寿司が回転するならば。
僕らは牢屋内を散策しながら会話している。
ミツバは決めてないようで、周りの囚人達から「俺を出してくれ」と声を何度もかけられる。彼らには申し訳ないが、次に解放する人は……やはりあの人しかいない。
「じゃあ次は……ピクコノさんを助けてもいい?」
「誰? その人、役に立ちそうなの?」
「いや、個人的な理由だけど……。でも、危機を救ってもらったこともあったんだ」
「ふーん。ま、マスターの頼みならなんでも聞くけど……ってうん?」
囚人たちの名簿表を眺めていた彼女は、一瞬固まった。
「どうしたんですか、ミツバくん?」
「ピクコノって人は…………捕まってないみたい」
え……⁉︎
「本当⁉︎ 捕まってないんだね……!」
てっきり、「僕が街に連れてきたせいで事件に巻き込んでしまったのでは?」と案じていたが。
……別れたあの後、すぐに村に帰ったのかな?
「まあ……会えなかったのは寂しいけど、無事でいてくれたなら良かったよ〜‼︎」
僕が心からそう安堵すると、二人は微笑ましそうにこちらを見つめていた。
「えへへ。マスターが嬉しそうであたしも嬉しいよ」
「今のモルモットくんにとって……最も大事な大人なんですね」
博士の言葉には、少し棘があった気がしたが、気のせい……ということにしよう。
彼自身も、すぐに話を切り替えてくれたことだし。
「しかし、脱獄にはもう一人ほど欲しいですからね……。誰にすべきでしょう」
確かにそうだ。僕は彼女の方を見たが、首を横に振っていた。
「あたしも流石に、全員の能力値までは把握してないよ……?」
確かに、先ほどお断りした囚人達を適当に選ぶだけでは足手纏いになるだけかもしれない。
気持ちだけじゃなく、力のある人を選ぶ必要があるのは確かだ。
「うーん、じゃあ誰にすれば……」
そんな時、目の前から何か気配を感じた。僕はそこに目を奪われる。
そこには眠っているようだが……強そうな雰囲気の男性がいた。
その男性は、見た目に反して優しそうな雰囲気がある。性格は良さそうで……強者の風格。そして何より、ここで出会えたのもきっと運命だ。
最後の一人は、彼にお願いしてみようと思えた。
「この人にお願いするよ。敵にバレる前に、早く出よう?」
僕は少し離れたところにいる二人に声をかけた。
「誰? 暗くてよく見えない……」
「ええ……? そんな適当に決めて、大丈夫ですか?」
許してくれたのだろうか。
しばらくするとミツバは、牢の扉を開けてくれる。
「ま、ジェム・カブリの仲間じゃないなら誰でもいいよ」
……そうか、その可能性があったな。ラッシャイタウンに彼の仲間がいても不思議ではない。
僕は彼の肩を揺すり、質問する。
えーと、この人は見たところ「スシ族」だから……?
ミツバから聞いた、あいつの親友「ドド・リーラッシャイ」である可能性を潰せばいいのか。
「突然すみません。驚かれると思いますが、今から脱獄します。あなたにも協力を頼みたいのですが……ひとつだけ確認を。『ムッシー村を訪れたことはありますか?』」
僕は彼女とあらかじめ決めておいた、判別の質問をした。これでYESならば黒だろう。
そんな彼は、寝起きにも関わらず状況を理解したようで、答える。
おお……歴戦の猛者みたいで何だかかっこいい。
「ありがとな。えと、坊主……? 脱獄できるなら……俺にできることは、喜んで協力しよう。ムッシー村に行ったことはないが……どうしてそんな質問を?」
お、反応なしか。だとすれば申し訳ないことをしてしまったな。
僕が安心してそれに答えようとすると、牢の外からミツバの声がした。
「マスター? そろそろ行くよー?」
「あ、ごめーん! ……すみません、何でもないです。行きましょう……」
僕とその男性も、彼女らを追いかける。さあ、脱獄作戦開始だ。
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
「ミツバ! 連れてきたよ。この人が協力してくれる……」
僕がその男性を紹介しようとすると、彼女の顔は今までにないくらい強張っていた。
「マスター……駄目だよ……そいつは……。何で、よりによって……?」
「……ミツバ? どうしたの?」
その男性とミツバの間に何か因縁があるのかと思い、僕は男性の方を見た。
だが彼は不思議そうな表情をしている。どうやら初対面のようだが……だったら何故?
僕が男性の正体に疑問を持っていると、大人しくしていたスライム博士が話し出す。
「偶然とは思えない出会いですね。モルモットくん、この方は……」
この方? 誰だろう。偉い人? だが、その時。
「「イカれ博士は黙ってて‼︎」」
ミツバの叫び声に一同は一瞬身を縮める。そして、彼女は以前のように腕を大きく広げる。
「お前だけは、マスターに近づかせない……! あたしが、彼を守ってあげるの……♡」
ミツバ……一体何を……⁉︎
また、前のように二人きりの場所に行くのだろうか。
「逃げてください! カビ助くん‼︎」
スライム博士の叫び声が再び。
だが、一歩遅い……。いや、間に合ったところで、避ける気もないが。
「何があったかは知らない。だけど僕は君を信じてるから……好きにしてよ」
僕の視界は、またまた閉じられた。でも以前と違って何も不安じゃない。
「カビ助……そうか……あの坊主が…………」
意識を失う直前、男性のつぶやきが聞こえた気がした。
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