杞憂
「マウントには悟られておらぬな」
「ええ、発掘物から改竄される前の歴史を知れば学園長が拒絶反応を起こす可能性がありますから抜かりなく」
「奴の魔人掃討の徹底振りと魔人制作に対するこだわりからは魔人に対する殺意と敵意しか感じんからな。あやつに敵対されるのはごめんじゃ」
「なんだぁ……びっくりした」
木陰に隠れて怪しい会話を聞いていたユーデリカは胸を撫で下ろす。
もしかして何らかの謀略でも巡らせているのかと思ったが、単なる発掘物に関する杞憂ごとであった。
「マウントがそんなことで怒るわけないのに。2人とも心配しすぎだよ」
そんな心配ごとしなくてもいいのにと思いながらミユキの動作の滑らかさから何世代も先の技術の粋が集められたジェネレーターがあるんだろうなと思いながら見ているとミユキが続けた。
「今の学園長には私も抵抗が叶いませんからね。かつて拾ってもらった命を無駄にはできませんし」
「拾ってもらった命か。そういえば、お主は魔人に救われたことで過去の歴史に疑問を持って発掘物を求めておるんじゃったな」
「ええ、その方は助けるとどこかに消えてしまわれましたが今も恩を感じています。彼の名誉のためにも決して魔人が悪さをするだけの存在ではないと証明したいんです」
「人の名誉のために未知を紐解く。いい心がけじゃ。ただ知識欲のために発掘物から魔法の深淵を知りたいと思っておる儂も見習いたいもんじゃ。……できるだけ発掘物を回収したいもんじゃがな。悪ガキどもが悪さをするせいで監視の水晶が学園全域に設置されとるから中々難しいの」
「この国の貴族さえ学園長ほどまともならよかったんですが、これはもうしょうがないですね。私たちが回収に乗り出すと怪しいことこの上ないのであとはロージに発掘物の回収を期待するしかないです」
「この人たちも大変だな。……うーん、あとちょっとで何か湧いてきそうなんだけど」
苦労している2人に同情しつつも、ミユキの体から新しいジェネレーターのインスピエーションが生まれそうになりユーデリカは頭を捻らせた。




