バレバレの密談
「よくきたね、タイラー」
「伯爵風情が俺を呼び出して何のつもりだ!」
「はあ、無礼だよ君」
「!?」
タイラーが急に呼び出され、同じマロン派閥である義理から向かうと格下の貴族から不躾な態度を取られ、困惑する。
普通ならば歓待されるものと思っていただけにタイラーの衝撃は大きかった。
「侯爵とはいえ経営破綻し始めて、派閥も潰れた君の家はもう完全に落ち目なんだよ。そんな負け犬が独占技術を持ち、実質的に侯爵家以上の力を持つ僕に対して口がなってないよ。弁えてくれないかな」
「経営破綻……落ち目……」
学園長による制裁で傾いただろうとは思っていたがそこまで行っているとは想像だにしてなかったのでタイラーは目を白黒させる。
立場をわからせられたことを確信したステップは言葉を続ける。
「そう。それが今の君の立場だよ。どれだけ情けない存在がわかってもらえたかな。そんな情けない君に僕は救いの手を伸ばそうとしているんだよ」
「情けないだと? ……救いの手てのは何だ?」
ステップの侮辱にキレそうになったタイラーだったが自分の家の惨状を知らされただけに強く出られず、怒りを飲み込んで詳細を聞く。
「いや学園長の教育の妨害と学園長の下について不祥事を起こしてくれたら君の家に援助してあげようと思ってね」
「ば!……何考えてやがる。 奴の恐ろしさをわかってねえ。そんなことをしたらどんな目に遭うかわかったもんじゃねえ……」
「あれ? 君に尻込みが許されると思ってるのかな。よく考えなよ。これ以上のチャンス、誰が落ち目の君に与えてくれんっていうんだい。もう選択肢なんてないようなもんだと思うけど」
「っ……!」
ステップの提案に前回のトラウマを思い出し、全力で拒否しようとするがステップが諭され、抵抗する力が弱まった。
このままでは落ちていくだけなのだ。
唯一立て直すとしたらこいつの気まぐれにかけるしかないのかもしれない。
そう思うと目の前の提案が何よりもの救いの手のように思えてならなくなった。
「受けるよ。受けてやるよ」
「ふ! いい返事だ!」
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「やってんなあ」
そんなタイラーとステップの悪巧みを学園長室でコーヒーを飲んでくつろぎながらマウントは見ていた。




