初めての愛情
【前回の登場人物】
「ミツバ」
(種族)フルーティア
(年齢)13
(能力)クラブアップルの生成
(概要)カビ助の気持ちが増幅して召喚された女の子。
「ま、すたぁ? 起きて? 二人きりだよ?」
まったく。最近になってから、気絶することが多くなった気がする。
旅に危険はつきものと言うけど……これは流石に酷くないか?
というか急展開すぎる。石化させられて人生の終わりかと思いきや、復活して、敵のアジトに連れてこられて……ここから反撃かと思いきや、謎の女の子に攫われる……?
探検隊に入ったのに、本来の目的である「お父さんの遺骨探し」からどんどん遠ざかっているような気がする。
「ミツバ……。君は一体、僕をどうしたいの? いや、そもそも何故僕にそこまで……」
僕は呆れたように尋ねる。この子は本当に、味方なのか?
「そんなの決まってるじゃん。あたしはマスターに召喚された存在だよ? マスターのことを遠くからずっと見てきて、大好きになったから出てきたんだ。ゴっさんが『仲間』って存在なら、あたしはマスターにとって『恋人』だよ」
え……ええ……?
正直、嬉しくないと言えば嘘になる。しかし……やはり、信じられない。
「僕なんかの、どこがいいって言うんだよ。隊長とかの方がずっと……」
照れ隠しのつもりは……ない。
僕が本心でそう言うと、彼女は僕を抱きしめた……⁉︎
「え……?」
「そんなことない。マスターは何もなくてもずっと頑張ってきた。絶望の中から光を探せる人だよ。それに比べてあの隊長は……ずるい奴なんだよ」
最初の言葉に思わず涙が出そうになった……。だが、最後の言葉は聞き捨てならないな。
「隊長のことを馬鹿にしないでよ。僕の憧れの人なんだ」
僕は先程まで顔すら合わせれず、腑抜け顔だった。そんな僕が急に真剣になったものだから、ミツバも驚いて真面目な表情をする。
「マスター。前に『力が欲しい』って強く願ったよね。あたしはそれを提供できる」
そういえば、あの頑丈な牢獄から二人きりになれる場所に移動できているのも不思議だ。分裂できるスライム博士ですら脱獄できないとこからどうやって……?
「まさか、『力』っていうのは……!」
僕の問いにミツバは微笑んで答える。
「そう、情報だよ。どんなに筋力のある猛者でも、弱点をつけば倒せる。どんなに厳重な牢獄でも、食料を分け与えに来た看守と交渉すれば抜け出せる。どんなに優しい聖人も、本名さえ分かれば…………裏がわかる」
僕はその言葉に再び驚く。もちろん彼女を完全に信じているわけではないが。
そんな……裏の顔って? 隊長は、僕を騙していたっていうのか?
「教えて、ミツバ。隊長のことは……全て知りたいんだ」
「もちろんだよ、マスター」
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
こうして僕はミツバから、隊長こと『ジェム・カブリ』の全てを聞いた。
メドゥーサから聞いた本名を伝えると、ミツバは予想通りかのようにスラスラと語り始めたのだ。
四年前のある日、「伝説の一族」と出会って旅に出たこと。「ダーク族」になって仲間に迷惑をかけたこと。ほとんどが仲間の力による功績なのに英雄のように扱われたこと。
三年前、地球に旅立ったこと。好意を抱いていた女子の気持ち全く気づかず傷つけたこと。
二年前、力を使い果たした「ドラゴン族」の弱みに漬け込んで力を得たこと。石になった伝説の一族を見捨てたこと。
そして一年前、本名を誰にも言わずに「探検隊」の隊長となり上がったこと。
そして何より……
「彼は、父さんの弟子だったにも関わらず、父さんを事件に巻き込み、見殺しにした……」
「これが、あなたの尊敬する人物の真実。疑ってるかもしれないけど、あたしの一族の情報は絶対だよ」
ドラゴンマスクさんは第一印象から僕の憧れとなった。それに、何度も命の危機を救ってくれた。
探検隊に入ってみても実際に、強い信念と思いやりのある、まさに聖人という感じだった。
だが彼に謎な部分がいくつもあるのは確かだった。僕の名前を初見で当てていたし、仮面の下はもちろん知らない。探検隊をあの若さで発足でき、未知の種族「ドラゴン」の力を借りていて……街の市長に城を借りられるほどの立場がある人物……。何らかの闇があっても不思議ではない。
「うん……信じるよ。あの人が僕の名前を知ってた事にも納得がいく」
「マスター……じゃあ、一つだけお願い……」
ミツバはそう言うと、僕のあごを引き、深く……キスをした。
「ん…………っ⁉︎」
「あたしのこと、『愛してる』って言って?」
僕に恋愛は一生無縁だと思っていた。しかもこんな他種族の、少し頭のねじの外れた子が、初めての相手だなんて、あの頃の僕に言っても信じないだろう。
だが不思議と悪い気はしなかった。今まで、家族がいなくなってから、誰にも認められずに一人ぼっちで生きてきた。最近になってからようやく、僕のことを認めてくれる人達と出会えた。だけどそれは友情や信頼というものであって愛情ではない。それに、彼らとの関係は取り繕われたものだと知った。物心つく前に母親を失った僕がずっと求めていたものは、異性からの愛情……いや、甘えることができる相手だったのかもしれない。
「うん……愛してる」
その時、僕の心は救われた気がした。
急にドロドロした展開。恐ろしい子。
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