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You & I -Reverside Drunker-  作者:
第一章"片翼の少女"
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Start DayⅣ

「おはよう水無瀬」


「なんであんたがまたいるのさ」


 家を出ると和真が家の前に立っていた。

 昨日といい今日といい、一体何が目的なのだろう。


「一緒に学校行こうかと思ってさ」


 なるほど、それもそうか。

 しかしこの男は私に気でもあるのだろうか?

 なぜわざわざ私と登校しようなどというのだろう。


「そりゃ、水無瀬と話すのが楽しいから。ちなみに惚れてはいない」


「だから私の心を読むな!セクハラだぞっ!」


「いや……ブツブツ言ってるの丸聞こえだからなぁ……」


 ふむ、また私の悪い癖が出たようだ。


「それで?」


「ん?」


 いや、ん?じゃなくてさ。

 またなにか面白い話題でも持ってきたのかと思っていたがどうやら今日は特にないらしい。


「今日は水無瀬の話を聞かせてくれよ」


「私の?」


 相変わらずこの男の考えはわからない。

 私の話なんぞはこんな朝の登校時間の暇つぶしに利用されるようなネタはないはずなのだが。

 そんなことを考えていると、和真は私の度肝を抜く質問をしてきたのだ。


「"ナナ"って子とは……最近どうだ?」


 ……なぜ和真がナナを知っているんだろう?

 確かに和真もPモバをしているはずだが別に私と同じパーティではない。

 私と同じパーティではないということはナナとも接点はないはず。


「ちょっと、なんでナナのことを知っているの?」


 疑問はそのまま言葉になって現れる。

 私の悪い癖だ。

 その私の問いに和真は面食らったような表情をしたと思ったらすぐそれを隠すようにポーカーフェイスを装った。

 なんだろう……たまにIRIAに感じるときのような違和感を、今も感じた。

 この妙な、気持ち悪い感覚は一体何なのだろうか?


「お前、もしかして忘れたのか?」


 思考停止に陥っていた私の脳は和真の言葉によってサルベージされる。


「忘れてたって……なにを?」


「お前がナナのことを俺に教えてくれたんだろうが」


 あれ……そうだっけ?


「おいおい、しっかりしてくれよ……」


 待って、今思い出す。

 まず落ち着いて整理しよう。

 私が、和真に、ナナのことを、教えた。


「昨日のことだぞ?」


 私の思考中の頭に和真の言葉が流れてくる。

 昨日、昨日私が和真にナナのことを……。


「あ、思い出したっ」


 ぽんっと手を叩き、やっと繋がった記憶に満足する。

 そうだ、私は昨日ナナのことを和真に教えてやったんじゃないか。

 つい昨日のことを忘れるなんて私もほんと馬鹿だなぁ。


「はははっ、なんだよ。パラレルワールドが絡んだのかと思ったじゃないか」


 和真は笑うとパラレルワールドの話を持ち出す。

 ああ、私も思わずそんな考えが一瞬よぎったよ。


「笑うなってば。ちょっと無意識にぽろっと言っただけでしょ。忘れてたって仕方ないじゃない」


「ああ、すまんすまん。でも、脅かすなよな。まさか素で忘れてたとは……」


「まったく……まあ忘れる私も私だけどさっ」


 きっと疲れているであろう頭を刺激するようにぐらぐら左右に動かす。

 ちゃんと働け、私の頭よ。


「次からはボケるんじゃないぞ水無瀬」


「言われなくたってそうするわよ」


「うん」


 和真はそれまでの会話を文字通りぶった斬るようにただ、うなずいた。


「どったの?」


「学校」


 彼の指差す先には私の登校すべき場所である学校があった。

 気づかないうちにもうついてしまったらしい。

 今日もさくっと学校終わらせて遊びに行こう。

 まだ校門すら抜けていないのに放課後のことに頭を働かせる私であった。

 うん、いい感じに非模範生徒だと思う。

 これが私が私である所以。私らしさであるのだ。

 

 

 

「で、あんたは教室に着いて早々になにをぐだっているんだ」


 教室に着くなり自分の席へ座り込み顔を伏せている私に模範生徒、宮子が言った。


「登校中に放課後なにして遊ぼうか考えてて、教室着いてみたらまだ一時間目すら終えていないことに絶望している図」


 顔を伏せたまま私は言う。きっと宮子はあきれた表情で私を見下ろしているだろう。手を腰に当てたりしながら。


「ああ、すっかり放課後モードだったのが実はまだ授業が始まってもいないものな。そりゃだるくもなるけど、それはあんたがアホなだけでしょ」


 へいへい、なんとでも言いなされ。

 私はもう立ち上がらないぞ。

 私はどこぞの連邦の白いアレではないのだ。


「このまま放課後まで寝ちゃいそう……」


「待て、本当にあんたは学校に何しに来てるんだ」


「出席日数」


「だろうね」


 もはや会話するのも面倒になってきた。

 このまま寝ちゃってもいいのだろうか。


「あんたのような不良には修正が必要だ。春香、この子なんとかしてー」


 とうとう自分だけでは私を起こすことが不可能だと思ったのか、宮子は超模範生徒である春香に声を掛け始めた。

 宮子さん、それはずるくない?

 春香に説得されればあわよくば授業を真面目に受けてしまうかもしれないじゃないか。


 ほら、今にも春香が私の目の前にやってきて説教をするぞ。

 来るならこい。今日こそは反抗してやるぞ。

 ……あれ?


「おっかしーな?今日春香休みらしい」


 これはラッキー。

 しかし、おかしいって?

 別に学校を休むくらいどうってことないでしょ?


「いや、春香はあんたのようにサボったりはしないし……夏風邪とかかな?」


 あれはあれで結構ガサツなところがあるし、大方クーラー付けっぱなしで寝て風邪をひいたりでもしたのだろうか。


「まあ、そういうわけだから私は今日は寝ることにするよ」


 どうやら春香は学校に来ていないみたいだし、これで私を阻む障害は無くなった。


「ちぇ、明日春香に言いつけるからね」


 そういうと宮子は自分の席へ帰っていった。

 ふん、負け犬の遠吠えというやつだ。

 まあ明日私がどんな修正を受けているかは知らないがとりあえず今は休ませて貰おう。

 ふわぁ……おやすみなさい……。

 

 


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