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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
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8話

「っ!」

「よけたか。まぁ、それくらいできてもらわないと困る」


 ガレキから顔を出した俺の頭めがけて、ハルマの足が振り下ろされる!


 ギリギリよけた俺の顔のすぐ横には、足があって、粉々になったガレキが宙を舞った。


 俺は、魔力の足場をけって、ハルマから距離をとる。


 ⋯⋯くそっ、腹が痛い⋯⋯!


 速さっていうのは、重さを生み出す。


 見えない上に強力な攻撃が続くとなると、それはもう、ハルマの独壇場だ。


 エルもディルも動けないし、俺一人で戦うしか⋯⋯ん? 動けない?


「おい、よそ見するな。俺を殺すことだけ考えてろ」


 ハルマが、トッと身軽に俺の前に着地する。


 気だるそうに歩を進める彼は、やっぱり感情が感じられない。

 まるで機械みたいだ。


 ハルマの足に力が入り、俺は自分をおおうように魔力をドーム状に変形させる。


 ドッ!


「⋯⋯なんで、守るばっかなんだ」

「なんでって、やっぱり俺はハルマを殺せないんだよ」

「理解できない。妖は殺す。それが妖倒士だろ」

「大切な、人だから」


 喉につっかえかけた言葉を、震わせながらも口にする。


 魔力の壁を何度もけっていたハルマが、目を見開いて固まった。


「最初は迷惑だったし、面倒だった。でも、一緒に過ごすうちに、楽しいって、もっと一緒にいたいって、そう思うようになったんだ。いつの間にかハルマは、大切な人になってたんだよ」


 ハルマはまばたきすらせず、じっと俺を見ている。


 もしかしたらこれ、説得できるんじゃ⋯⋯!?


 希望を感じた俺は、さらに力をこめて口を開く。


「なあ。ハルマは自分が望まれた存在じゃないって言うけど、俺はハルマに生きててほしいよ。今からでも、きっと遅くはないはずだ。だから⋯⋯」

「そういうの、いい。もう疲れたんだって言ってんだろ」


 ハルマがダンッと魔力の壁を殴り、もたれかかるようにしてうつむく。


 なんでだ⋯⋯?

 さっきまで、俺の話を聞いてくれててたのに⋯⋯。


「コア。本当に俺が大切なら」


 ハルマがゆっくりと顔を上げる。


「俺の意志も大切にしてくれよ」


 ⋯⋯あぁ、これはダメだ。


 ハルマの目は黒く沈んでいて、光がない。


 いくら話しても、きっとハルマが救われることはない。


 もう、目の前の『死』にしか、希望を感じていない。


 そんな、悲しい目をしていた。


貫通(ペネトレーション)


 バリンッ!


 魔力の壁が、ハルマを中心に円形にわれる。


「残念だ、コア。誰一人として、助けられなかったな」


 ハルマは俺の胸に手を当て、耳元でそっとささやいた。


 ハルマの手に妖力が集まっていく。俺を殺す気だ。


 ⋯⋯だけど。


 俺は、恐怖よりも使命感に似た、ギュッと心臓が縮むような、よく分からない感情を感じていた。


 なんで、殺そうとしてるハルマが、泣きそうな顔してるんだよ。

 悲しいのはこっちだ。


 このままじゃ死ねない。


 ハルマを、このままにできない⋯⋯!


(ペネト)⋯⋯」

模倣(コピー)!」


 俺がハルマの腕をつかむと、ハルマは驚いたように手を引いた。


 けど、逃さないっ!


貫通(ペネトレーション)!」


 俺はハルマの腕を引っぱると、しゃがんで、抵抗するハルマの足元に大穴をあける。


 足場を失ったハルマを、ブンッとフルスイングして右後ろに放り投げると、俺はすぐに走り出した。


 地面に刺さったままだったディルの刃物をぬき、一直線に向かってくるハルマを狙う。


「やっと()る気になったか、コア!」


 刃物は当たらず、ハルマから少しズレた方向にとんでいく。


 それを見たハルマは、嬉しそうに声を上ずらせ、タンッと地面をける。


 ⋯⋯なるほど、一歩で間合いをつめてくるんだな。


 でもそれが、弱点になったりもする。


貫通(ペネトレーション)!」


 俺は、足元の地面をゴッソリ消すと、魔力で足場を作って後ろにとびのいた。


「なっ⋯⋯!?」


 一歩で間合いをつめる。


 つまりそれは、方向転換ができないってことだ。


 着地点を失ったハルマは、大穴に吸いこまれるように落ちていく。


 ⋯⋯そういや俺、ハルマの動きが見えてたな。


 どんなふうに動いてるか、それを観察する余裕もあった。


 なんでこんな急に⋯⋯っ!


『コアは一人じゃないよ』

「っ!?」


 バッと横を向くと、俺よりも少し背の高い、金髪の女の子が立っていた。


 立派な双翼、雪みたいな真っ白い肌。


 彼女は、水色の澄んだ瞳を優しく細めて、俺を見ていた。


『私の力も使って。大切なモノはもう、全部全力で守らないとダメだよ。気をぬけば、一瞬でこぼれていくから』

「ノア⋯⋯」


 無意識に、名前をつぶやく。


 ノアは一瞬、寂しげな表情を見せると、徐々に体が透けて、消えた。


「待っ⋯⋯!」


 俺が伸ばした手は、むなしく宙をつかんだ。


 ⋯⋯大切なモノは全部全力で守る、か。


 できるのか?

 俺、ハルマを失わないように、なんて⋯⋯。


 あーくそっ! 弱気になってどうする!

 元からそのつもりだろ!


 俺が頬をたたいて気合いを入れなおしたとき、穴から何かがとび出してきて、反対側に着地した。


「やってくれるな⋯⋯。俺が生粋の人間だったら死んでたかもしれないが、ヌルいな。俺は物理攻撃じゃ殺せない」

「そんなこと知ってる。本番は、ここからだ」


  俺が大きく踏みこんで穴の上に弧を描くと、ハルマは警戒するように低く構えた。


「おいおい弱気だなぁ! さっきまでの勢いはどうしたんだよ!?」

「っそうこないとな⋯⋯!」


 魔力の足場からの三角とびで、一気にハルマの背後に回る。


 ⋯⋯すごい。羽根でも生えたみたいに、体が軽い⋯⋯!


 動きの違いに戸惑いを見せたハルマが、体をひねって足をつき出してくる。


 それを魔力の壁で防ぎ、ガッと足首をつかむ。


「ぃ⋯⋯ッ!」


 ハルマの左手足を魔力で切り落とし、一歩とんで距離をとる。


 バランスを崩したハルマは、地面にベチャッと倒れたものの、すぐに再生して立ち上がった。


 ⋯⋯本当に、魔力の攻撃もきかないのか。

 いや、致命傷だったらきくんじゃないか?


「やる気になったはいいが⋯⋯なめてんのか?」


 ゾッと背筋に悪寒が走る。


 俺をにらみつけるハルマの目はギラギラと光っていて、怒りむき出しだ。


 ヤバい⋯⋯怒らせた? なんで?


「物理攻撃も魔力も妖力も、きかないって言ってんだろ! なのに、チマチマチマチマ⋯⋯爆弾の時間だって、あと二十分だぞ! さっさと殺せ!」


 あと二十分!?


 マズい⋯⋯!

 それまでになんとかして、ハルマを拘束できたらいいんだけど⋯⋯。

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