表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 七章
59/78

2話

「俺はな、思うんだよ。どんな命だって、大事で尊いんだって」

「ああ」

「でもな、それを助けるために自分の命をかけるとなると、話は違ってくる。助けるならやっぱ、大切なヤツがいいんだよ」

「ああ」

「だから⋯⋯な!? 俺、あれでも結構必死だったんだぞ!? もう二度とあんなことするなよ!?」

「ああ。もうしない」


 淡々と、メンドくさそうに返事をするハルマ。


 ザクザクと枯れ葉を踏みつつ進み、一度も俺と目を合わせない。


 本当にこれ、分かってるか?


 あれからハルマは俺の家で暮らしてて、もう二週間が経った。


 お母さんの手伝いをしたり、エルとディルと家の裏で能力の練習をしたりして、なんやかんや俺よりも動いてる気さえする。


 やらなくてもいいんだぞって言ったけど、申し訳ないの一点張り。

 居候にはなりたくないらしい。


 まあハルマがやりたいならいっかって、最初は思ってたけど、いつの間にか中級の妖討伐依頼を何件かこなしてたのは、さすがに止めた。


 だって、一人で行くのは危ないだろ?


 なんかイレギュラーが発生して、ハルマが帰ってこなかったら⋯⋯考えただけで全身の血の気が引いたんだよ。


 ――大事なモノはもう、全部全力で守らないとダメだよ。


 ノアと約束したんだ。


 大事な人はもう、失いたくないんだ⋯⋯!


「俺は生きるって言ってるだろ。もうそれ、一日三回は聞いてる。飯かよ」


 ハルマがダルそうに吐き捨て、歩くスペースを上げる。


「はあー!? 絶っっっ対にテキトーだろ、お前! 待て!」


 なんだよそれ!


 俺はただ、ハルマに死んでほしくなくて⋯⋯。


「コア。言いすぎるのもしつこいと思うよ」


 走り出しかけた俺の肩を、エルがつかむ。


 言いすぎ⋯⋯?


 俺が? ハルマに?


 そんなことないと思うけどな。


 ハルマは一回、無関係な大人数と自分を天秤にかけて、俺に殺させようとしたんだ。


 正気じゃないって思うよな。

 でも、実際やったことなんだ。


 一回失いかけたから、どうしたって『また』を考えちゃうんだよ。


「ハルマを信じることも、大切だと思うよ。それに、ハルマは強い。仮面もとって、魔力を使えるようにもなったし」

「は⋯⋯? 言われてみればたしかに、仮面をつけてないな。外で外すのは初めてか?」

「えぇ? 今ぁ?」


 エルが、あきれたように肩をすくめる。


「コア⋯⋯。俺に口出すのに、さほど興味はないんだな」


 ハルマは肩ごしに振り向くと、絶対零度のごとく冷ややかーな目で俺を見下ろした。


 そして、さらにスピードを上げて山を登っていく。


「ちょっ、ハルマ! ごめんって!」


 速っ!?


 もう遠すぎて、米粒くらいの大きさになってるんだけど⋯⋯!


 そんなに怒ること!?


「あーあー。コアがやっと人に心を開くようになったと思ったのに、今までのツケが回ってきたねぇ。他人への興味の薄さ、観察して記憶する気のなさ、出てるよ」


 ウッ⋯⋯!


 心当たりがありすぎて、条件反射で顔をそらす。


 だって、分からないんだよ。


 覚えてる覚えてない、見てる見てない、とかじゃなくて。


 ただ単に、ハルマはハルマだから。


 昨日今日でつけてるリップ違うんだよとか、分け目変えたんだよとか、正直気づける自信がみじんもない。


 リップはリップで、髪は髪だ。


 それ以外の、なんでもないし。


 ⋯⋯って、この考え方がダメなのか?


「うぅ、難しい⋯⋯」

「まあ、そういうのもアリかもだけど。大事なのは、他人とどう接したいか、相手がどう接してほしいと思ってるのか、を知ることだよ。あとは、自分から歩みよるとか」

「どう、接したいか⋯⋯」


 エルが、俺の手を引いて歩き出す。


 まだまだ寒い冬の空気が、今はいつもより透明で、引っついてくるような気がした。


 接し方、か。


 そうだよな。


 人と一緒にいるって、相手が俺の手を握り返してくれないと一方通行だもんな。


 ⋯⋯でも。


 楽しいだけじゃ、なんとなく心地いいだけじゃ、ダメなのか⋯⋯?


「あ。でも、コアが他人に興味ないのは事実だよねぇ」

「ぅ⋯⋯」

「大丈夫だよ。僕たちはいなくならないし、ハルマは自衛できるように鍛えてる。他にも、コアの大事なモノは守るよ。だから、失うことは考えないでいい」


 パッと顔を上げると、エルは真剣な表情で、真っすぐ前を見つめていた。


 決意にも自己犠牲の念にも見えて、俺は結局何も言えないまま、つないだ手に視線を落とす。


 ときどき思うんだけど、さ。


 俺は並みの妖倒士よりは強い自覚あるけど、実際はエルたちに守られてばっかりで。


 その度に、俺のせいで傷ついて。


 それって、俺が弱いからだよなって、悩むときがあるんだ。


 エルとディルは妖の中でも七柱で、俺と比べものにならないくらい強い。


 妖側にいれば安泰だし、こっちで俺を守る理由なんてない。


 エルは、妖が踏みにじってきた人間について知りたいって言ってたけど、それって俺のとこじゃなくてもできるし。

 ディルだってノアのためだから、もしかしたらアルファが俺からノアを離せるかもしれないし。


 妖倒士の世界には、俺より強い人がたくさんいる。


 わざわざ、俺にしばられる必要なんて⋯⋯。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ