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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
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9話

「だんまりか。なら、こっちから行くぞッ!」


 ハルマが地面をけって、俺に向かってくる。


 ワンパターン⋯⋯いや、ハルマはたぶん、そんなことしない。

 読まれたらかえてくる。


「悪いが使わせてもらう」

「な⋯⋯!? ぐぅ⋯⋯ッ!」


 直前に進路を急転換して背後に⋯⋯!?


 三角とびの地面バージョンってことか⋯⋯!


 ドッと背中をけられた俺は、地面に魔力をつき立てて減速する。


 助走がないのと体が強化されたことで、今回のけりはあんまり痛くない。


「気ぃぬくな!」

「くっ⋯⋯!」


 振り返るとほぼ同時に、俺の頭を狙うハルマの回しげりが見え、とっさにかがむ。


 と、一回転してきたらしいハルマの足が、ビュンッと俺の顔の横に現れた!


「⋯⋯やるな。急にどうした」

「ちょっとな。相棒が力をかしてくれたんだ」

「そう、か。いいな。」

「?」


 魔力でハルマの足を受け止めた後、ハルマがポロッとこぼした言葉。


 俺が首をかしげると、ハルマも不思議そうに首をかしげた。


 ⋯⋯なんだそれ。


「なんでお前が分からないんだよ?」

「さあ⋯⋯?」


 「いいな」って、相棒に対して?

 力をかしてくれたことに対して?


 どっちにしたって、うらやましく思ってることにかわりはない。


 どうしてだ? 殺してほしいなら、未練なんてないはずだろ。


 これじゃまるで、寂しいみたいじゃないか。


 ハルマは考えを断つように頭を振ると、一歩下がった。


「お前やっぱり、心から死にたいなんて⋯⋯」

「死にたいなんて思ってない。ただ、俺が解放される唯一の方法が、死だっただけだ」

「でも、そのわりには泣きそうな顔してるじゃないか」

「っ!?」


 ハルマが、今気づいたように口に手を当てる。


 ⋯⋯俺、思うんだけど。


 本当はハルマ、まだ生きてたいんじゃないかって。


 ときどき見せる泣きそうな表情は、死しか救いがないって分かっていても、俺らとじゃれ合った日々を、楽しいって思ってくれてるんじゃないかって。

 かすかでも、そこに光を見てくれてるんじゃないかって。


 心の葛藤が、無意識のうちに顔に出てるんだと思うんだ。


 たった一欠片でも。

 少しでも生きていたいって思ってるなら。


 俺は本人がなんと言おうと――死ぬべきじゃないと思う。


「死んだら終わりだ。生まれ変わりも転生もありはしない。後悔したって、もうやり直しはきかないんだぞ!」

「後悔なんてしない! ずっと⋯⋯ずっとこのときを待ってたんだ⋯⋯!」

「ウソつくな!」

「ウソじゃない!」


 じゃあその、ムカつく面やめろよ⋯⋯!


 俺は、出どころが分からない苛立ちに、グッと歯を食いしばる。


「⋯⋯もう分かった。ハルマが自分から目をそらしてるってこと」

「一番向き合った。ずっと向き合った。それで出た答えだ。何も分かってないのはコアのほうだ!」

「分かってないのはお前だ、ハルマ! 俺は、ハルマに生きててほしい!」

「だから、もう疲れたって言って⋯⋯」

「お前の望みだけおしつけるな! 俺の願いだって聞いてくれよ!」


 俺が感情のままに叫ぶと、ハルマが思わぬ方向からたたかれたように、ハッと目を見開いた。


「俺とハルマの望みは正反対。同時に叶うことはない」


 俺はプレッシャーを与えるように、ゆっくりと立ち上がる。


「だから⋯⋯勝ったほうに従おうぜ。負けたほうは相手の言うとおりにするんだ。こっちのが、シンプルでフェアだろ」


 ハルマを説得するには、もう強行手段に出るしかない。


 ハルマは迷うようにまぶたをふせた後、覚悟を決めたように俺をにらみ返してきた。


「いいだろう。ちゃんと殺せよ」

「負けたら、な」


 視線で合図し合うと、俺とハルマは同時に身を沈めた。


 地面をけるとすぐ、俺のわき腹にハルマの足が当たる。


貫通(ペネトレーション)

「っ貫通(ペネトレーション)!」


 能力が反発し合って、俺とハルマはそれぞれ反対方向に吹っとばされる。


 でも、俺のほうが一瞬遅かったから、若干痛⋯⋯くなくなっていってる?


 そういえば、最初にハルマにけられた腹も、今は全く痛くない。


 ――私の力も使って。


 体が強化されたのはノアのおかげだと思ってたけど、俺がノアの妖の体質に近づいたのか。


 ハルマほどの超再生はムリでも、十分ありがたい!


 俺は建物のガレキを魔力で吹っとばし、ダッとハルマのほうへ走り出す。


 と、急に頭をつかまれ、地面にたたきつけられた!


「つかまえた⋯⋯!」


 上から⋯⋯!?


 全然気づかなかった⋯⋯!


「く⋯⋯っ! ぐぁっ!」

「俺の勝ちだな、コア。約束どおり⋯⋯」

「それは⋯⋯どうかな⋯⋯!」

「何言って⋯⋯っ!?」


 俺はひじをついて起き上がると、頭を振ってハルマの手を払う。


 ハルマもようやく体の異変に気づいたみたいで、距離をとろうと足に力を入れる。


「!?」


 急に力がぬけたみたいに倒れこんだハルマは、体が自分の意思で動かないらしく、ピクリともしない。


 俺はハルマの横にしゃがみこむと、頭をつつく。


「俺に⋯⋯何を⋯⋯」

「エルとディルに協力してもらったんだ。ほら、俺がディルの刃物を投げたときがあっただろ? そのとき、刃物を魔力でけずって文字を書いたんだ。『ハルマの動きを止めてくれ』って」

「そん、なの⋯⋯ズルだろ⋯⋯!」

「ズルじゃない。俺、一人で戦うなんて言ってないだろ」


 ハルマがハッと目を見開き、悔しそうに歯を食いしばる。


 ⋯⋯ヘリクツだ。そんなの、俺だって分かってる。


 でも、俺一人じゃ勝てなかった。

 だから、助けを求めた。


 辛いとき、苦しいとき、助けを求めること。


 俺は、悪いとは思わない。

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