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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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8話

 ふっと外から風が吹きこんできて、ある案が頭に浮かんだ。


「回せ、エル」


 俺らとアルトたちの間くらいに、等身大の三枚刃の魔力を、扇風機をイメージして形作る。


 声に魔力を乗せてエルに命令すると、ソレはゆっくりと回り始めた。


 煙を吸ったらダメだから、エルに説明はできない。


 察してくれっていうのも、ちょっとムリあるだろ?


 でも、はやめに煙はなくさないとだから、命令を使わせてもらった。


 煙は唯一のはけ口である開け放たれた扉に、吸いこまれるように流れていく。


 「ふーむ。やるなあ一年!」

「おわっ!?」


 晴れていく視界に、ドアップの人顔が浮かび上がり、ズザザーッととびずさる。


 なっ、なんなんだ⋯⋯っ!?


 目と鼻の先っていうか、もうほぼ当たってたぞ!?


「ボム。キミは人との距離が近いのだから、少し離れるように意識したほうがいいと言っただろう? 特に、初対面の人にはね」

「そうかそうか、近かったか! 悪かったな一年! アネモスも、次からは気をつけるとしよう!」

「ああ。すぐにでもそうしてくれ」


 ボムと呼ばれた大柄な男の人が、豪快に笑いながら、アネモス先輩の肩をたたこうと距離をつめる。


 アネモス先輩は、笑顔でさりげなく間に妖を挟んだ。


 ⋯⋯あっちはあっちで、苦労してそうだな?


「ハルマはっ」

「無事だよ。僕が定期的にハルマの魔力イジってたから操れただけで、ほんと、ラッキーだったねぇ」


 いつの間にかエルが隣に立ってて、ふわあとあくびをした。


 けど、エルの手は空っぽだ。


 不純妖をつかまえたときみたいに、ハルマを手元に引きよせてたと思うんだけど⋯⋯。


「手ぇ放したら、すぐとび出して行っちゃってさぁ。⋯⋯ほら、あそこ」


 エルが指さした先には、二人の見知らぬ人がいた。


 その片方、ダークブラウンの長髪の男の人に、ハルマは腕をつかまれていた。


「はな、せ⋯⋯っ。俺はっ、条件をとり消しに⋯⋯っ」

「ダメだ。この俺様が、さ☆ら☆に☆輝く舞台のために、貴様らが必要なのだから」


 彼はササッと滑るようにステップを踏むと、ハルマの腕を引いて、ガッチリ腰に腕を回した。


「何するんだ⋯⋯うわっ!?」

「知ってるかい? 妖倒大会では、最低でも二学年は出ねばならんのだ。二年生は出ないだろうから、俺様たちが出るには、一年生に出てもらわなければならない」


 話しながらも、流れるようなステップでハルマが逃れようとするのを防いでいる。


 ぶっ。ハルマが社交ダンス踊らされてるぞ⋯⋯!


 あのしかめっ面、傑作だなぁ!


「それとモックの条件と、なんの関係があって⋯⋯」

「負けたら貴様ら⋯⋯一年十組を好きにしていいという条件。不戦敗はありえないだろう?」

「っ!」

「貴様らは絶対に参加させる。ゆえに、貴様は行かせん」

「この⋯⋯っ!」


 ハルマがギリッと奥歯をかみ、右足で長髪パートナーの足を狙う。


 けど、彼は華麗な足さばきでハルマの攻撃をよけ、受け流し、誘導する。


 すごいな。


 あのハルマの攻撃を、全く食らわないなんて⋯⋯。


「この、キラキラと俺の健康に悪い粒子をふりまく陽キャどもめ⋯⋯! 腐って灰になって空にとばされてしまう⋯⋯俺にはまぶしすぎるんだよ⋯⋯! 帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい⋯⋯ぁいや、俺が帰ったら寮の空気が湿ってしまうのか⋯⋯」


 膝を抱えて座りこんだもう一人の先輩は、体を丸めて、ブツブツと壁に向かってつぶやいている。


 ネオンに近い、明るい紫色の髪は雑に切りそろえられていて、戦闘服の形状も相まって、ダンゴムシに見えてきた。


 あの人、ホントに妖倒士志望⋯⋯?


 どう見ても、妖と戦えるとは思えないけどな。


「と、いうわけなんだよ。十組は今回、妖倒大会に出場する。もちろん、」


 ボム先輩をなんとかひっぺがしたアネモス先輩が、三人に目配せする。


 彼らはさっと表情をかえ、アネモス先輩の後ろにひかえるように立った。


「我々三年十組も、勝利のために全力をつくそう」


 アネモス先輩が片手を胸に当て、ニコッとほほえむ。


 うっ、今すごい背中がゾワッてした⋯⋯!


 うさんくさいっていうか、絶対に何か裏があるって!


 よく考えると、先輩たちの行動は突然すぎるような気がする。


 興味がわいたっていうのは、そんなに大きな原動力になるか?


 ほぼ一年間、一度も姿を現したことがない。


 毎シーズン開催されてるにも関わらず、不参加だった妖倒大会。

 今になって出ようと思った理由が分からない。


 衝動的で片づけるには、不自然なところが多いわけで⋯⋯。


「離せって!」


 ハッと顔を上げると、ドアノブにしがみついたハルマが、アネモス先輩の妖にはがいじめにそれていた。


 何やってるんだ、アイツ⋯⋯。


 そこまでして外に、自称兄に条件変更しに行きたいのかよ。


 俺があきれてため息をつくのと、ハルマが叫ぶようにわめきだしたのが同時だった。


「アイツの非道さを知らないから『好きなように』とか言えるんだ! 負けたらみんなまでアイツに使い潰される! そんなの絶対に⋯⋯っ!」

「勝てばいいだろ」


 苦しそうに叫ぶハルマを見てられなくて、俺はハルマの正面に回りこむ。


 そして、ぎゅっと両手で頰を挟んで黙らせる。


「勝てば、アイツがハルマに手を出してくることはなくなる。条件をなくす理由なんかない。むしろありがたいくらいだ」

「でみょっ⋯⋯!」

「あーもう! うるさいなあ! 負けるわけないだろ!?」


 食い下がるハルマに、ヤケクソ気味にたたきつける。


 ハルマは、驚いて目を丸くする。


 なんとしても勝つ。で、条件を守らせる。


 俺が、あんなヤツらに負けるなんてありえない。


「だから、もう苦しい表情(かお)するな」


 ハルマのオッドアイが、衝撃を受けたように震える。


 自分が苦しんでる表情してたことに、今気づいたみたいに。

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