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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
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11話

 ⋯⋯ウソじゃないの、本当は分かってるんだ。


 ハルマの左胸に小さくあいた赤い穴。


 そこから、水たまりが広がるみたいに、鉄臭い血が流れ出ている。


 安らかに閉じられた目は、満足そうで、俺は魂がぬけたみたいにボーッと見てることしかできない。


 ⋯⋯どうしてこうなった。


 ハルマは強いから、理不尽な暴力にも耐えてきた。

 ⋯⋯いや、耐えれてしまった。


 でも、ハルマは強いから、いつか俺を助けてくれたみたいに、これからたくさんの人を救えたはずだ。


 ケジメつけるってハルマは言ったけど、そもそも、そうなった原因は周囲の人間にある。


 半妖だからなんだっていうんだ。

 人間と妖の間に生まれてきただけだろ。

 同じ生き物として、かわりはない。


 プラスに捉えて、ハルマを受け入れてやることはできなかったのかよ⋯⋯!


「いてっ!」


 小石みたいな何かが、弾丸みたいな勢いでぶつかってきて、無防備だった俺は、こらえきれずに後ろに倒れる。


 ⋯⋯って、すぐ後ろ大穴!?


 慌てて魔力で支え、落ちるのを回避する。


「コア」


 優しく包みこむような重低音に、ドクンッと心臓がはねた。


 ⋯⋯まさか、いや、そんなこと⋯⋯っ!


 そんなはずないと思いながらも、体は急ぐようにバッととび起きる。


「ハルマ⋯⋯っ!?」

「ああ、俺だ」


 慣れないように、ぎこちなくほほえむハルマ。


 何事もなかったかのように上半身を起こしたハルマの手には、スズメくらいの大きさの白い小鳥が、ぐったりと寝そべっている。


 ⋯⋯ショックすぎて、俺、夢でも見てる?


 ギュッと頬をつねってみると、ちゃんと痛かった。


 現実だ⋯⋯!


 喉がキュッとしまって、目の奥が熱くなったときだった。


「⋯⋯なぁんてな」


 もてあそぶような声色に、ゾッと全身に鳥肌が立った。


 ハルマにとびついて、小鳥――ディルを奪うと、そのままの勢いで、二、三歩とび退く。


 コイツ、ハルマじゃない⋯⋯!?


「ガンマ、あたしの宝物を壊したら、今度こそ冥界に送るからねー」

「わーってるよ。ったく、面倒な制約つけやがって⋯⋯こんなん、まともに戦えねー」


 聞き覚えのある声にバッと振り返ると、長い赤髪を揺らしながら、小柄な少女が歩いてきていた。


「アルファ⋯⋯!?」

「久しぶり、コア! 会いたかったよー!」

「うおぁっ!?」


 アルファは、抱えていた黒猫をぽいっと放り投げると、まばたきの間に俺の首に腕を回した。


 速⋯⋯!?

 しかもなんか、重い⋯⋯っ!


 俺は、受け止めきれずに後ろに倒れ、ゴンッとコンクリの地面に頭を打つ。


「〜〜〜〜っ!」

「あ、人間てトロいんだった。ごめんね?」

「お前⋯⋯!」

「えーっと⋯⋯あった! コレで許して?」


 アルファは俺に馬のりになったまま、液体状のナニカを俺の顔面にぶっかける。


「ゲェホッ! ゴホゴホ⋯⋯ッ!」


 とっさに魔力で守れたのは、目と鼻のまわりだけ。


 他はびしょぬれで、口や耳に液体が流れこんで、おぼれたかのような錯覚を覚える。


 アルファのヤツ⋯⋯!

 絶対許さない⋯⋯!


「おい俺様をムシすんなよ」

「あっ、ちょっと⋯⋯!」


 アルファの肩をおして、俺の胸ぐらをつかみ上げたのは、ハルマの姿をしたガンマだ。


 同じ顔なのに、似ても似つかない表情と雰囲気に、俺はカッとなってガンマの腕をつかんだ。


「⋯⋯いいのか? コイツの腕がぶっ壊れるぞ?」

「ハルマを返せ」

「あーあー、怖いねえ。俺様がいなきゃ死んでたんだぞ、コイツ。ま、息子のためだ。別にいーけどな」

「っ! お前が親を語るな!」


 俺がたたきつけるように叫ぶと、ガンマはひるんだように一歩下がる。


 体が熱い。頭が冷たい。


 ハルマが今まで耐えてきたこと、コイツは知らないだろ。


 親のくせして、守ってやろうともしなかったのに、何が今さら息子だ。


 親面する権利なんてない!


「⋯⋯すっげー圧。妖力と魔力が合わさってんのか?」

「どうでもいい。失せろ」

「だってよ、アルファ。はやめに入れ物、頼むぜ」

「はいはい。いい子にしてたらねー」


 ガンマは、アルファの言葉にふっと目を細めると、気を失ったみたいに俺のほうに倒れこんできた。


 慌てて受け止めると、ガンマはすーすーと寝息を立てて眠ってしまった。


 コイツ⋯⋯! 人の体で⋯⋯っ!


 ハルマじゃなかったらスルーしてるのに!


 フーッフーッと息荒く、空想の中でガンマをボコボコにしていると、アルファが横からガンマをのぞきこんできた。


「⋯⋯うん。妖から半妖に戻っても、問題なさそうだね」

「妖? どういうことだ。ハルマに何をした?」

「おー⋯⋯。そんなに怖い顔しないでよ、コア。今は一時的に妖力を多くして、妖よりにしただけだって。ほら、その半妖⋯⋯」

「ハルマだ」

「え? あー、そう。ハルマね。ハルマの傷、なくなってるでしょ?」


 言われてハルマの背中を見ると、さっきは一向に治る気配がなかった貫通(ペネトレーション)の傷が、キレイさっぱりなくなっていた。


 でもなんで⋯⋯?


「いやー、ラムダから連絡がきたときはビックリしたよー。ガンマの妖力を増幅させることはできるかって、ガンマはあたしが七柱の儀式のときに倒したんだし、その必要が分かんなくてさー。⋯⋯でも、今なら、それ以外に方法がなかったって分かる。ガンマの回復力に頼るしかなかったって。ガンマはホントにタフネスだからねー」


 黙らせるのに苦労したもんだ、とつぶやいて、アルファが懐かしそうに目を細める。


 ⋯⋯アルファは、珍しいモノ以外に興味がないって言ってたけど、ちゃんと覚えてることは覚えてるんだな。


 たしかに、ハルマの回復スピードは異常だった。


 妖であるエルとディルだって、もっと時間がかかる。


 アレは、妖の体質を受けついでるからじゃなくて、ガンマのだったのか。


 でもだからって、死んだ後の回復は⋯⋯。


 そう考えて、俺はハッと息をのんだ。

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