決断と選択
【前回の登場人物】
「ディグ・ピクコノ」
(種族)ドリル
(年齢)50
(能力)弱点分析
(概要)ドドリ村の農家で、旅の元保護者。今度は仲間として、同行する。
夜が更けてきた。
太陽は沈み、風は冷たい。
地面に横たわる石像——
その表面には、恐怖の表情が刻まれている。
僕は拳を握り締める。
「……じゃあ、お願いします」
ギザンは、静かに石像の前へ進む。
「下がっておれ」
低く言うと、彼は両手を石像に触れた。
石化部分に、淡い光が走る。
硬質だった表面が、ゆっくりと色を取り戻していく。
地面の下から、低い振動。
モグドンさんが息を呑む。
「これが、本来の石化解除……」
ピクコノさんが、息を呑む。
「……表面だけじゃねぇ。内部から緩めてるだ」
ギザンは目を閉じたまま答える。
「石化は“固定”の呪い。ならば、構造を理解すればよい」
ひび割れが、すっと消える。
「……っ!」
喉が鳴る。
石が、剥がれ落ちる。
パキリ、と小さな音。
そして——
「……っはぁ」
ゴハートが空気を吸い込んだ!
「ど、土台モン!? 生きてるか!?」
「ぐえっ……首が……固まって……」
土台モンも、崩れるように膝をつく。
僕の視界が滲んだ。
「ゴハート! 土台モン!」
駆け寄る。
抱きしめようとして、でも少し止まる。
石化していた部分は、まだ赤い。
出血したまま、固まっていたのか……。
「悪ぃな、また守られちまった」
ゴハートが苦笑する。
僕の声が震える。
「……戻ってきてくれて、よかった」
それだけで十分だった。
土台モンが、照れたように頭をかく。
「マスター。あの時、諦めないでくれて——ありがとうございました」
「……そうだ。汝のおかげで我は復活を果たせた」
ギザンが小さく頷く。
カルマさんも微笑んでいた。
「お前が諦めていれば、俺が駆けつける前に死んでいただろう」
胸が少しだけ軽くなった。
僕は先の戦闘で何もできていない——そう思っていたけど。
「へへ……お役に立てたようで、良かったです!」
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
少し離れた場所。
メドゥーサは、拘束されたまま横たわっている。
変わらず裸のままで、戸惑うカブ太。
「おい、何か布を持って来い」
「戦士が狩られ、衣を失うは、日常なり」
だが、冷静な大人達の言葉で、静寂が戻る。
まだ、奴の意識は戻っていない。
「どうする」
カルマさんが問う。
——沈黙。
殺すのか。監禁するのか。人質にするのか。
簡単な答えはない。
その時、モグドンさんが前に出た。
「俺が残って処理しとく」
「え?」
「ほら、俺……班長なのに、一番戦闘で役に立ってねぇだろ?」
冗談めかしているが、目は本気だ。
でも——
「処理って……まさか」
僕は不安な顔で彼を見つめる。
「大丈夫。俺に任せて、お前らは先に隊長と合流しろ」
彼はそれだけ言うと、メドゥーサを抱えて立ち上がる。
——覚悟の決まった表情だった。
「大丈夫か? 石化されて逃げられる……なんて、洒落にならないっすよ」
ゴハートの声。
だが、モグドンさんは振り返らない。
「英雄殿の件で学んだ。俺のドリルなら、石化を不完全な段階なら——内側から解除できる」
「確かにそうだな。あの荒技は汝の力量ありきであった」
ギザンも頷いた。
……ということは、本当に彼が適任なのだろう。
「だから、こいつは任せて、お前らは先に進め」
ピクコノさんが、深く頷く。
「うんうん、役割分担だべな」
カルマさんも異論はなさそうだ。
僕はメドゥーサを見る。
彼女は非道な敵だ。でも——中にはメディ先生もいる。
「……目が覚めたら、話せるんでしょうか」
カブ太も続けて言う。
「先生を……分離させる方法はねぇのか?」
それに対し、カルマさんは短く言った。
「それは、敵のボス次第だ。叩きのめして、聞き出す他ない」
ギザンは、静かに立ち上がる。
その顔色はわずかに険しい。
「あまり猶予は無さそうであるな。すぐに出発すべきなり」
古代人らしい彼の考え。そこに土台モンが釘を刺す。
「ですが……。今はしっかりと、睡眠を取るべきです」
「みんなボロボロだからな……。マスターの家で泊まってこうぜ」
ゴハートが笑って僕を見る。
いや……
「僕の家じゃ、狭いから泊まれて四人だぞ⁉︎」
僕の言葉に、ピクコノさんが微笑む。
「じゃ、大人の二人はおらの家に来るといいべ」
「お、助かります。じゃあゴーストと土台は、カビ助の家だな」
カルマさんが指示を出し、部屋割りが決まる。
土台モンは100歳を超えているらしいし、ゴハートも前世は成人だが——。
二人は僕の家に来たことがあるし、別にいいか。
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
そんな中——
カブ太が、少し離れた場所に立っていた。
僕は、その横顔を見る。
彼は、元々ただの村人。ドリル族でもない。
これ以上、僕達に関わるべきではない。
「これで、いいのか」
もし奴からメディ先生が分離できた場合、すぐに会えるから……
モグドンさんもいるし、村に残るべきだ。
いや……僕がどうこう言うべきではない、か。
彼自身の"選択"を、尊重しよう。
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