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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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10話

「⋯⋯まあ、そんなこと今考えてもしょうがないからさ。妖倒大会に勝つって、まずはそれを頭においとけばいいんじゃない?」


 エルは沈んだ空気を切るように言うと、俺とハルマの後ろに回って、肩をつかんだ。


「ほらもう日も落ちるし、はやく帰ったほうがいいよ」

「えっ、ああ⋯⋯。そう、だな?」

「はいじゃあ三人とも。また明日ー」


 エルがぐいぐいと背中をおして、俺らと外に出る。


 アドニス探しは、もうやらなくてよくなったとはいえ、俺が帰るの邪魔し出したのはエルなのに⋯⋯。


「おすな。自分で歩けるって」


 俺はパッとエルの手を払い、不満をこめてにらみつける。


 降参とでもいうように両手を上げたエルは、眉をハの字にしてへニャリと笑った。


「ごめんって。帰ろ帰ろ。プリン買ってあるから、それ食べて機嫌なおしてよ」

「⋯⋯ん」


 それなら、とマフラーに顔をうずめて足を進める。


「俺のは?」

「ないに決まってるだろ。いつも一個しかおいてないんだから」

「じゃあ、コアのよこせ」

「は? 何言ってるんだよ。嫌だね」


 わあわあと言い合いを始めた俺とハルマに、エルはあきれたため息をつく。


「ハルマの分は、麓の店で買っていこう。だから、ケンカしないのー」


 今にもつかみかかりそうな二人の首根っこをつかみ、引きはがす。


 次はハルマの分も買っておこうと考えるエルをよそに、ハルマがぼそっとつぶやいた。


「下で待ってる」

「は?」

「え?」


 止める間もなく、獣道を駆けおりていくハルマ。


 一瞬で彼は木々の中へと消え、俺とエルは顔を見合わせる。


「⋯⋯ハルマって今、金持ってないよな?」

「うん。少しでも、身軽なほうがいいって⋯⋯」


 俺も同意見だから、金は基本的にエルが持ってる。


 じゃあ別に、はやく行く必要ないよな?

 麓で待ってるっていったって、俺らがおりるまでの間、やることないんじゃ⋯⋯。


 エルが俺の背後に回りこみ、少しだけかがむ。


「抱えてかなくていいって言ってるだろ!」

「えー? こっちのほうが速いのに⋯⋯」

「俺が急ぐ必要はないだろ! エル、先に行ってろ」


 俺が声に魔力を乗せると、エルは抵抗をみせたものの、結局は大人しく走っていった。


 いつもよりスピードが遅いのは、その抵抗の表れかもしれない。


「はあ⋯⋯」


 なんか、ドッと疲れたな。


 木々のすき間から、こぼれるようにさしこむ夕日。

 よく見ると、オレンジ一色じゃなくて、夜の暗闇も混ざり始めてて、紫がかったモヤがかかってる。


 いつもなら、とっくに家についてる時間だ。


 アドニスが突然怒って教室を出ていって、探しに行こうってときに先輩たちに襲われて。

 妖倒大会での条件を聞いたときは勝つことしか考えてなかったし、むしろチャンスだと思った。

 エルとハルマ、それに俺も妖関係のことがバレたかもって思ったときは、胃が浮くような思いだったけど、先輩たちの印象と言動がちぐはぐでつかめなくて。


 なんか、今までの学校生活の中で一番いろいろあったな、なんて⋯⋯。


「期待しているよ、コア」

「っ!?」


 耳元で機械の合成音声がささやき、俺はバッと耳をおさえて振り返る。


 全く気配を感じなかった⋯⋯って、誰もいない?


「⋯⋯ま、さか」


 かすれた声が、たたきつけるような北風にさらわれる。


 そんなわけ、ないよな。


 死んだら、生まれ変わりも転生もない。

 もちろん、未練がこの世に残ることだって。


 ない。ないのに⋯⋯。


 ノアやガンマが、魂だけ残っている話が頭をよぎる。


「くそ⋯⋯っ。克服したと思ってたのに⋯⋯っ!」


 ドッドッと心臓が早鐘を打って、サイレンを鳴らす。

 今すぐこの場から逃げ出したいのに、足が地面にぬいつけられたみたいに動かない。


「ゆーれい、なんて⋯⋯っ」


 ガサッ。


「ひっ」


 風が草を揺らした音だったのか、獣が葉を踏んだ音だったのか、そのときの俺には冷静に構える余裕なんてなかった。いや、なんでも同じだった。


 日常的に何気なく聞き流すであろうその自然のさざめきは、ただ俺の恐怖を限界にハネ上げるには十分で。


 俺は文字どおりはじかれるように、山を駆けおりたのだった。

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