少女の受難
時は遡り、バロー商会からマウントが出ていた直後。
「学園長! あ……」
父であるバローの話を聞くや否や飛び出していたマウントの後を追いかけようとユーデリカが外に出ると誰かにぶつかった。
「ユーデリカ嬢、大丈夫ですか?」
「はい。なんで私の名前を?」
「サートゥー、何をやっとるか! 早く儂を孫の元に案内せい!」
ぶつかった人物はマウントの秘書であるミユキだったが、ユーデリカは面識がなく疑問符を頭に浮かべると横から老人──ゴージャスが怒声を飛ばした。
「ヒッ」
あまりの剣幕にユーデリカが小さい悲鳴をあげるとミユキがゴミを見るような目でゴージャスを睨みつけた。
「次に命令したら車椅子生活にしますよ、ゴージャス老。貴方は雇用主でもないただ迷惑をかけて来る老人でしかないのですから。わかりましたか、オイボレ」
「き、貴様!? 由緒あるボンボン伯爵家の家長に対して聞く口がなっとらん!! 根性注入してくれるわ小娘!!!」
「商会の前で揉めるのはご遠慮願えますか、御当主様……いえ今は御隠居様でしたか」
いきなりギスギスの険悪ムードが放ち始める二人に対してユーデリカがアワアワすると騒ぎを聞きつけてバローがやってきた。
「貴様、バローか。耳が早い奴じゃ。孫に何を吹き込みよった?」
「吹き込んではいません。御隠居が放棄していた御当主としての仕事を依頼しただけの話です」
「放棄していた仕事?」
「町中で幅を利かせている反社会勢力の掃討です」
「貴様! 孫にそんな危険なマネを!! それでも人──」
最初ピンと来なかったようでキョトンとした顔したゴージャスは詳細を知り再び憤怒の表情になり、言葉をまくしたてようとすると手を前に出したバローに遮られた。
「これはしょうがないことです。貴方に嘆願を退けられている以上、マウント様にお願いするしかないのですから」
「最初に反故にしたのは貴様らじゃ! 平民のために尽力した息子のセレブを裏切り殺した畜生どもの言葉を聞く耳など持てるわけなかろう!」
「情けないですよ先生。憎しみに飲まれ、逃げられて復讐できない犯人の代わりにその者の持つ属性を持つ無関係な人々に八つ当たりするなんて。築き上げた絆を肉親に台無しにされた我が友のことが無念でなりません。これは全て貴方の暴走で起きていることです」
「クッ! もう良い! 貴様などと話すことなどない! 貴様のような粗忽者などが教え子など末代までの恥じゃ!」
「どこに行くんです、ゴージャス老。帳簿を手に入れるためにこんな人と行動を共にすることになるなんて最悪です」
バローがユーデリカが聞いたことのない恨みがましい声で罵るとゴージャスは逃げるようにその場から立ち去り、その後をミユキが追っていく。
「しまったな。言い過ぎた」
バローがボソリとそう言うとユーデリカの方を見つめる。
ユーデリカは嫌な予感がした。
「すまないがユーデリカ。私は仕事で手が離せない。同行して取りなしてくれるか」
「え……」
ゴージャスたちと同じようにマウントの後を追いかけようとは思っていたがそれは流石にごめんだった。




