確信した。

 私はこのスカートにへばりつく謎の粘着体を洗っているのだ。

 確かに学校でスカートが汚れてこんなところで洗っているのは少し惨めだ。

 悲しい感情はそのためのものだろうか。

 それだけでこんなに涙が溢れてくるものだろうか。

 悲しくて泣いているというよりは、悔しくて泣いている……ような気がする。


 しかし悔しいということは、これは汚したのではなく汚されたものなのだろうか?

 でも、もしもそうだとしたらそれはイジmパチッパチッ!

 思考中の私の頭はまたもスパークする。

 ああ、視界が真っ白だ。

 一体この身に覚えのない体験はなんなのだろうか。

 意識が、はっきりしてくる。

 授業を進める先生の声が聞こえてくる。

 これは夢だったんだな。

 そう私は確信すると目覚めることにした。

 

「ん……よく寝た」


 どうやら目覚めは最悪らしく頭の中がぐわぐわんと朦朧する。

 それでもなぜか、体がいつもより軽い。

 眠っている最中に右腕に体重をかけすぎていたのか、痺れて動かせない。

 仕方ないので左手で髪の毛に寝癖がついていないか確認する。

 あ、ちょっと跳ねてるみたい。


「……えっ?」


 鏡を取り出すとそこにはなんと私ではない者の顔が映りこんでいた。

 いや、違う。

 これは私の顔だ。

 しかし、なぜこんなに悲しそうな、覇気のない、虚ろな表情をしているのだろう?

 私は笑顔をつくろうとした。

 だが頬の筋肉はまるで言うことを聞かず、つり上がらない。


「違う……こんなの私じゃない」


 それになんだ?

 周りの生徒は皆知らないやつばかりだ。

 宮子も春香もいない。

 そして教室を見渡すと、私はそこに意外な姿を発見する。


「・・あ・?」


 なぜお前がそこにいるのだ?

 私はその者の名前を呼ぶ。

 その者はびっくりしたような表情をみせると私の名前を呼び返してきた。


「……ちゃん?」


 その瞬間、私は全てを理解した。

 あれも、あれも、あれも全て思い出した。

 涙が溢れ出した。


 いままで隠れていた感情が一気にあふれ出したのだ。

 唇が、がちがち震えてうまく喋れない。

 手も、震えて言うことを聞かない。

 目の焦点が合わない。

 呼吸がどんどん荒くなる。

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!

 これは全て夢だ!夢なのだ!

 心の闇にすくう魔物が、じっと私を見つめている。

 来るな……来るな来るな来るな!


「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 バチバチバチッ!!

 また、私の頭がスパークする。

 今までよりも大きく、弾けて、そして泡のように消えてなくなった。

 

 

 

 


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