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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
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6話

『討伐依頼 報酬三百万

 半妖のハルマティアの討伐

 妖力等で弱らせた後、魔力と妖力を混ぜた攻撃での討伐を推奨』


 器用にも、赤い字で走り書きされた文章を、俺は何度も往復する。


 夢、だよな⋯⋯?


 内容がショックすぎて、破額の報酬なんか気にもとまらない。


 魔力と妖力を混ぜた攻撃って、つまりトドメを刺すのは俺ってことだ。

 そもそも混ぜるなんて、やったことない。


 やりたくない⋯⋯!


 何が悲しくて、ハルマを殺さないといけないんだ。


 いくら金を積まれたって、ハルマの存在はそんなモノじゃ足りない。


 もう嫌なんだよ。俺のそばから大切な人がいなくなるのは⋯⋯!


 そう思って、俺はハッと息を吸った。


 たい、せつ⋯⋯。


 そうか⋯⋯。ハルマは俺にとって、いつの間に大切な存在になってたんだな。


『コア、逃げてッ!』

「っ!」


 切羽つまった澄んだ声とともに、ノイズだらけの映像が頭の中に流れこんできた。


 ⋯⋯ノア、か?


 全体的に白く濁ってる⋯⋯煙? 霧?


 視界は激しく揺れていて、ノアに手を引かれて走ってるところみたいだ。


『待⋯⋯てー』

『コ⋯⋯から。はや⋯⋯に⋯⋯!』


 背後からの足音に焦ったノアが、俺をドンッとつきとばす。


 一瞬だけ振り返ると、ノアは何かをむかえうつように戦闘体勢で、すぐに俺は反対方向に駆け出した。


「ノア⋯⋯」


 切なく震えた声にディルを見ると、彼は袖で目元を拭う。


 気持ちを落ちつかせるように深呼吸をして、ハルマのほうを向いた。


「私はノアの意志を尊重したいから、コアを守る。大切な存在が失くなる痛さも分かるから、コアにハルマは殺させない」

「ディル⋯⋯!」


 ディルが俺を見て、優しくほほえむ。


 ハルマは軽く首をかたむけると、予想通りとでもいうようにヒラヒラと片手を振った。


「そうなるのは分かってた。何もなければ、お前らは殺しにきてくれないってな。だから⋯⋯こんなのはどうだ?」

「っ起爆スイッチ⋯⋯!?」

「おしいな。爆弾を止めるほうだ。俺は少し前、全国に爆弾を設置してきた。一つで何万人もの死者を出せる爆弾だ。止めるにはこのスイッチをおすしかなくて⋯⋯そうだな、あと一時間後には爆発する。で、これを⋯⋯」


 手に収まるくらいの四角い機器を、ハルマはヒョイッと口の中に放りこむ。


 は⋯⋯? 食べた⋯⋯!?


 ゴクンと喉を上下させると、気道に何かつまったときのように、ゲホゲホとむせた。


「おい何やって⋯⋯!?」

「ゲホッ⋯⋯! ⋯⋯少し、プログラムをいじった。これで、俺を殺す以外に、爆弾は止められない」


 まさか、スイッチを体にとりこんだ⋯⋯!?


「⋯⋯ガンマの能力は貫通(ペネトレーション)だったはずだよ。いくら妖の体質が受けつがれてるからって、食らって合体することなんて⋯⋯」

「エル、ハルマは半妖だ。妖力と魔力のバランスも悪いし、不純妖ほどじゃないとはいえ、不完全な状態なんだよ」

「っ! なるほどねぇ⋯⋯。それは厄介だ」


 ? なんで今、不純妖が出てくるんだ?


「どういうことだ? 俺にも分かるように言ってくれよ」

「不純妖は知ってるよね? 不純妖は常に不安定な存在だから、命をつなぎとめるために、有効だと思ったモノをとりこむことがあるんだよ。まぁ、すごいまれなケースだけど⋯⋯ハルマは半妖だから、そういうことができてもおかしくない」

「なんでも?」

「うん。必要だと思えばね」


 なんでも体にとりこめるって、そんなのアリかよ⋯⋯!


 ハルマは生きのびるためじゃなくて、その全く逆だけど、自分の願いを叶えるために、必要だと思ったから、スイッチをとりこめたってことだよな。


 そこまでして殺してほしいだなんて、こんなの正気の沙汰じゃないだろ!


「選べ、コア」


 ハルマの声には、感情が感じられない。


 俺らの注目が集まったのを確認してから、ハルマは口を開いた。


「俺一人の命か――何十万の命か」

「っ!」


 選べ、ない⋯⋯っ!


 重すぎる選択に、呼吸が荒くなる。

 指先が、氷水につっこんだみたいに冷たくなる。


 客観的に見れば、後者を選ぶべきなのは明白だ。


 その何十万人の人たちは、誰かの大切な人で、誰かを大切に想ってる人。


 俺がハルマを殺さなければ、その人たちは死ぬ。

 誰かが大切な人を失う。


 もし俺がそっちの立場だったら、あまりに理不尽だって絶望するし、一人を選んだヤツを呪う。


 分かってる。頭では理解できてる。


 でも、でも⋯⋯!


「俺には、できない⋯⋯」


 ほぼ息だけの、かすれた声だったけど、物音一つしない路地裏には、よく響く。


 言葉にすると、ハルマを殺すなんて、想像すらも怖くなった。


 そうだ。俺にはできない。やりたくない⋯⋯!


「だよね。コアにはやらせないよ」

「ん。ハルマも、殺さない」


 スッと立ち上がったエルとディルは、俺を安心させるように笑う。


 数歩歩いてハルマと対峙すると、軽く身構えた。


「お前らじゃ俺を殺せない。⋯⋯いや、逆に俺が殺してしまうかもな。そうすれば、コアもやる気になるか?」

「何言ってるの。僕たちはハルマを殺さないし、コアにも殺させない。もちろん、僕たちが死ぬつもりもないよ」

「うん。戦闘不能にする。いくらガンマの子とはいえ、自然育ちの私らには勝てないでしょ」

「それはどうだろうな」


 一拍の間が、一瞬で空間を支配する。

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