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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
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7話

 三年十組⋯⋯!


 みんなも見たことないって言ってた、劣等クラスのセンパイだ⋯⋯!


「私の能力は、少々特殊でね。詳細は明かせないが、妖を操るものなんだ。ソレも私のだから、離してくれないだろうか」


 丁寧にお願いしてるけど、離せという命令の圧が伝わってきて、大人しく魔力を消す。


 拘束がなくなった人食い妖は、のそりと起き上がると、俺らのことなんか見向きもせず、アネモス先輩の隣にひかえた。


 妖を操るなんて能力、聞いたこともないけど。


 たしかに本当みたいだな。


「それで、アネモス先輩はなんの用でここに? 今まで一度も姿を見せたことはないと聞いていますが」


 俺をさりげなくかばうように、エルが前に出る。


 警戒してる?

 アネモス先輩を?


 たしかにタダ者じゃないオーラが出てるけど、仮にもこの学校の生徒だ。


 危害を加えるようなことはしないと思うけど⋯⋯。


「そんなにうならないでくれ、子猫ちゃん。私は気まぐれなんだ。今朝、そこのキミとキミが、他クラスの子ともめてるのを見て、少し興味が出ただけだよ」


 アネモス先輩は、俺とハルマを指さしてほほえむ。


 子猫ちゃん、って⋯⋯。


 エルは獣型になると黒猫の姿だ。


 まさか気づいて⋯⋯!?


 俺がエルを見上げると、エルは一瞬だけ視線をよこして、すぐに戻した。


 ⋯⋯動揺するな、か。了解。


 俺がアネモス先輩に視線を戻すと、彼は小さく肩をすくめた。


「興味、ですか」

「ああ、そうだよ?」


 アネモス先輩が当然のように答えると、エルの目が一層冷ややかになった。


 気のせいか、教室の温度も数度下がったように感じる。


「それだけなら、お引きとり願います。僕たちは、見世物でも玩具(おもちゃ)でもないので」

「つれないな。せっかくいい提案を持ってきたというのに」

「提案?」


 エルが明らかにあやしんでいる声色で言うと、アネモス先輩は慣れているように苦笑した。


「さっき、例の生徒が十数人のクラスメイトをつれて、こっちに向かってきていてね。止めたんだよ、さすがにクラス同士での衝突はマズいと思って。でも、かなり腹を立てていたようで、帰ってくださいだけでは聞いてくれなかったんだ」

「⋯⋯それで、どうしたんですか」


 エルの問いに、アネモス先輩がニヤリと口角を上げる。


 うわー、嫌な予感するー⋯⋯。


「条件をつけた。キミたち、毎シーズン恒例の妖倒大会は知っているね?」


 ⋯⋯え、何ソレ?


 妖倒ってつく時点でなんとなく予想はつくけど、毎シーズンってなんだ。


 一年に四回もあるのか?


 アネモス先輩はぐるりと俺らを見回して、頭にハテナを浮かべる俺で止まった。


「知らない子もいるみたいだね。妖倒大会っていうのは、名前のとおり妖を討伐する大会⋯⋯ではなく、クラス対抗で出されたお題をこなして競うものなんだ」

「日頃の訓練の成果を発揮して、高め合うため、ですよね。前回は十キロのおもりを背負って、ウサギとびしながらコイン探し、でしたっけ。学校長に聞きました」


 ウサギとびでコイン探し!?


 両手は後ろに組んでて、コインつかめないし⋯⋯妖倒士関係なくないか?


 しかもなんか、十キロってビミョー⋯⋯。


「そうだったかな? 私たち十組は、毎回棄権しているからね。分からないな」


 アネモス先輩は、天気の話をするみたいにさらりと流す。


 毎回、棄権?


 なんで⋯⋯。


「つけた条件は、私たち十組が勝ったら、今後一切十組生徒に手を出さないこと」


 それって、ハルマに関わらないってこと?


 ハルマの家との関係を、一つ切れるんだ⋯⋯!


「負けたら、キミたちをどう扱ってもいいということで落ちついた」


 教室の奥のほうで、息をのむ音が聞こえた。


 見ると、ハルマが目を見開いて口を震わせていた。


「本当に、どう扱ってもいいって⋯⋯」

「ああ。それなら、と納得して帰っていったよ」

「そんな⋯⋯っ!」


 ハルマは、ガタンッと椅子が倒れるのもかまわず立ち上がると、机に足をかけた。


「ハルっ?」


 高速で移動したハルマは、アルトたちには消えたように見えたんだろう。


 けど、違う。


 前までは俺も動きが見えなかったけど、ノアに少し近づいたことで、目で追うことができてる。


 ハルマは、外に出ようとしてるんだ。


 でも、なんでだ?


 焦ってるようにも見えるし、腹が痛かったり⋯⋯。


「っエル!」

「りょーかい」


 扉の奥、雑に刈られた草の一端に、線香花火の火花みたいなモノが、パチパチと爆ぜる。


 アレはマズい⋯⋯!


 エルは、俺の声より先に、ハルマに手をつき出す。


 ハルマは一歩が大きい。

 一気に距離をつめられると同時に、方向転換ができなかったり、動きが読みやすいって弱点がある。


 だから、あのままだと⋯⋯!


 バンッ!


 空気を入れすぎた風船がわれたような音とともに、火事の煤煙が教室に流れこんでくる。


「ゲホッゴホ⋯⋯ッ」


 煙はあっという間に部屋をうめつくし、俺は手で口をおおって床にはいつくばる。


 煙が邪魔で、エルたちが見えない⋯⋯!


 気配からして、誰かが能力を使ったな。


 アネモス先輩の仲間⋯⋯?


 試したって言ってたやつ、まだ続いてたのか⋯⋯!?


「⋯⋯俺、言ったじゃないですか。ボムはいつも(りき)みすぎて、魔力の放出が多いんだって」

「なあに。あれくらい大したことないわ!」

「ふふっ。煤を被る俺様も、う☆つ☆く☆し☆い☆」

「ほめてないし、聞いてもらえない⋯⋯。どーせ俺なんか虫ケラよりずっと下で俺の話なんか蚊の鳴き声の次の次の次の次の次の⋯⋯」


 教室に入ってくる足音が⋯⋯三人か。


 声も会話の内容も敵意はないみたいだけど、姿が見えないのは嫌だな。


 煙をどうにかしてなくせれば⋯⋯。


 ふっと外から風が吹きこんできて、ある案が頭に浮かんだ。

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