異世界転生
「だあ〜、今日から係長だよ。参ったなこりゃ。というかまだ誰もいねえし……」
部長が「長たるもの1時間前には出勤すべき」と言っていたから小言を回避するために1時間早く来たというのに当の本人がいない。
「始業まで何すかなあ」
はてと思いながら座り慣れない椅子に座ると一瞬視界が暗転した。
「むほほ! ご機嫌麗しゅう」
貧血か何かかと思うと身に覚えのない外人の貴族コスプレおっさんとやたら豪華な内装の部屋が目に入った。
「こちらをどうぞ」
なんだこの状況はと思うとゲスい顔と共に大量の金貨が入れられた袋を開いた状態で見せつけられる。
そこまで行くとピンと来た。
あーこれはあれだ。
現実じゃない。
VR空間だ。
VRギアを被せられてドッキリやられてるな。
お調子者の山内課長が仕掛けたとそんな感じだろう。
今頃デスクのモニターで周りの奴らと一緒に賄賂を受け取るかどうか見ている姿が目に浮かぶ。
まあここは期待に応えておいて、あとで釘を刺しておくか。
「ガハハハ! お主もワルよのお!!」
はい。
これでドッキリ大成功。
チャットでもう直ぐ「ドッキリ大成功!!」がくるはず。
「ふほほ! 学園長ほどでは……。では息子を盛り立ててくださるようお願いしますぞ!」
あら。
来ない。
そのまま進行しちゃってるし。
チャットコマンドを使おうと思うが何故か出ない。
ソフト由来ものではないので出ないはずがないんだが。
故障か何かだったら小さなものでも強制的にVRギアとの接続が切れて現実に復帰するはずだし。
なんか嫌な予感がしてきたな。
「マウント殿と縁を結んだ。我がゲース家のことをボンボン伯爵家の方々にもくれぐれもよろしく」
賄賂おじのセリフから察するにこのキャラの名前はマウント・ボンボン……。
2、3年前に俺がハマったゲームの悪役キャラの名前だな。
専用DLCが実装するような人気キャラでもなければ、通勤中に見たゲーム情報サイトにもそんなものが実装されるような情報もなかった。
つまりあれだ。
これはVRでもなければ俺のいた現実世界でもない。
ゲーム世界──異世界だ。
そこで俺は悪役に転生している。
──
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