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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
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2話

「あーもー⋯⋯! エル、分解(ディサセンブル)


 ディルが、固まっている俺から顔をそらし、焦ったようにエルに声をかける。


「分かってる。LEVEL4、分解(ディサセンブル)


 エルがハルマに触れると、ハルマは力がぬけたように、ガクッと膝をつく。


 ほぼ同時に、開け放たれたままだった扉から、母さんがヒョッコリと顔を出した。


「コア、結界をぬけて妖が入ってきたみたいだから、一応気をつけておいてね。⋯⋯あら、ハルマティア君じゃない。エル、ディル、ダメよコアのお友達にヒドイことしたら」

「母さん! 友達なんかじゃないから!」

「そう? でも、毎朝迎えにきてくれるじゃない」

「そうだけど⋯⋯とにかく違うから!」


 やっと喉を通った言葉に、母さんは楽しそうに笑いながら戻っていく。


 よかった⋯⋯! バレてない⋯⋯!


 なんか少し遊ばれたような気がするけど、まぁ一旦ごまかせた。


 俺がホッと胸をなでおろしつつ、ハルマのほうを見ると、回復したらしいハルマが俺をじっと見つめていた。


「これ、受けるのか?」

「ああ、もちろんだ」

「俺も行く」


 だよな、やっぱりダメだって⋯⋯ん? 俺も行く?


 耳にとびこんできた言葉が信じられず、思わず目を見開く。


 一緒に任務を受けるってこと、だよな?


 でも、俺は正式に依頼を受けるって形で学校を休めるけど、ハルマはどうするんだ?


 そもそも、ハルマは妖退治の依頼を受けたことがあるのか?

 アドニスたちはないって言ってたけど、ハルマはあの熊妖を倒したくらいだし、意外と慣れてたり?


 ってか、なんでついてくるんだ? そのメリットは?


「勝手言わないでよ。さっきの妖力は何? コレには僕も行く。僕は得体の知れないヤツと任務を受けたくない」

「ガンマとの関係は? ハルマの能力は? さっきまで何も感じなかったのに、急に妖力を出すなんておかしい。一体何者?」


 エルとディルがハルマにつめより、質問を投げる。


 そうだ。まずハルマが妖力を持ってる時点でおかしいし、七柱候補のなんて、何か関係があるとしか思えない。


 俺のそばに、エルとディルがいるせいで感覚が麻痺してるけど、基本妖と関係を持つなんて、タブーだ。かくまうなんて、論外。


 妖は討伐対象。それ以上でも以下でもない。


 妖力を持っている者も、同様だ。


「俺、は⋯⋯」


 依頼書に視線を落としたハルマの声は、かすれている。


 一言も逃さないようにと、気をはる俺らとの間に、朝の山の冷たい風が流れる。


 ⋯⋯しゃべらない、な。


「抵抗するな」

「「コアッ!」」

「っ!?」


 しまった、油断した⋯⋯!


 パッとまばたきの間に、殺風景な部屋から、枯れた木々へと視界が移りかわる。


 ほぼ線になって形を成さない景色が、一瞬で次々と後ろへ流れる。


 くそっ、手足が動かない⋯⋯!


 いつの間にしばって⋯⋯って、どこから縄なんか持ってきたんだ!?


 ほどけないし、慣れてるな。痛くない。


 ってか、ハルマのヤツ、今どこに向かってるんだろうな。


 七柱候補だった妖と関係あるっぽいし、七柱のアジトとか?


 だったらマズい⋯⋯!


 エルとディルが追いかけてきてる気配はあるけど、ハルマのほうが速いみたいで、少しずつ離れてる気がする。


 人型どころか七柱なんて、俺一人じゃ絶対にムリだって⋯⋯!


 フッと胃が浮くような感覚とともに、地面が一瞬で目前にせまる。


 スピードのわりに、トッと軽く着地したハルマは、俺を地面に転がすと、縄をほどいた。


「いってぇ⋯⋯。おい、なんか言うことあるだろ」

「目的地についたぞ」

「違う。⋯⋯って、は? まさかここ、依頼の⋯⋯」


 涼しげな顔で、周囲の警戒を始めるハルマ。


 俺は、ハルマがしまおうとしている依頼書の地図を見て、ポカンと口を開けた。


 たしかに山から依頼のところまで、直線コースでつなぐと、今きた方角だけど⋯⋯。


 本当に? 本当にそれだけ?


「⋯⋯悪かった。エルとアイツには勝てないって思って、話すと長くなるし、でも任務にはついていきたくて。コアを連行すれば、いつもエルはついてくるから、いいかって⋯⋯」

「よくない。よくないし、なんだよ、俺が弱いって言いたいのか?」

「俺よりは」


 グッ⋯⋯ハッキリ言うな⋯⋯。


 でもまぁ、反応できなかったのは事実だしな。


 殺しにかかってきてたら死んで⋯⋯。


「コア! 大丈夫!?」


 ヒュッと、脇を何かが通っていったと思うと、ハルマが顔をかばうように腕を上げていて、その両腕には、一本ずつ細い切り傷が走っていた。


 ハルマの前にはディルが構えていて、俺はエルに抱えられて、五メートルくらい離れていた。


 ディルもエルも、戦闘服に猫の仮面の姿だ。

 エルは、俺に猫の仮面をつけさせる。


「っ待てって! ハルマはただ、任務についてきたかっただけで⋯⋯!」

「コア、ハルマはガンマの妖力を持ってるんだよ? もしかしたら、七柱の内通者かもしれないんだから」

「そん、な⋯⋯」

「コアが他の人をかばうようになったのはいいことだけど、疑うことも大切⋯⋯」


 エルがパッと顔を上げ、近代的な一軒家が並ぶ道を見つめる。


「⋯⋯やりすぎちゃったなぁ。ディル! ハルマ回収して! 一旦引こう!」

「了解」


 人の気配⋯⋯今ので、ここの住民が様子を見にきたのか。


 車も人も通るのが少ないとはいえ、住宅街だからな。平日でも、一人や二人は家にいるわけだ。


 エルは回れ右をして、近くの路地裏に駆け出す。


「なぁエル。俺、一人でも走れるんだけど⋯⋯」

「僕についてこれないでしょ。もうちょっとしたらおろすから⋯⋯っ!?」


 エルが急ブレーキをかけ、俺は吹っとびそうになったのを、エルにしがみついてこらえる。


 なんだ? 障害物か?


「グルルル⋯⋯」


 地をはうような低いうなり声に、バッと視線を向ける。


 夜だったらまぎれてしまえそうな、漆黒の毛。

 鮮血をそのまま固めたみたいな、真っ赤な瞳。

 馬ほどの大きさもある狼の口には人間がくわえられていて、鋭い牙が食いこんでいた。


 アレはもう、手遅れか⋯⋯!

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