格の差
「無詠唱魔法がこれほどに成長性が高いものだったなんて!」
特別講師のマーリンの教えの元、無詠唱魔法の有用性に気づいてアリシアが感嘆の声をあげる。
この世界の人間は詠唱が最強だと信じる奴が多いからまさに天地をひっくり返るような思いなのだろう。
「ダメだ! 皆みたいにうまくできない! 俺はゴミ野郎だ!」
「しっかりせんか! たわけ!」
「ぐああああああああ!」
一方で主人公のロージはいつもの通りのヘタレムーブをかまし、マーリンに杖で小突かれている。
基本的にゲームでもこいつらはこんな感じだったので良好なスタートと言ってもいいか。
「俺が間違ってた! 一生懸命やるんだ!」
「おっと手がスベちまったぜ!」
ロージがパワーアップして立ち上がるとタイラーが事故に見せかけてファイヤーボールをロージに飛ばして始末しよう始めた。
「何? 嘘だろ!」
が、パワーアップ後のロージが発動させたファイヤーボールに飲み込まれてタイラーのボールを跡形もなく消えた。
「ば、化け物じゃねえか!」
タイラーはやっとロージの異常性に気付いたのか、震えながら呟いた。
ちょうどいいし、しばらくちょっかいをかけないように脅しでもかけとくか。
「彼の力がわかりましたか。私は彼を保護してるのではなく、君を保護していたんです」
「俺を保護……?」
「そうです。どう考えても君が彼に敵うはずがないのですから。その気になればいとも簡単に彼に消されてしまいます。君にできることはせめて抵抗できるように力をつけることだけです」
「っ!」
脅しをかけると現在できた実力差は分かったようで歯噛みしつつ、タイラーはロージを睨みつけ始めた。
力つけたらまたやり始めそうだが、しばらくは大丈夫そうだな。
まあステップをバイバイする時まで大人しくしてくれればそれで十分だ。
「すまんがわしは用があるので行くでな」
「はい。構いませんよ。お願いしてここに呼んでるのはこちらの方なので」
「ではの」
タイラーの教育が終わるとマーリンがそう話しかけてきたので承諾する。
いつも暇そうにしているのに珍しいものだ。




