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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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9話

「落ちついたかい?」

「⋯⋯ああ」


 ハルマがドアノブをつかむ手をゆるめるのを見て、手を離す。


「よかった。では改めて。私はアネモス。条件を満たした妖を操ることができるんだ」


 アネモス先輩は後ろの先輩たちを紹介するため、手のひらを上にして彼らに向けた。


「爆破が能力のボム、相手の心が読めるハータッチ、サポーターのサーヴィルだ」


 彼らは、バラバラと頭を下げる。


 爆破が能力ってことは、ハルマが出ていこうとしたときに爆発したのは、ボム先輩か。


 サポーターって、なんでサーヴィル先輩だけ能力の説明してくれないんだろうな。


「キミたちも紹介を頼むよ」

「はあ。⋯⋯って、俺?」

「ああ。キミがリーダーなんだろう? キミ中心に一年生の空気は回っているように見えるよ」


 アネモス先輩が、一瞬笑顔を引っこめる。


 その品定めするような表情に、ツー、と冷や汗が背中を伝った。


 俺はリーダーじゃないし、空気を回してなんかない。


 このクラスの中心は、みんなのことを一番よく見てるアドニス⋯⋯。


「⋯⋯そうだ。アドニス探しに行かないと」


 先輩たちのせいで、けっこう時間食ったな。


 さっさとつれ戻して帰りたいから、あんま遠くに行かれると困る。


 エルの鼻で、匂いをたどってもらうか。


「エル⋯⋯」

「その必要はないよ」


 立ち上がってエルを呼びかけた俺を、アネモス先輩がさえぎる。


「アドニスとは少し縁があってね。条件も私が勝手に決めてしまったし、妖倒大会には必ずつれてくると約束しよう」


 今、妖倒大会にはってとこ、強調したな。


「妖倒大会には? なんでそんなときにしか⋯⋯」

「おっとすまない。もうこんな時間か」


 アネモス先輩は腕時計を見て片眉を上げると、ハルマから妖を離れさせる。


「しかたない。大会までにはキミたちの顔と名前を覚えておくよ」

「じゃあな、一年!」

「ん? 俺様に見とれている女の子が二人⋯⋯」

「はやく行ってくださいよ⋯⋯」


 そのまま、話すことはないとでも言うように、俺の横を通って外へ出ていった。


 なんていうか、嵐みたいな人たちだったな。


 会って早々妖をけしかけてきて、扉の先で爆発して踊ってうわ言言って⋯⋯。


 騒がしかったけど、四人とも相当な実力者だ。

 たぶん、俺と同等か、それ以上の。


「アドニスたちが、僕が妖だって気づかないから、いつもどおり妖力使っちゃったけど、大丈夫かなぁ」

「っそうか。すっかり忘れてた⋯⋯!」


 エルは先輩たちが去った先を見つめて、のんびり言うけど、俺はそれどころじゃない。


 相当な実力者。

 ってことはきっと、人間か妖かの区別くらい、人型だったとしてもつくはずだ。


 俺は、使い魔の妖に会ったことがないから分からないけど、それでもハルマは気づいた。


 もしかしたら、エルが七柱だってことまで、バレてるかもしれない?


 マズい、告発されたら終わりだ。

 俺らはここにいられなくなる⋯⋯!


「今から追いかけ⋯⋯」

「待て」


 バッと走り出しかけた俺の肘を、ハルマがつかんで止める。


 なんで止めるんだと振り向くと同時に、ハルマが耳元に口をよせた。


「なん⋯⋯っ」

「アイツらにバラす気はない。気づいてるような素振りもなかったが、たぶん確信は持ってる」

「⋯⋯なんで分かるんだ?」

「俺らに興味なさそうだったから」


 興味がない?


 それだと、言ってたことと違うぞ?


 試すとかなんとかしてきたくせに、俺らのことはどうでもいいのか?


 ハルマは俺の視線に肩をすくめ、足を一歩引いた。


「ねーえ! アルトちゃん! まだダメなのー?」

「だーめ。⋯⋯あ、いや、いいかも?」


 レイラの催促する声に顔を向けると、アルトがニヤニヤしながらレイラの目を、手でおおっていた。


 ? 何してるんだ、アイツら⋯⋯。


「アルトちゃん⋯⋯。さすがに、キッ、キスはしてないと思うよ。そんな近くなかったし⋯⋯」

「なーに言ってんの、セピア。顔と! 顔が! 重なったんだよ!? チューしたに決まってるでしょ!」

「チュー!? ボクも見たかったあ! なんで目隠しなんかするんだよー。ボクもう中二だよ?」

「なんとなく?」


 セピアが気づかうように小声で言ったのに、アルトとレイラがわいわいと盛り上がり始める。


 キス? チュー?


 そんなのしてたか?

 誰と誰が?


 俺が首をかしげると、エルが言うのをためらうように口を半開させる。


「なんだよ」

「あー⋯⋯うん。気づいてないならいいよ。ヘンな誤解は、知らないほうが幸せってこともあるしねぇ」

「はあ?」


 俺が眉をひそめると、エルはあははとごまかし笑いをする。


 なんだよ。気になるじゃんか!


 ヘンな誤解って、俺の?

 誤解なら、といておいたほうがいいだろ。


 俺が詳しく聞こうと、口を開きかけたときだった。


「にしても、ハルたちってば、よくあの魔力の圧を向けられても平気だったよねー。うちなんか、自分に向けられてるわけでもないのに、へたりこみそうになっちゃった」


 アルトが恥ずかしがるように頬をかき、セピアとレイラがうんうんとうなずく。


「今の三年十組の先輩たちは、実力的には中級から上級だって聞くし、いろいろ悪いウワサもあるんだよねぇ」

「うんうん。本当はもう資格とれるくらいなのに、他クラス病院送りにしたとか、喧嘩を誘発したとかで、卒業停止扱いなんだって」


 中級から上級か。

 予想どおりだな。


 資格とれるくらいって、そっか。


 妖倒士として認められるの、本当は高校生からなんだっけ。


 卒業停止扱いで高校に上がれないから、資格もとるにとれないのか。


「あれくらいの圧は慣れてるし、ウワサはあくまでウワサだろ? 俺らが被害受けないならいい⋯⋯」

「でも、今まで見かけたことすらなかったのに。こんな中途半端なときに現れるなんて、何かたくらんでるかも」


 たしかに。


 アルトの言葉に、シン、とみんな黙りこむ。


 アネモス先輩はあやしい宗教の教祖様みたいな雰囲気で、ボム先輩は⋯⋯単純そうだった。

 ハータッチ先輩もサーヴィル先輩も、変わってるなと思ったし、どこかつかみどころがなかった。


 何かたくらんでる、か。


 そう考えるのが妥当だよな。

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