表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/73

矛盾・愛憎・師弟

【前回の登場人物】

「カビ助」

(種族)ヒト

(年齢)14

(能力)感情を巨大化させる

(概要)この物語の主人公。シャドに弟子入りすることを決意。


 翌朝。

 夜露の残る草原で、焚き火の煙が空に上っていた。


 シャドさんは眠そうに隣に座っている。

 僕は少しだけ深呼吸してから、一同の前に立つ。


「……えっと。みんなに報告があります」


「お、なんだ?」

 ゴハートが湯気の立つスープを飲みながら顔を上げた。

 土台モンはニコニコしたまま、こっちを見る。


「昨夜の密談内容か?」

 ギザンは静かに目を細め、ピクコノさんは首をかしげる。


「まず、カルマさんの本名は『シャド』で、僕の父さんを殺した犯人でした」


 一同の手が止まる。

「……は?」

「ちょっと待て」

「今なんて言ったべか?」


 まあ、当然だよね……。


 中にはすぐに攻撃態勢をとる者もいたので——

 僕は間髪入れずに次の報告をする。


「そして、僕は……シャドさんの弟子になりました」


「「………………???」」

 長時間の沈黙。


 まあ、そりゃそうなる。

 でも、シャドさんに敵意を向けられないためには、これしかなかった。


 最初に反応したのはゴハートだった。


「っ……!」


 彼は一瞬だけ目を見開き——

 それからゆっくりと笑った。


「そうか……。マスター、成長したな」


 その声は、どこか嬉しそうだった。


「『箱庭クラフト』、使って良かったぜ」


 僕は少しだけ照れくさくなって視線を逸らす。

 そこで——

 土台モンがぼそっと言った。


「……本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。悪い人じゃないのは皆も知ってるでしょ?」


「仇が”師匠”とは……大胆ですね」


 シャドさんは肩をすくめた。

「一番驚きなのは俺だよ……」


「すみません。”贖罪”の延長と思って、苦労してください」

 僕は師匠に、苦笑する。


「普通は、大切な人を殺されれば——泣くか、殺そうとするだろ?」


 全員の視線が、僕に向く。


「弟子入りを頼んでくるなんて”想定外”どころじゃなかった」


 ゴハートが小さく笑った。

「マスターらしい選択だよ」


 ギザンが腕を組んで言う。

「因果とは、実に奇妙なものだな」


 ピクコノさんも頷いた。

「やっぱり、カビ助くんは面白いべ」


 衝撃すぎる報告を終え——

 和やかな雰囲気が戻ってきた頃。


 シャドさんがふと前方を見た。

「……着いたか」


 全員が顔を上げる。


 丘の向こう——

 朝日に照らされて、街が見えた。


 白い建物が並び、中央には大きな塔。

 その周囲を城壁が囲んでいる。


 ラッシャイタウン。

 三度目の訪問。……いつ見ても壮大だ。

 僕は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。




「仲間と話していれば、長い旅路も一瞬ですね……」

 土台モンの呟き。


 そして、シャドさんが指示を出す。

「修行の前に、”アイツ”と合流しよう」


「……誰です?」


「『ジェム』だ。ドドリ村での事件を、先に報告すべきだからな」


 隊長……!

「あ——」


 僕は、彼を”父さんを死に追いやった弟子”だと思い込み、恨んでいた。

 でもシャドさんの言葉からして、違うのだろう。


 シャドさんは歩き出す。

「修行はそれからだな」


 僕はその背中を見ながら、ふと呟く。


「……そうか」


 胸の奥にあった何かが——

 ゆっくりと形を変えている。


 ゴハートがこちらを見る。


「どうした?」


「隊長は……目の前で殺されたのか」


 僕の父を。彼の師匠を。

 ——血が流れ、体温が消える瞬間を。


「何も知らない僕の代わりに——」


 空を見上げる。


「ちゃんと怒ってくれていたんですね」


 シャドさんはその言葉を聞くと、少しだけ足を止める。

「……ああ」


 短く答えてから、小さく笑う。

「アイツは、()()()()()からな」


 ——風が丘を撫でていく。

 僕たちは歩き出した。







 ラッシャイタウンに足を踏み入れる。


 石造りの街は、朝日に照らされて白く輝いている。

 高い城壁、整然と並ぶ建物、中央にそびえる大きな塔。


 本来なら、朝市の準備をする人々の声や、

 商人の呼び込み、子どもたちの笑い声で満ちているはずの街。


 ——けれど。

 石化事件の影響で、やはり”それ”はなかった。


 住民の石像は隊長が片付けてくれたようだが——

 中身の人々は『ダークスター団』に攫われたままだ。


「……静かですね」

 土台モンがぽつりと呟いた。


 ゴハートも周囲を見回す。

「復興には、まだ時間がかかりそうだな」


 ギザンは腕を組んだまま、遠くの塔を見上げている。


 ピクコノさんは小さく息を吐いた。

「おらが帰った後に、こんなことが——⁉︎」



 僕は、街の奥を見つめる。

「行こう、僕らの本拠地に……!」


 これから——

 決戦に向けての、準備が始まる。



ゲホっ…ゴホっ…! 「ブックマーク登録」「いいね」「評価」を頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ