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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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11話

 そしてむかえた妖倒大会当日。

 昨日は終業式で、今日は冬休み初日のはずだった。


 アドニスをぬいた俺ら一年十組は、訓練場から数百メートル離れた広場で、列になって並んでいた。

 左を見ると、エルの向こうに数えきれないほどの人がお利口に座っていて、いろいろな形状の戦闘服をきている。


 っていっても、貴族風か騎士風のパンツスタイルがほとんどだけどな。


 アネモス先輩の話によると、各学年九組が、それぞれ代表の十人を出場させてるんだそうだ。

 どいつも選りすぐりの、すごいヤツらなんだって。


 そして、結局アドニスが教室にくることはなかったし、俺もあの声のことは誰にも相談していない。


 アレが何か、本当は知りたかった。


 俺は無知だから、エルやディル、ハルマに聞いたら分かったかもしれない。


 じゃあ、なんで聞かなかったかって?


 ⋯⋯恥ずかしいからに決まってるだろ。


 十二にもなってオバケ怖いとか⋯⋯笑いもんの的だ。


「アレって十組だろ? 劣等クラスのヤツらだ」

「モックにこてんぱんにされたんでしょ?」

「あーそれ。モックは強いもんな」

「今回の大会参加は、仕返しのつもりってウワサもあるよ」

「え、マジ? モックに勝つなんてムリだろ」


 あざ笑うようなバカにするような視線が、ずっと俺らを向いてるのはなんでだよ。


 ヒソヒソ話してる内容、ほとんど意味分からないし。


 俺が聞こえないフリをして前を向いていると、とん、と後ろから肩をたたかれた。


「モックは俺の兄な。二年十組だから、ここからじゃ少し遠いな」

「いや、むしろ遠くてよかっただろ」


 遠くても人にうもれてても感じられる、強気な視線。


 アレがモックだな。


「それより、三組ってことは強いのか?」

「あー⋯⋯まあ、そうだな⋯⋯」


 歯切れの悪さに俺が身をよじると、ハルマはなんとも言えないビミョーな顔をしていた。


 つっこみすぎたか?


「ごめん。嫌だよな、虐待受けてたヤツの話なんて⋯⋯」

「いや、そういうんじゃなくてだな。その、なんていうか⋯⋯」


 ハルマが言葉を探すように、首に手を当てて視線をさまよわせる。


「はっきり言っちゃえばいいのに。弱いって」


 エルがなんでもないように言うと、さっと空気が凍りついた。


「エル、バカッ」

「え?」


 ハルマはあせったように顔をこわばらせ、エルはきょとんと首をかしげる。


 たしかに、頑張って下級くらいだろうなと、モックにちらりと視線を流す。


「モックが弱いだって。劣等クラスの落ちこぼれのくせに⋯⋯」

「下級の妖を一人で倒せるくらいなんだぞ」

「将来エリートだって言われてるモックをそんなふうに見てるなんて⋯⋯!」


 氷の内側から一気に炎が燃え上がるみたいに、俺らに非難の視線が集中する。


 モックのところまで聞こえたのか、ぶっ潰してやるみたいな表情でにらんでるし。


 すごいな、敵意ばっかりだ。


 ⋯⋯隣の列は、九組か。


 先頭のほうから殺気がバシバシ伝わってくる。

 魔力量が多いヤツがいるのかもな。


 コンッ!


「痛ぁ!?」


 誰かが投げてきた爪ほどの大きさの石を、魔力の壁でハネ返して送り返す。

 まさか返ってくると思わなかったのか、八組辺りで悲鳴が上がり、ざっと波が引くように静まりかえった。


 くだらないな。


 自分でしたことが返ってきただけだろ。


「⋯⋯あー、ゴホン」


 タイミングを見計らったように、前で真っ白なヒゲをたくわえたおじいさんが、セキ払いをした。


 俺はひねっていた腰を戻し、座りなおす。


「えー。本日はお日柄もよく、天候に恵まれた日となりまして、絶好の妖倒大会日和にございます。選手のみなさんも、教室で見学しているみなさんも、一人も欠けることなく⋯⋯」


 ⋯⋯えー、これ、長くなる?


 前でしゃべってるのって、校長だよな?


 俺らがあいさつに行ったとき、それはもう、最っっっ高のお出むかえでな。

 ノックしても返事ないわ、入ってエルが話しかけても会話する気ないわ、一人でコーヒー飲んで散々待たせたあげく、「目ざわり」の一言。

 エルが止めなかったら、机とコーヒーカップ粉々にしてたわ。


「⋯⋯では、冬の妖倒大会、盛り上がっていきましょう」


 ハッと意識を戻すと、校長の後ろに十数人の教師らしき人たちが立っていて、何かを手に振りかぶっているところだった。


 パパパァンッ!


 クラッカーみたいな破裂音が彼らの投げた玉から鳴り響き、細かな色紙がくるくると回りながら宙を舞う。


 ⋯⋯手動、なんだ。


「今回の種目ですが、例年どおりですと、不慮の事故等をさけるため、生徒同士での能力の行使を禁止しておりましたが、妖倒士長様より通達がありましてですね」


 校長はそこで言葉を切ると、鼻の頭に乗った紙をぺっと手で払った。


「『敵のふところにとびこめ! ドキドキ☆急所破壊ゲーム!』に決定いたしました」


 いや、名前ダサッ。

 幼児が行くようなテーマパークにありそう⋯⋯。


「ルールはとてもシンプルなもので、選手のみなさんはコレを、頭、首、胸、のどこかにつけ、守ってください」


 校長は手のひらサイズの丸いスイッチのようなものを、自分の左胸につけてみせる。


「クラス対抗なので、みなさんは他クラスの人のコレをおしに行ってください。能力でおすもよし、気絶または戦闘不能にさせてからおすもよし。復活はなしで、自分のクラスの人全員がおされたら脱落。つまり負けです」


 スイッチに指を当てた校長は、ぐっと力をこめておす。

 すると、緑色に光っていたスイッチは、赤色へと変化した。


 なるほど、けっこう固そうだな。

 触れるだけじゃ、ダメってことか。


「それではみなさん、ご準備願います」

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