博士vs情報屋
それから何度キスをしただろう。僕の心はねっとりと腐っていた。
……なぜだろう。初めての愛情を受けたのに、昔に戻った気分だ。今は全部どうでもいい。
「ゲホっ! でも……夢は、諦めきれないなぁ」
「ダークスター団」と戦うのは義務じゃない。僕を騙し続けていた「探検隊」などどうでもいい。
……そう思ったこともあった。
……だとして、その後何が残る?
お父さんの遺骨問題は未だ何一つ解決していない。そして何より、自堕落に成り果てた僕を見たゴハートの気持ちはどうなる?
……想像もしたくない。
「僕は、ゴハート……そしてお父さんのために一人前の探検家にならなくちゃ」
彼女はそんな僕も肯定してくれる。
「うん……それでこそマスターだよ。じゃあまずは、ここから抜け出そう?」
そう言って「最後に」と言わんばかりに唇を指さされたが、僕はそれを断る。冷静になって、流石に小っ恥ずかしくなってきたのだ。
あれだけしたらもう十分でしょ。
「ミツバ。抜け出したら、ね」
「そう……そうね! 我慢する……‼︎」
ぐっ……可愛……っ!
嫌がられると思った返しの、満面の彼女の笑み。それに僕の胸は締め付けられた。
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
ガシャっ!
「じゃあ、まずは博士をお願い……」
「本当にいいの? あの隊長の仲間なんかを……」
「いいんだよ。博士に罪はないんだから」
僕は彼女の力を借りて、牢屋の人々を解放する鍵を入手した。
本当なら、全員を救う英雄になってみたかった。だが、大勢を連れて行くと脱獄には目立ちすぎる。ミツバとの話し合いの結果、少数精鋭だけで脱獄して一旦準備を整え、その後で助け出そうということになった。
解放された博士はホコリを払い、気になったことをすぐに話す。
……これだから「博士」という生物は……。
「その言い草。まるで隊長には罪があるようですね……?」
ぐっ……さすが博士。鋭いな。いや、僕らが分かりやすすぎるのか?
僕が動揺して返答に困っていると、ミツバが話してくれた。
問いの答えになってはないけど……
「ちょっと! 助けてやったのに礼の一つもないなんて。イカれてんの?」
彼女は相変わらず僕以外には手厳しい。……いや、博士と相性が悪いのか?
「イカれてる? 情報屋だかなんだか知りませんが、『博士』にとってはそれが褒め言葉なのをご存知ないとは……そちらこそ、頭がよろしくないのでは?」
「はぁ⁉︎ あたしの一族の情報力は次元随一なんですけど⁉︎」
あはは……。まあ、ドリあえず喧嘩のおかげで隊長……いや、あいつの件は頭から抜けてくれそうで助かった。
あいつに直接会うまで、この気持ちは探検隊メンバーには勘付かれないようにしないと。
そんな時、二人の喧嘩が再び聞こえてきた。
「ていうか早くマスターにお礼くらい言ってよね!」
「ああ〜頭悪いから気づかなかったんですね〜? もう報告済みです」
「え……?」
僕はミツバと共にその言葉に驚く。
え、報告済み? 別に気にしてなかったけど、いつの間に。
「あ……本当だ」
足元には手紙を持った博士の分裂体がいた。全く気づかなかった。
「えーと、内容は?」
僕は分裂体から手紙を受け取り、内容を確認した。
『助けていただき感謝します。お礼に、先ほどの隊長への影口は忘れたことにしておきます。ただ、妙な気を起こすようなら容赦無く止めるので、肝に銘じるように。』
これは……まずいことになったかもしれない。
それにしても博士……やっぱり覚えてたか……。
頭悪いは間違ってたみたいだよ、ミツバ。
脱獄ってテンション上がりますよね。
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