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二人の関係

【前回の登場人物】

「謎の男性」

(種族)スシ

(年齢)?

(能力)?

(概要)カビ助が脱獄メンバーに選んだが、ミツバに拒絶される。


 視界が暗転し、意識がふっと途切れたと思った時――

 僕は、彼女に抱き寄せられる感覚を最後に覚えていた。あれから、どれくらい時間が経っただろうか。




 目を閉じたまま、微かな振動と、空気の流れが変わるのを感じる。

 歩いている。揺れている。……誰かが、僕を運んでいる。


 そして、重たい音。

 ズ……ン、と地面が沈むような振動。


「……へ〜? こんなところにも置いてあるんだ」

 ミツバの声が、すぐ近くで聞こえた。


 僕は薄く目を開ける。

 視界の端に映ったのは、通路を塞ぐように立ちはだかる、石造りの巨体だった。

 ゴーレム。監獄の警備用だろう。動きは鈍いが、正面からぶつかれば面倒な相手だ。

「ダークスター団」には、こんなのも用意できるほどの技術力があるのか……。そう思ったが、奴らには「クローン生成」というチート能力があった。何ができても不思議ではない。


 だが……ゴーレムを前に、ミツバは立ち止まりもしなかった。


「起きなくていいよ、マスター」

 そう囁くと、彼女は片手を軽く振った。


 次の瞬間、ゴーレムの胸部に刻まれたランプが、ふっと色を失う。腕を振り上げかけていた巨体は、途中で力を失って……


 ーーそのまま、がらがらと音を立てて崩れ落ちた。

 壊れたわけじゃない。ただ、動かなくなっただけ。


「……ほら、『情報』ってすごいでしょ?」

 彼女は何事もなかったかのように、再び歩き出す。


 なんて安心感……! そのおかげか、何だか暖かい。また眠くなってきたなぁ……。

 ーー僕の意識は、そこでまた闇に沈んだ。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




 僕が目を覚ますと、案の定ふたりきりの空間にいた。

 ほんと、すごいよね。よく敵のアジトでこんな場所を見つけられるなぁ。


 僕が彼女に眠らされ、目を覚ますと違う場所にいる現象。牢の外に出ていたり、博士の妨害を受けていないことから空間転移かと思っていたが、そうではなかったらしい。

 彼女の能力、クラブアップルの生成。これに付加される特殊効果を応用しているだけだった。彼女の作る果実には「浄化」の効果がある。そして他人がその成分を大量に摂取すると、一時的に眠気が膨れ上がるのだ。

 だからこの現象の真実は……その花粉を周囲にばら撒くことで全員を眠らせ、安全に移動していた、ということ。だから移動する場所が安全なのは彼女の知識によるものだ。


「ミツバ……どうしたの? あの人が一体何なの?」


「マスター……本当になんで、数いる囚人の中からあいつを選んだのよ……?」


 え、ええ……。そんなこと言われても、偶然としか言いようがない。

 そもそも、()()()の仲間じゃなくて、悪意がなくて、実力のある人物なんて相当限られてるんじゃないか? てかあいつの仲間じゃないのに彼女にそこまで恨まれる人物って一体……? 

 いや、そもそも彼は察しが良かった。僕の質問の真意に気づき、「ムッシー村に行ったことがない」と嘘をついただけなのかもしれないな。


 彼女は僕の巻き込まれやすい体質を心配してか、目に涙を浮かべていた。

 その姿に、僕は庇護欲をかき立てられ、何かしてあげたいと感じた。


 恥ずかしいけど……僕の方から、キスをするしかない。ここで何もしないのは男ではない。彼女の気持ちを汲み取らないと、いくら呼び出し呼び出された関係とはいえ呆れられ、二人の関係は終わってしまう。


 僕が覚悟を決め、彼女の唇に触れようとした。その時だった。


「あ〜あ〜やだやだ。人様の家でいちゃいちゃしやがってよぉ」


 聞き覚えのある声だった。可愛らしい見た目で甲高い声。それに合わない口調の悪さ。

 そして……突然目の前に現れることを可能にした超常的な能力。


「お前は……!」


 まさか、こんなに早く再会するなんて。名も知らないが、かなりの強敵であることは明白だ。


 奴は一息おくと、事務的に名乗る。

「そういや自己紹介がまだだったな。オレの名は『ジャック』。察しているとは思うが『ダークスター団』の幹部さ」


 ミツバはよろよろと立ち上がり、奴に敵意を向ける。

 良かった、もう大丈夫みたいだな。


「どうしてここにいるのが分かったのよ……?」


 そこで()()()()()()()()()()()()を聞かないのが情報屋である彼女らしい。空間転移持ちの敵だというのは既に前提として分かっているのか。

 しかし奴はミツバの問いに答えなかった。


「それにしても、カビ助と言ったか……? いつの間に、女なんて作りやがって。女の方も、『フルーツの森』の救世主様だからって、よく他種族なんかに(なび)いたよな」


 相変わらず、こいつは人の話を聞かない。

 興味のあること以外は話さないってか? だったらそっちに合わせてやるよ。


「他種族が恋愛して何が悪いんだよ」


 僕が怒りを込めてそう言うと、ジャックではなく……ミツバが暗い表情になった。

「マスター……違うの」


 違う? ……何が?

 彼女がそう言うってことは……他種族の恋愛が悪いのはあいつの主観ってことじゃないってことか? 僕が無知なだけだったかもしれない。


 ーーどうやらその通りなようで、ジャックは僕を嘲笑った。

 何だか負けた気分で、腹が立つ。


「そんなことも知らねぇとは……! 女の方は黙ってたみたいだな。いいぜ、世間知らずのカビ助くんに教えてやる」


 ミツバはその言葉を、必死に止めようとする。

「あ…………やめて!!」


 だが饒舌になったジャックは止まらない。


「DR星は、他種族同士では……()()()()()()のさ」


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