第3王女
圧倒的というしかない。
国を滅ぼしておかしくない魔人の群れが一撃で半分消し飛んだ。
学園長であるマウント・ボンボンといえば僅か11歳で魔人を倒したことを噂で聞いており、傑物だとは認識していたが今の姿はそれを大きく逸脱している。
傑物など言葉では当てはめられないほど強大すぎるのだ。
戦神と言った方が幾分しっくりくる。
いや単騎で一体でも強大な力を持つ魔人の群れを易々と殲滅するのだからむしろそのものとしか思えない。
「どうだ私の夫は?」
マウントの闘いぷりに第3王女──アリシアが圧倒されていると扇子を煽りながら姉である第2王女のレーナが問いかけてきた。
圧倒的な戦闘力を見せつけた婚約者のマウントを持つレーナの力を誇示するように思える問いであまり面白いものでもなかったが、王位継承権の序列の高いレーナに失礼を働くわけにもいかず、魔人から降りてレーナの方に歩み寄る。
「姉様の婚約者として相応しい武勇と品性を持つ方だと思います」
「フフフ、相応しいか。これは光栄なものだな。あれと同じに私が見えていたとは」
レーナは口元を扇子で隠すと立ち上がってアリシアの方ににじり寄ってくる。
敵対者を徹底的に潰す女傑の接近にアリシアが気圧されると耳元でレーナが囁いてきた。
「お前の救世主はあれほどまでに成長するのか?」
「っ」
現時点で一般人と遜色のない主人公──ロージがマウントほどまで到達できるとはアリシアには思えなかった。
返事ができずにいると実に楽しげな笑い声を残してレーナは去っていく。
王家に伝わる予言にはロージが救世主として書かれていているが、その後の予言はない。
今の言葉はロージが予言を果たした後はマウントによってこちらを滅ぼしてやるという脅迫だろう。
レーナは容赦がない。
確実にやるだろうし、アリシアに関係した人間は根絶やしにすることは想像に難くない。
「私がなんとかしないと。まずは彼と友好関係を」
アリシアはそう気張るとマウントと積極的に接触することを決意した。




