表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
53/78

10話

「なあハルマ。俺、思うんだけど」


 ハルマのつむじを見ながら、なんて言ったらハルマに響くだろうって考える。


 生きててほしい。それは俺の願い。

 本当な死にたくないんだろ。これは死に希望を感じてる時点で却下。


 ⋯⋯あーもうっ、思いつかない⋯⋯!


「⋯⋯なんだ?」

「あー⋯⋯その、あれだ⋯⋯」


 ふと、ハルマと過ごした日々が頭の中に流れる。


「俺さ、ハルマと過ごしてると、すごい楽しいっていうか、あったかい気持ちになるんだよ」

「たの、しい⋯⋯?」

「そう。だから俺は、これからもハルマと一緒にいたいし、遊んでほしい。死んだらできないだろ」

「⋯⋯」


 おっ、ちょっと思うところでもあったか?


 でも、どこにだ? 全く分からない⋯⋯。


「⋯⋯俺は、生まれた瞬間から、暴力を受けて生きてきた」


 なんの前触れもなく、ハルマがポツリと話し出した。


「俺は半妖だから死ななかったが、鎖につながれて一週間殴られ続けたり、四肢を切断されたり⋯⋯。それを見て、みんな笑ってた。あわれんだりとかもなくて、みんな。死ななかったが、すごく痛かった。意識がとんでも。殴られ続けたり切られたりしてて、俺だからいいって、たぶん思ってたんだと思う。⋯⋯でも、俺だってアイツらとかわらない。半妖ってだけ。ちゃんと、同じ心は持ってるんだ」

「⋯⋯ヒドいな。逃げたりはしなかったのか」

「物心つくまでに慣れたみたいでな。もう、そんな気力なかった。どうでもよかった」

「そうか」


 無気力に口を動かすハルマを見てると、辛かったな、なんて軽い言葉はかけられなかった。


 たしかに、人間からして妖は敵だし、許せない存在なのかもしれない。


 でも、だからって、生まれてきたハルマにはなんの罪もない。


 ハルマが人を殺したか?

 何か害を与えたか?


 ⋯⋯否。ないだろ。


 親も周りの人間も、どうしてハルマを一人の人間として見てやれなかったんだ。


 どうして、生まれてきたことを後悔するようなことをするんだ。


 どうして、そんな線引きばかり好むんだ⋯⋯!


「今でもずっとなんだ。家にいれば、もう後戻りできなくなる気がして。でも⋯⋯そうだな。俺も、コアたちといると気が楽だった」

「⋯⋯なあ。じゃあさ、俺ん家にこいよ!」

「っ!?」


 気づけば、そんな言葉が口をついていた。


 生きててほしいっていっても、このままじゃハルマが辛いだけ。そんなの無責任だ。


 ハルマはぎこちない動きで俺を見上げると、ワナワナと口を震わせた。


「コア⋯⋯自分が何言ってるのか、分かってるのか!? コアの家の人にも迷惑がかかるし、それに⋯⋯」

「何言ってるんだ? そんなに気にするなら、(うち)で仕事すればいいし、俺は報酬もらってるから、金もある。ハルマはもう一人じゃないんだから、俺を頼ってもいいんだ。な? 名案だろ?」


 ⋯⋯まあ、嫌がっても連行するつもりだけど。約束だし。


 俺がニッと笑ってみせると、ハルマはあっけにとられたように口を開いた。


「よしっ。じゃあ決定な! エルとディルを回収して、帰⋯⋯」

「ムリだ」


 声が出ないハルマを、勝手に肯定と受けとり、俺が立ち上がったときだった。


 けげんに思って見下ろしたハルマの瞳は、穏やかだったけど、俺はすごく嫌な予感がした。


「⋯⋯まさか!」


 耳をすますと、かすかにピッピッと単調な電子音が聞こえ、俺はバッとハルマの肩をつかむ。


「すぐに止めるんだ! さっきだって、プログラムをイジったんだろ!? だったら、止めることだって⋯⋯!」

「できない。俺は、戻ることなんて考えてなかったから、もう変更できないようにしてた」

「そん、な⋯⋯っ!」


 止められない⋯⋯!?


「⋯⋯まだ! まだ何か方法があるはずだ! えと、爆発処理班を向かわせるとか!」

「ムリ。もうあと、四分」

「ディルにウイルス入れてもらうとか!」

「体の一部とはいえ、機械だぞ? 物理的なウイルスじゃムリだろ」

「じゃあ⋯⋯!」

「コア。もういい。十分⋯⋯」

「ダメだ!」


 俺の必死の形相に、ハルマはなぜか、嬉しいような寂しいような、複雑な表情でほほえむ。


 やっと⋯⋯やっと解決しそうだったのに⋯⋯!


 ハルマは死ぬ気だ。爆弾を止めるために。


 なんでハルマが死なないといけない?

 ハルマが、何したっていうんだ⋯⋯!


「コア、笑って。俺、一回も見たことないから」

「ムリだ⋯⋯! まだあきらめるなよ!」

「俺が始めたことだ。ケジメはつける」

「ダメだ。そんなの、俺が許さない」

「悪いな。でも、嬉しかった。俺のために必死になってくれて」

「やめろって⋯⋯! 俺、勝負に勝っただろ!」

「⋯⋯悪い」

「謝るなら約束守れよ⋯⋯!」


 心臓が痛い。呼吸が苦しい。


 分かってるんだ、打つ手がないことくらい。


 分かってるけど、認めたくない。


 もう、大切な人を失いたくない⋯⋯!


「俺な、妖力も魔力も使えるようになったときから、本当は自分で死ねたんだ。でも、しなかった。なぜかどうしても、コアに殺してほしかったんだ。⋯⋯コアのおかげで俺、今すごい気分がいい」

「っ!」


 俺は今、自分がどうな顔してるか分からない。

 いや、そんなことどうでもいい。


 鼻がつんと刺されたみたいに痛くて、視界が膜をはったようにボヤける。


「ありがとう、コア」


 ハルマの手が、俺の頰をなでるように滑る。


 そして、ごく自然な動きで俺の足元に移動する。


貫通(ペネトレーション)


 俺の足元に大穴があき、予想外の出来事に、俺は一瞬思考が止まった。


 数十メートル落ちてから、魔力の足場を作って上にとび上がる。


 まさかこれ、俺に死ぬ瞬間を見せないため⋯⋯!?


 そんなことまですると思わなかった⋯⋯!


「⋯⋯はる、ま⋯⋯?」


 ハルマのすぐ横に着地した俺は、目の前の光景が信じられなかった。

 ⋯⋯信じたくなかった。


 脳がギュッと圧縮されたみたいに、何も考えられない。

 地面の感覚すらもあやしくて、どこか意識がフワフワしてる。


 まるで、夢を見てるみたいだ。


「ウソ、だよな。な、ハルマ。ハルマってば⋯⋯!」


 俺はすとんとへたりこんで、ボウゼンとつぶやく。


 ⋯⋯ウソじゃないの、本当は分かってるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ