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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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17話

「私はアドニスのためならなんだってする。それがたとえ、犯罪だといわれることでも、ね」


 アネモス先輩はその辺のホコリでも見るような視線で、俺を見つめる。


 ゾッと背筋に悪寒が走って、はっはっと息が荒くなる。


 ⋯⋯ヤバい、こんなの初めてだ。

 妖倒士に狙われてる妖って、こんな気持ちなのかもな。


「サーヴィル」

「分かってます」


 サーヴィル先輩はそろりと木の影から顔を出すと、アネモス先輩の顔色をうかがいながら、彼の足元に腰を下ろす。


 ⋯⋯なんだ?

 俺、めっちゃ見られてるんだけど。

 そんなに見つめられると、なんか顔に穴あきそう⋯⋯。


 ヒュンッ!


「っ!」


 耳の裏で風を切る音がうなり、振り向くと同事に半身になってよける。

 鼻先を鋭く光る藍色の爪がかすめ、俺はソレが地面につき刺さる前に、足の爪先から魔力の刃を伸ばす。

 そして、思いっきり背中をそり、足を振り上げる!


「グゥアアァアアア!」


 俺のけり上げに加えて妖虎の腕力。

 なんの抵抗もなく刺さった魔力の刃を消すと、膝を曲げて地面に手をつき、バク転の要領で着地する。


 艷やかなヒスイ色の毛に、藍色の濁った瞳。

 妖力が感じられなくても分かる、その圧倒的実力。


 なんでアネモス先輩が⋯⋯って思うけど、今はそれどころじゃない。


 鮮やかな赤い血が濁流のように吹き出したけど、周囲の毛が傷をおおうように揺れると、すぐに塞がった。


 上から足をめいっぱい広げて下降してくる鳥妖を横にとんでよけ、その先からとび出してきた狼妖たちをしゃがんでやりすごし、後ろ足をつかんで地面にたたきつける!

 と、息つく暇を与えないように、妖虎がたたみかけてくる!


 とびのいたりいなしたりでかわしながら、俺はちらりと先輩たちを見る。


 アネモス先輩が操ってるからかもだけど、妖たちの連携が面倒だ。

 妖虎を中心に、鳥妖と狼妖が入かわりに攻撃をしかけてくる。

 つまり俺には休憩の時間が一瞬もないんだよな。

 一度も能力を使ってないから、多分使えないんだろうけど、それは本っっ当に救いだ。


 それに、中級妖はともかく、あのときの妖狼と同等の妖虎の攻撃は受けられない。

 妖狼と戦ったときより俺は強くなってるからよけられてるけと、ちょっとでも気をぬけば骨の一本や二本、バキッだ。


 妖虎の牙をとび上がってよけ、着地して構える。


「⋯⋯あれ?」


 さっきまで、俺がよける先が読まれてるみたいに待ちぶせされてたのに。


 狼妖二匹のタイミングが、少しズレてるし遅い⋯⋯?


 時間差でとびかかってくる狼妖を地面にはたき落とし、さっと首をハネて魔力を流す。


 ⋯⋯ん? いつもより、魔力が流れにくいな?

 まるで、先に誰かの魔力が入ってるみた⋯⋯。


 パリンッ。


 いつもどおり水晶になったのに、亀裂が入ったと思うと、砂ほどの粒子をまき散らして消えた。


「⋯⋯だから言ったのに。返してくれと」


 混乱している俺は、ほぼ無意識にアネモス先輩を振り返る。


「私の能力は特殊だと言ったね。操ることができる妖は、自分で倒し、魔力で水晶に変えたものに限る。しかも、もう一度倒されてしまえば、もうそれっきりなんだ」


 水晶がなければ戦えないってことか。


 返してくれって、つまりは倒すなってことだろ?


 俺に不利すぎるんじゃない、か、って⋯⋯。


 先輩たちに違和感を感じて、俺は一つの可能性を思いつく。


 サーヴィル先輩、始まってから全く動いてない。

 俺はよけ続けて移動したから、今はサーヴィル先輩の背後にいる。


 鈍くなった、妖たちの動き。

 思えばそれは、サーヴィル先輩の視界から完全に外れてからだった気がする。

 サーヴィル先輩の能力の説明がなかったから分からないけど、関係はあるんじゃないか?


 俺の動きに合わせてこないってことは、たぶんなんらかの制約で動けないんだ。

 もしそうなら、サーヴィル先輩の視界に入らなければ⋯⋯!


「ガアッ!」

「なっ⋯⋯!」


 考えこんでる間に背後に回りこんだ妖虎が、ぐっと体を沈めてバネみたいにとびかかってきた。

 とっさにとびのいてかわすと、妖虎は着地するやいな前足を踏んばって後ろ足をけり上げる。

 前足を軸にしてぐるんっと回ると、たたんでいた後ろ足を思いっきり伸ばす!


「ぐ⋯⋯っ!」


 顔の前で腕を交差して魔力の壁を展開するも、あっけなく破壊されて、腕に砕けるような衝撃が走る。


「おっと危ない」


 吹っとばされた俺を、アネモス先輩は半歩引いてよける。


 ダンッと木に衝突した俺はくぐもった声をもらし、歯を食いしばって先輩たちをにらむ。


 両腕、完全にやられた。

 妖虎のけりを受け止めきれなかったから、腕がぶつかったせいで鼻もヘンな方向に曲がってる気がする。

 

 頭ぶつけたかもな、焦点が合わない。


 でも一番は、サーヴィル先輩の視界に逆戻りだ⋯⋯!


「いい気味じゃないか。安心してくれ、ケガ人をいたぶる趣味はない。すぐに楽にしてあげるよ」


 アネモス先輩が片腕を胸の前に構えると、鳥妖が羽ばたいてとまり、足元で妖虎がうなる。


 楽にしてあげる、か。

 そんな簡単に、死ぬわけにはいかない⋯⋯!


「俺、は、まだ⋯⋯っ」


 ふらふらとおぼつかない足どりで立ち上がり、ふーっと細く息を吐いて魔力を放出する。


 あー、ヤバいな。

 血を失いすぎたか、真っすぐ立ってるのも難しい。

 けど、逆に感覚がさえてるような気もする。


 魔力の壁を膜くらいまで柔らかくし、洋かんのイメージで魔力の濃度を上げていく。


 そうか、魔力の圧って、こうやってやるのか。


 じりっと半歩下がったアネモス先輩は、驚いたように片眉を上げる。


「へえ、キミは⋯⋯」


 面白いモノを見つけたみたいな表情に、一瞬ひるんだものの、近よらせないように圧をさらに強める。


 なんだ⋯⋯?

 雰囲気が変わった⋯⋯?


「いいのかな、そんなにムダな魔力を放出するなんて。私は指示するだけだから、近づけなくても支障ない。私には意味のないことだ、よっ!」


 アネモス先輩が腕を振ると、発射されたみたいに鳥妖が俺に向かってとんでくる。

 魔力の壁で防ぐと、はじかれた反動を利用して方向転換し、俺の視界を狙う。

 もう一度はじくと、また俺の死角へ。

 狼妖がいなくなった分か、絶え間なく鳥妖が攻撃をしかけてくる。


 くそ、死角からだから反応が遅れる⋯⋯!


 頭も霞がかってきて、思うように体も動かないし、魔力の壁で防げるのも時間の問題だ。

 だからこその連続攻撃なんだろうけど。


 一旦立てなおすか。


 もうギリギリで防いでいた魔力の壁から、串みたいな形の魔力をつき出す。


「ピッ!?」


 異変に気づいたのか、慌てたように羽ばたく鳥妖を確認し、俺は木の裏に回りこむ。


「ん?」


 そのまま距離をとろうと走り出しかけた俺に足に、何かが引っかかる。

 木の根っこにしては柔らかいし、ツタにしては太すぎる。


 パッと何気なく視線を向けると、俺は息をのんだ。

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