表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
50/78

7話

 一拍の間が、一瞬で空間を支配する。


 同時に地面をけった三人。


 ディルが最小限の動きでハルマの首を狙い、ハルマはいなすように、軽くディルの腕に触れる。


 驚いたように目を見開いたディルが、真上に高くとぶ。

 ディルの背後から距離をつめたエルが、ハルマの腕をつかんで足を払い、ダンッと地面におし倒した。


「LEVEL5、分解(ディサセンブル)!」

「っ!」


 パッと一面が、金色の光に染められる。


 腕で目をかばった俺は、光がおさまった後の光景に息をのんだ。


「うっ⋯⋯!」

「エル!」

「きたらダメだ! コア!」


 走り出しかけた足元に、小さな刃物が刺さり、反射的に足を止める。


 顔を上げたときには、ディルがエルを抱えていた。


 エルは何があったのか、右肩が丸くくりぬかれたみたいにえぐられていて、今も大量の血が地面に落ちて広がっている。


 ディルは、メスの傷だけじゃラチがあかないと思ったのか、エルの首筋にかみついた。

 目に見えて血が止まっていき、エルがうっすらと目を開ける。


「⋯⋯ふふ。あっはははははははは!」


 狂気じみた笑い声にハッと目を向けると、ユラリと立ち上がったハルマが、絶望したような、歓喜するような表情でエルとディルを見ていた。


「⋯⋯能力って、こうやって使うんだな。これで、俺を殺せるヤツがいなくなってしまったわけだ」


 ⋯⋯いや、見ていない。何も見ていない。


 ただウツロに、壊れたように視線をさまよわせてる。


「ごめん。妖力をぬこうとしたんだけど⋯⋯」

「ハルマの許容範囲になったってことか。元々私たちよりもスピードが速いのに、それに加えてガンマの能力。厄介なことになったねー」


 ヨロけながらも、エルは一人で立ち、服の裾をちぎって体に巻き、腕を固定する。


貫通(ペネトレーション)。ガンマのときも厄介だとは思ってたけど、妖の体も、こうも簡単に吹きとばすなんてね。そこは、半妖だからってことなんだろうけど」

「何か対策を考え⋯⋯ッ!?」

「ディル! くっ⋯⋯!」


 ハルマが体をかたむけたと思うと、次の瞬間にはディルが消えてて、建物から土煙が上がっていた。


 速い⋯⋯!


 エルはハルマの手を間一髪でよけると、足を払おうと身を沈める。


貫通(ペネトレーション)

「な⋯⋯っ!?」


 エルの足がハルマに触れた瞬間、そこだけ切りとったみたいに消える。


 右手足を失ったエルは、バランスを崩して地面に倒れ、一拍遅れて、切断されたひざから血があふれ出す。


 たまらず猫の姿に戻ったエルを、間髪入れずにハルマがつかみ上げる。


「おいコア。俺の能力は貫通(ペネトレーション)。名前のとおり、触れてるモノは例外なく貫通できる能力だ」


 俺に話しかけて⋯⋯!?


 もう誰も殺せないとか言って、俺に殺してもらいたいのはかわってないのか⋯⋯!


 ハルマは俺に見せつけるように、エルの喉元に手を当てる。


「まずはこっちにこい。俺と戦え。俺を殺せ。拒むなら、エルの顔を消す」


 顔を、消す⋯⋯!?


 そんなの、いくら妖だっていっても、エルが死んじゃうだろ!


 助けに行きたい。死んでほしくない。


 でも⋯⋯。


 無意識に上がっていたかかとを、ムリヤリ地面につける。


 エルとディルは、こんなボロボロになるまで戦ってくれた。


 それは、俺にハルマを殺させないためだ。


 なのに今、ここでハルマの誘いにのったら、体をはってくれた意味がなくなる。


 でも、今行かないとエルが死ぬ。

 次はディルをつれてくるかもしれない。


 ハルマを殺したくない。

 エルもディルも死んでほしくない。


 どっちも大切な存在だ。失いたくない。


 くそっ⋯⋯! どうしたら⋯⋯!


「コ、ア⋯⋯。きちゃ、ダメだよ⋯⋯!」

「うるさい。お前の意見は聞いてない」

「ガ⋯⋯ッ!」

「エル!」


 ハルマが容赦なくエルの首をしめる。


 苦しげに顔をゆがませたエルに、俺はもうガマンできなかった。


「分かった! 戦うから⋯⋯! だから、エルを離せ、ハルマ!」

「やっとか。コアは強情だな。殺すって言ってもらいたいが⋯⋯まぁ殺さないと爆弾を止められないからいいか」


 満足そうに口角を上げたハルマは、さっきディルを吹っとばしたほうにエルをぶん投げる。


「エル!」

「あんなんじゃ死なない。ま、エルもディルも、もう邪魔はできないがな」


 死なない程度に傷つけたってことか。


 変なところで冷静なんだな。


「さあ⋯⋯」


 ハルマがダラリと、体の前に腕をたらす。


 ゾッと全身の毛が逆立ち、俺は反射的に姿勢を低くした。


「始めよう」


 ハルマがユラリと体を前に倒す。


 くる⋯⋯!


「ぐぁ⋯⋯ッ!」


 腹をけられたと思うとほぼ同時に、背中にたたきつけられる衝撃が走る。 


 気づけば俺は、灰色のガレキに囲まれていて、ハルマに攻撃されたことを自覚するのに少し時間がかかった。


 何が起こったんだ⋯⋯?


 動き出しは見えた。腹にけりがくることも読めた。


 ハルマが速いのは知ってたし、体勢が崩れてたわけでもない。


 なのに、目で追えなかった。


 毎朝迎えにきてくれるから、少し離れたと思ってたのに⋯⋯妖力が使えるようになってから、さらに速くなってる?


 マズいな、これじゃあ本当に俺が殺される⋯⋯!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ