表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

襲いくる強敵

【前回の登場人物】

「カビ助」

(種族)ヒト

(年齢)14

(能力)感情を巨大化させる

(概要)この物語の主人公。


「ゴハート」

(種族)ゴースト

(年齢)9 ※転生してからの歳

(能力)人魂を呼び出す

(概要)カビ助の気持ちが増幅して召喚された「仲間」。


「な、なんだってーーー⁉︎」


 僕らの会話が一区切りした、その時。

 ……少し離れたところから間の抜けた声が響いた。


 声の主は、草まみれな帽子を被り、大きなシャベルを持っている。農家さんのようだ。


「「あんた……今、ご先祖さまのご遺体が盗まれたって言っただか?」


 ……聞かれていた。面倒だが、誤魔化すのは不可能だろう。


「う……聞こえていましたか……。ところであなたは?」


「ああ、勝手に聞いてすまねかった。おらは『ディグ・ピクコノ』だ」





 ピクコノさん……が話を続けようとすると、ゴハートが僕に耳打ちする。


「おい、マスター。この人……」


 そうだな、違和感はあった。彼は先ほどからずっと、()()()()()()()()。どうやら彼にはゴハートの姿が見えていないようだ。


 だとしたらーー「ゴースト族」は普通の人と関わってはいけない存在?


「ゴハート、万が一ばれないよう、今は隠れてて……!」


 小声でゴハートにそう告げると、彼は渋々うなずいた。

 ーーまあ、大丈夫だとは思うけどね。


 僕は気持ちを切り替え、ピクコノさんとの話を続ける。

「ご心配ですよね……。でも大丈夫です。僕がこれから、犯人探しの旅に出ますので!」


 そう。さっき決断した。お父さんの遺骨は必ず取り戻す。

 どうせ引きこもりなんだ。学校を休んだところで誰も不思議に思わない。


「あ、あんたが旅に……? やめとけ、まだ子供でねえか! しかもその身体……相当な病を抱えていると見える…………!」


 ーー当然の反応だ。

 というか、この身体のカビに気づくなんて。見た目によらず観察眼鋭いな。


「えっと……? じゃああなたが代わりに旅に出てくれるんですか…………?」


 ……しまった。つい、皮肉めいた言葉を発してしまった。


 しかし、ピクコノさんは純粋なのか……

 皮肉には気づかず、普通にうなずいた。

「ああ、仕方ねえ! おらが保護者としてあんたの旅についていくだ‼︎」



 って……ええ⁉︎



 …………これは困ったことになった。

 突然の展開に脳がついていけてない。


 あの流れで彼の優しさを無下にするわけにもいかず、僕は断ることができなかった。

 よって結局ピクコノさんも同行することなりーー彼にはゴハートは見えない。


「つまり、マスター。これからオレは喋ってはいけないってことか……?」


「『仲間だ』なんて言っておいて、いきなりこんなことになるなんて……ごめんな。ピクコノさんには悪いけど、なんとか……僕が一人でもやっていけるってことを証明して、帰ってもらおうか…………」





 そんなこんなで、遺骨を取り戻す旅が始まった。

 先頭にはピクコノさん、その後ろに僕と、少し離れたところにゴハート。……奇妙なパーティだ。


 まあ、今日はもう暗いから実際に始まるのは明日からなんですけど。


 まずは情報収集からだ。人の多く集まる場所、学校に戻ることにしよう……!

 この際だから、先生方には事情を説明しておくか……?




 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




 ーー翌朝。

 校庭の「ドリル・スシ石像」の前で待っていると、ピクコノさんが手を振りながら来た。


 まさか、僕にとってこの石像が、意味をなす日が来るなんて……!


「あ、ピクコノさん! 昨晩は泊まらせていただきありがとうございました」


 礼を言うと、彼はニコニコと笑う。


「おお、気にせんでええ。あん時は暗かったからなぁ……。それにしても、おら学校なんて来るのいつぶりだったかなぁ……? 忘れるほど農作業に必死だったってことだべ?笑」


「は、ははは…………」


 申し訳ないけど……疲れる。

 優しい人なのはわかってるし、僕を笑わせようと話してくれているのも分かってる。だけど僕のコミュ力では、こういうタイプの人への最適な返答は思いつかない。


 そろそろ気休めにゴハートと話したい……!


 そんな時、僕に声をかけたのはーーゴハートでもピクコノさんでもなかった。


「……よう、カビ助」

「聞きましたよ、旅に出るんですってね」


 げ、カブ太……! そして、メディ先生だ。


「お前、また学校サボるんだって?」

 カブ太は僕にそう言った。

 しかし以前のようないじり口調ではなく、心配しているような声で、だ。


「なんだよ……! 家庭の事情で休むんだ。仕方ないだろ?」


「っ…………! 冗談だよ、冗談。もういじめていた頃の俺とは違うんだ。別に怒ってるわけじゃねぇよ。ただ、心配なだけだ……」


 ……カブ太、本当に変わったな。相変わらずちょっと気持ち悪いくらいだけど……笑



 僕は気を紛らわすため、ダメ元で先生に尋ねることにした。


「ところで、先生。()()()()ですが……何か知りませんか? 他の先生や生徒から聞いた、うわさ程度の話でも構いません」


 先生は首をかしげて答える。

「ふむ……。残念ですが、私には何も分かりませんね……」


 うーん……やはりか。生徒どころか先生方も何も知らなそうだ。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




「結局手がかりゼロか……。どうしましょう、ピクコノさん?」


「そうだべなぁ……。ドリあえず、都会にでも行ってみるべか? 情報源なら腐るほどいるべ」


 都会か……。最寄りのものでいうと「ラッシャイタウン」とかかな……?

 あ、ラッシャイタウンといえば……!


「そうだ。ドラゴンマスクさんなら、何か知ってるかも⁉︎」


 僕が突然そう叫ぶと、周囲が一斉に首をかしげる


「ドラゴンマスク? 誰だ、それ?」

「変な名前だべなぁ……」


 そうか、みんなは知らないんだった。僕が体験したあの出会いを。


 僕は上機嫌でみんなに説明する。

「ラッシャイタウンにある『探検隊』のリーダーだよ! カブ太と同じ『ムシ族』で、とってもかっこいいんだ!」


 今いけばベースキャンプに戻ってるかな……?

 僕は、彼に命を救ってもらったことを思い出し、ウキウキで駆け出した。


 あの人に会えば、何かが動く気がする。


「よし、ここまでは準備運動。ここからが正真正銘の旅の始まり、だな!


「……おい、止まれ! カビ助‼︎」

 カブ太の声だ。


 そういえば、別れの挨拶を忘れていたな。一応言っとくか……。


「解決するまでの間だけ、行ってきます! じゃあな‼︎」


 僕は先生とカブ太に向けてお辞儀をした。


 しかしカブ太は引きつった声で、必死に何かを叫んでいる。……なんだ?


「ちげえよ、馬鹿! 後ろ……後ろにやばいのがいる!」


「後ろ……?」


 ザシュっ!

「ひ、ひいいいいいいい! 危なっ!」


 間一髪でかわし、掠っただけで済んだ。これは、斬撃だ。

 カブ太がいなければ死んでいたかもしれない……!


「いきなり僕を殺すつもりで……? 一体誰が…………⁉︎」


「『探検隊』と言ったな。お前、()()の仲間か……?」


 すごく低いが、若い男の声だ。声の主は草むらの中から姿を現した。

 ゲホっ、ゴホ! な、何者だ?


「俺の名は『武蔵』。お前たち『探検隊』を殺す使命を受けた者だ」


 男はどす黒い甲冑を身にまとい、頭には大きめの兜を被っている。兜の隙間から見える黄色の瞳は、鋭く僕に向けて殺気を放っていた。


「ちょ……待ってくれ! 確かに言ったし、何で『探検隊』を狙ってんのか知らないけど、僕はーー」


「問答無用……。疑わしい者は全て殺せと言われている……」


 刀が、振り降ろされる。

 ブンっ!


「うわっ! 話が通じる相手じゃなさそうだな……」


 僕は迫り来る刀を避けるのに必死で、技を打てる状況じゃなかった。

 だが……そんな時、頼りになるのが()()だ!


「マスターに近づくな‼︎ 『人魂シュート』!」


 ゴハートの放つ、青白い炎は武蔵に向け、放たれた。

 しかし、奴はいとも簡単にそれを回避する……! 実力が、違いすぎる……?


 …………ていうか、あいつはゴハートが見えている⁉︎ 


「ゲホっ、ゴホっ! はぁ、はぁ……。体力の、限界だ……」


 そんな僕をお構いなしに、武蔵はどんどん切り掛かってくる。

 ーーその時。


「おらだって保護者なんだ……。カビ助くん、今助けるべ!」

 ピクコノさんは武蔵に向けて技を構える。


「ピクコノさん‼︎ 戦えるんですか⁉︎」


「いんや、戦えるわけじゃねぇべ。でもおらは『ドリル族』だからな。穴を掘る力、つまりは()()()()()()()能力があるんだべ!」


 おお、十分じゃないですか。

 彼は逃げ出すこともできたはずだが、自分にできることを精一杯やろうとしている。

 こんな状況の中、勇気を出せるなんて! 本当にすごいです。


「ゲホっ……おお! それで、こいつの弱点は⁉︎」


 ピクコノさんはしばらく目を閉じて唸ったのち、僕に向けて情報を伝える。


「……えーと……わかったべ! 兜についている三日月の装飾‼︎」


『ドリル族』の能力では、それが()()()()()()()までは分からないようだが……

 十分です!


「おいお前……。僕がただ逃げ回るだけの弱者だと見くびっているだろう?」


「…………?」


 避けながら、手足で技は打てない。確かに絶望的な状況だ。

 でも、僕はお父さんに、「粘り強くしつこく喰らいつけ」って、教わったんだ!


「手足は避けるのに使っていても、人間には『歯』という武器がある!」


「いっけぇぇ! カビ助くん!」

「頑張れ、マスター!」


「うおおおおおおおおお‼︎」



 だが。

 ……ガキィン!


 僕の渾身の噛みつきは武蔵の刀に防がれていた。


「…………は?」


 なんでだ……? 刀を振りかざすタイミングを見計らって仕掛けたのに!


「残念だったな。俺は本来、()()()だ」


 ……っ! 

 畜生、またかよ。希望が見えたと思ったら、またこれだ……!


 絶望は、何度でも襲いくる。


ゲホっ…ゴホっ…! 「ブックマーク登録」「いいね」「評価」を頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ