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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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15話

 ふうっと息をついて、立ち上がったときだった。


 パチパチパチパチッ。


「誰だっ!?」


 テンポの遅い優雅さを感じる拍手に、バッと臨戦態勢をとる。

 けど、どれだけ周囲を見回しても、人影は一つもない。

 妖の気配すらも感じられなくて、俺の背にツーッと冷や汗が伝う。


 いっ、いやいやっ。


 ここは気配探知をできなくしてるから感じられないだけで。

 何もいないからって、ユーレイって決まったわけじゃ⋯⋯っ。


「気づいてもらえないのは悲しいな」

「っ!」

「上だよ、上」


 パッと上を見上げると、木の枝に腰かけたアネモス先輩とサーヴィル先輩が俺を見下ろしていた。


 なんでここに⋯⋯って、なんで上?


 俺が眉をひそめると、サーヴィル先輩がアネモス先輩をじとっと横目で見る。


「ほらやっぱりヘンなヤツって目で見られてるじゃないですか。俺はフツーに出ていこうって言ったのに⋯⋯うぅ、俺は上から見下ろすのが好きなんだって思われてそんなヤツだったんだって嫌われて、独りになってそのまま腐って死んでいくんだ⋯⋯!」

「うん。そんなことはないよー」


 サーヴィル先輩、じめじめしてってるから、そのままキノコとかになりそう⋯⋯。


 アネモス先輩はテキトーに受け流すと、隣にひかえていた狼妖と一緒に、スタッと身軽にとびおりる。

 一拍遅れて、サーヴィル先輩も着地する。


「なんでここに⋯⋯」

「どうしてって、コアがどこかに行ってしまったと、みんなが騒いでいたからだよ。あの中で土地勘のある私たち三年生が、キミを探しに行くことになったんだ」

「さすがに、迷宮にいるとは思ってなかったけど」

「なんかスイマセン⋯⋯」


 申しわけなくて頭を下げる俺に、先輩たちはいいよいいよと片手を振る。


 いやでも、本当に助かった⋯⋯!

 俺一人じゃ、同じとこぐるぐる回って、脱出が大変なことは目に見えてたし⋯⋯。


「あれ、ボム先輩とハータッチ先輩は⋯⋯?」

「ん? ああ、彼らには他クラスのスイッチをおしに行ってもらっているよ。今回の大会、全制覇が私たちの目標だからね」

「でも、三年生の部とは組み合わせが違う」

「人数が増えたからね。こっちのほうが最適だと判断したまで⋯⋯」

「そんなことない。失礼ですけど、ボム先輩はあまり人の言うことを聞かないタイプだ。もしくは、すぐ忘れる」


 アネモス先輩の眉が、ピクリと動く。


 合ってるっぽいな。


「ハータッチ先輩の人の心を読む能力は、味方との連携がカギだから、アネモス先輩が組むのが最適だったんじゃないですか?」

「それは⋯⋯」


 アネモス先輩が言葉につまり、笑みを消して俺を見つめる。


 サーヴィル先輩はさっき、はっきりここを迷宮だって言った。

 つまり、迷いやすいってことだ。

 なのに、いくら土地勘があるとはいえ、迷宮内を動き回ってる俺にたどりつくのはムリがあるんじゃないか?


 探知が使えるならともかく。

 わざわざ不自然なペアで俺を探しにくるなんて、「最適」とは言わないだろ。


 しばらく、俺とアネモス先輩のにらみ合いが続く。


「⋯⋯分かった、認めよう」


 先に折れたのはアネモス先輩だった。


「アネモス⋯⋯!」

「いいんだ」


 あせったようにアネモス先輩を見上げたサーヴィル先輩を制し、彼はふっと息をつく。


「私に下心があったのは事実だ。その上で頼もう」

「頼む⋯⋯? 俺に?」

「ああ、そうだ」


 アネモス先輩は改まったように、こほんとセキ払いをする。

 俺もつられて、背筋を伸ばす。


 こんな迷宮の奥にきてまでの頼みごとなんだ。

 ペアも変えてウソまでついて。


「決闘を申しこみたい」


 きっと、相当大事なことに決まって⋯⋯。


「は?」


 何言ってるんだ?


 決闘って、妖倒士同士の戦いのことだよな?


 ヘンなモノでも食ったんじゃないかと、アネモス先輩の顔をじろじろ見ていると、彼は真面目な表情(かお)でこう言った。


「安心してくれ。大会中の決闘の許可はとってある」

「いやそうじゃなくて」


 アネモス先輩が違うのかとキョトンとするのを見て、サーヴィル先輩が顔を引きつらせる。


「アネモスの都合中心で進めないであげてくださいよ。決闘なんて、よっぽどのことがなきゃしないんだから、理由を話さないと承諾なんてもらえませんって」


 俺がうんうんと高速でうなずくと、サーヴィル先輩が我に返ったように視線をズラした。


「ごめんなさいごめんなさい出しゃばりました、本当俺みたいな社会の失敗作が意見してごめんなさい⋯⋯!」

「そんなことないです。何がなんだか分からなかったので」


 慌てて言うと、サーヴィル先輩は顔色をうかがうように、上目づかいで俺を見つめた。


「本当⋯⋯?」

「本当です」

「⋯⋯そう」


 サーヴィル先輩はホッとしたような、照れたような表情ではにかみ、頬をかく。


 なんだ、ただ陰気なだけかと思ってたのに、そんな表情(かお)もできるんだ。


 俺がサーヴィル先輩を眺めていると、アネモス先輩は上空のドローンに手を伸ばした。


「では、オーケーということで」

「待て待て待て、誰が言ったんだ⋯⋯ですか、そんなこと」


 危な、敬語がとれるところだった。


 アネモス先輩って、いかにも頼れるリーダーって雰囲気だけど、けっこう強引だな?


 決闘開始の合図を出しかけていたアネモス先輩の腕を、ムリヤリおし下げる。


 何か裏があるとは思ってたけど⋯⋯そもそも、なんで俺と決闘なんだ。

 知り合って間もないし、俺なんも怒らせるようなことしてないよな?


「私の大切な人を傷つけた分際で、私の決定を拒むというのか」

「っ!」


 ヒリヒリと全身の毛が逆立つ敵意に、思わず手を離す。


「アネモス、それは⋯⋯」

「サーヴィルは黙っていろ」


 サーヴィル先輩が弁解するように口を開くも、アネモス先輩は間髪入れずにさえぎる。


 なんだ⋯⋯?


「キミのせいで、かわいいアドニスが苦しんでいるんだ。だから私は、原因であるキミを潰す」

「⋯⋯は? アドニス?」


 俺のせいで苦しんでるって、どういうことだ?

 しかも今、「かわいい」って言ったよな⋯⋯?


 縁があるって言ってたけど、アドニスとはどういう関係なんだ?

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