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「どう考えたら問題ないって思えるわけ?」そう言ったのは、火蓮だ。


「みんなのことをぼろくそ言ってさ、私のことだけならまだしも、紫音のことまでバカにして、何がしたいわけ? 何が地球の危機よ! なんで私たちだけが戦わなきゃいけないの!」


 しごくまっとうな意見だ。地球が破滅の危機に陥っているからといって、彼女たちが犠牲にならなければならない理由はどこにもない。


「確かに魔法少女は危険を伴う大変な仕事ッチ。しかしその代わり、高額な報酬が支払われるッチ。水華ちゃん」ホワイタチは水華のほうを見る。


「一年ぐらい魔法少女をやってくれるだけでも、奨学金を全額返済しても二三年は遊べるだけのお金を手に入れられるッチよ」


 ホワイタチは水華のほうを見る。彼女はごくっと喉を鳴らす。


 それからホワイタチは、紫音のほうを見る。


「さらに、魔力のおかげでお肌はトゥルトゥル、常に理想の体形を維持できて、病気やけがとも無縁ッチ。けっして悪いことばかりではないッチ。しかしそれもこれも全部、地球が侵略されたら無意味ッチ」


 いまや誰も口を挟まなくなって、ホワイタチの次の言葉を静かに待っている。


「みんなにお願いしたいのは、しばらくのあいだだけでも日本の地下にある僕の基地を守ってほしいということッチ。基地には地球を保護するバリア装置があるッチ。こいつが壊されたらいよいよ、地球を守る手段がなくなって、本当に侵略されてしまうッチ。お願いだから、力を貸してほしいッチ」


 ホワイタチは床に足をついて、頭をさげる。


「知ってるかわからないけど、ホワイタチは地球の存在じゃない。だから別に地球を守る理由も義理も、本来はないんだ。それでもこいつはなぜか、昔からずっと地球を守るために活動し続けている。確かに頭はおかしいかもしれないが、少なくとも悪いやつじゃない」彼は言う。


 彼は悪党なので、普段ならホワイタチの味方など絶対にしない。しかし地球人でもないホワイタチが地球のために頭を下げているのを見て、何も思わないわけではない。


「わかったわ」まず火蓮が口を開く。「私だって別に、地球に滅んで欲しいわけじゃないし。ただし、一年、長くても高校卒業までだからね。それまでにちゃんと、新しい人を見つけてきてよね」


「ありがとう、約束するッチ!」ホワイタチは感極まったように言う。「他の人たちは大丈夫ッチか? 魔法少女をやりたくないって人はいるッチか? もしやりたくないなら、無理強いはしないッチ」


 水華は無言だが、何も言わないということはオーケーということなのだろう。


「大丈夫です、やります」緑は言う。ニートだというから、もっとやばいやつなのかと思ったが意外とまじめそうに見える。やはり、27歳でも魔法少女に選ばれるだけのことはあるようだ。


「問題なし」桃子は言う。


「火蓮がやるなら、私もやるよ」紫音は言う。


 桃子と紫音は逆に聞き分けがよすぎる気もする。文句の一つもないのが、かえって不安になる。しかし俺には関係ないことだ、と彼は考える。まだ、魔法少女になるとは一言も言ってない。


「ところでサトウ、魔法少女になってくれるッチか?」ホワイタチは言質を取ることを忘れてはいなかったようだ。


「魔法少女になんかなるわけないだろ」彼は言う。「俺は俺のままで十分戦える。今まで魔法少女と戦ってきたときだって、そうしてきた。魔法少女の力はいらない。あんなコスチュームなんか、死んでも着ない」


 そう答えたとたん、息をつく音が五人の口から洩れる。


「お前ら、言っておくけど勘違いするなよ。俺は地球がザガーン星人なんかに侵略されたら困るから戦うわけであって、この戦いが終わったらまたお互い敵同士だからな。そこのところ、忘れるなよ」彼は魔法少女たちに向かって言う。


 彼もまた、この地球を征服するために単身やってきた宇宙人の一人なのだ。ただし長い間ずっと、魔法少女たちに負け続けている。だが、挑み続ける気持ちは今なお、消えていない。

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