12話
「⋯⋯妖は、魔力以外の攻撃は通らない⋯⋯」
「そ。妖力と魔力を混ぜたのなんて、妖にとっては中途半端だから。致命傷でも、ガンマならどうにかできるってわけ。そのかわり、ガンマの意識も出てきちゃったけどね」
⋯⋯そういうことか。
ガンマが、ハルマを死から救ったんだ。
爆弾はきっと、ハルマが一回死んだことでもう止まってて、数十万人の人は被爆をさけられた。
エルはそのつもりで、ハルマが死んでからアルファに助けさせたのか?
でも、エルってそこまで考えられ⋯⋯いや、やめよう。結果としては最高なんだから。
「ガンマの魂だけないって、一時期大騒ぎだったけど、こんなところに隠れてたなんてなー。そりゃ見つからないわ」
「⋯⋯は? 魂?」
「そ。ノアちゃんだって、コアのとこに隠れてたし。妖帝様もデルタも必死に探してたのに、まさか人間側にいるなんてねー! ⋯⋯え、何その反応」
「そんなの知らない。アルファこそ、死んでも魂が残るとか思ってるのか? 夢見すぎだろ」
「死んでも? ⋯⋯アッハハハハハ! コアは本当に無知なんだねー! ラムダの言うとおりだ!」
俺は、腹を抱えて笑うアルファに眉をよせる。
⋯⋯だって、そうだろ。死んだら何も残らない。
アルファはひとしきり笑うと、なぜかはげますように俺の背中をたたいた。
「あのね、正確に言うと、ガンマもノアちゃんも、死んではいないんだよ」
「死んでない? まだ生きてるってことか?」
「いや? 生と死の狭間で、魂だけ残ってる感じ。だから、完全には消えてないんだけど、この世に直接干渉はできない。あと、数分で消える」
「⋯⋯なるほどな。だから、俺たちにとりついてるってことか」
「そーそー」
よくできましたとでもいうように、頭に手を伸ばしてくるアルファを、魔力で制す。
わざとらしく頬をふくらませたアルファは、俺をじっと見つめてから息を吐いた。
「で、何かの拍子に、宿主を通じて現実世界に干渉できるときがある。それが、さっきのだよ。あたしはきっかけを作っただけ」
「妖力を増やして、ガンマを引っぱり出したわけか」
⋯⋯待てよ。妖から半妖に戻っても、って、アルファは言ったな。
「⋯⋯なあ。俺も妖力を増幅させたら⋯⋯ノアの意識が出てくる?」
そういうことだろ。
ハルマは、ガンマの意識が出てきたんだから。
俺は、昔の記憶をとり戻したい。
それにはノアが関わってるみたいだから、本人に聞くのが一番だろ。ディルにも会わせてやりたいし。
アルファは、思わぬ言葉が出てきたというように目を見開き、考えるように顎に手を当てた。
「そうだねぇ⋯⋯。ハルマの場合は血を引いてるから出てきやすかったんだと思うし、ハルマは半妖だから、完全に妖になっても大丈夫だったんだと思う。これはもう、生まれつきの体質の問題だから、なんとも言えないなー⋯⋯。それに、コアは契約で妖力が使えるようになったんでしょ? つながりはあるっちゃあるけど、ちょっと難しいかもねー」
「そう、か」
そう、だよな。
ハルマとガンマは血がつながってるけど、俺とノアは、仕組みもよく分からない契約だもんな⋯⋯。
「あああああでもっ、可能性がないわけじゃないよっ!? 一瞬だけ魂を具現化することくらいはできるし⋯⋯ホント一瞬だけど!」
俺がよほど落ちこんで見えたみたいで、アルファが慌てたように、わたわたと手足を動かして俺をはげまそうとしてくれる。
⋯⋯なんだ。アルファもなんだかんだいって、優しいよな。
結局、人間も妖も、そんなに違いはないのかもしれない。
改めて実感すると、なんだか世界が明るくなった気がして、夢が近く見えた。
「⋯⋯そういえば、ハルマと戦ってるとき、ノアが見えたんだ」
「ノアちゃんが?」
「ああ。すぐ消えちゃったけど、大切なモノは全力で守れって、力をかしてくれた」
「へー! じゃあ、何かきっかけがあったはずだよ!」
「きっかけ⋯⋯きっかけか。ノアが現れる前後は、体が軽くて傷の回復もはやくて⋯⋯」
「それきっかけじゃなくて、現実世界に干渉してる効果! なんかないの!? ほら⋯⋯ノアちゃんの能力使ったとか!」
「たしかにハルマに使ったけど! 模倣はわりと使って⋯⋯」
ふと浮かび上がった仮説に、言葉が止まる。
いつもと違うこと。
それは、魔力と妖力を持ったハルマに、ノアの能力である模倣を使ったことだ。
俺も魔力と妖力を持ってるし、考えてみればそれぞれガンマとノアの魂がついてて、同類だもんな。
で、その同類も少ないから、出会うことはおろか、能力を使ったことなんてない。
自分と似たヤツにノアの能力を使ったからかも⋯⋯なんて。それ以外に思いつかない。
黙りこんだ俺を、不思議そうにアルファがのぞきこむ。
グウウウゥゥ!




