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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 六章
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1話

 俺――コアは、手の中にある一枚の紙を読み、ニッと口の端を持ち上げた。


『人食い狼が出ます。退治をお願いできませんでしょうか』


 ようやく退治系の依頼がきた⋯⋯!


 最後の依頼が去年の夏くらいの頃だから、半年なんてもんじゃない。ほぼ一年ぶりだ。


 俺が学校に通い始めてから、ハルマの強制連行もあって、毎日のように学校に行っている。


 母さんはそんな俺に気を使ってか、依頼の持ちこみはパッタリなかった。


 そんなの、気にしなくていいのにな。


 学校は最初は嫌々だったけど、今はそんなに苦じゃない。

 特に実践の授業なんかは、俺のレベルに合ってて、ちょうどいい訓練になる。


 だけど、面倒なものは面倒だ。


 依頼がこれば、休む理由にもなるし、報酬だって手に入る。


 これを受けない手はないだろ!


「エル⋯⋯とディル。これを受けようと思うんだけど、いいよな?」

「あー⋯⋯いいんじゃない?」

「うん。コアがいいなら」


 ピコピコピコ、バン!


 エルは上の空な返事、ディルはテレビから顔をそらして、ニッコリと笑いかけてくれた。


 右に『LOSER』、左に『WINNER』の文字を映し出したテレビ画面。ちなみに、右はエル、左がディルだ。


 コイツら最近、コレばっかやってるな⋯⋯。


「また負けたぁ!」

「エルは七柱最下位だからねー。まずステータスが違うんだよ」

「う⋯⋯もう一回! 次は勝つ!」

「分かった。受けて立つよ」


 ピコピコピコ⋯⋯。


 再び高速でコントローラーをたたき出した二人を眺め、俺は大きくため息をつく。


「あのなぁ。お前ら、ちゃんと寝てるか? 学校行くギリギリまでやって、帰ってきてからも、ご飯食うとき以外ずっとやってるだろ。風呂も入ってないんじゃないか? ちょっとは離れろよ」


 俺が背中に声をかけても、あーとかうーとか、テキトーな返事が返ってくるだけ。

 もうすっかり集中モードだ。


 コイツら⋯⋯!


 主である俺をムシか! 居候(いそうろう)共め!


 俺が舌打ちし、口を開きかけたときだった。


「コア。学校行くぞ」


 バンッと扉をけ破る勢いで開け放ったのは、ハルマだ。


 相変わらず⋯⋯というか、もう俺が毎回行く気がないから、毎日のように迎えにきている。


 本っ当に、ハルマもよくあきないよなぁ。


 いくらハルマが速いからって、学校からじゃ三時間以上はかかる。


 そうまでして、俺をつれていきたい理由は分からないけど、抵抗もむなしく、毎回必ず連行される。


 でも俺は今日、任務に行く。


 つまり、面倒なヤツがきてしまったわけで。


 ハルマはまばたきの間にゼロ距離につめてくると、俺の襟首をつかんだ。


「まっ待て! 俺は今日は学校には行かない!」

「サボる気か? ダメだ」

「違うって⋯⋯! 真っ当な依頼だ。ほら!」


 俺がヒラヒラと依頼書を振ると、ハルマは止まって、パッと俺の手から奪い上げた。


「⋯⋯本当だ」

「なんだそれ。俺がウソ言ってると思ったのか?」

「ああ。本当に討伐依頼なんて受けてるんだな」


 あっさり肯定しやがった⋯⋯!?


 なんてヤツだ。

 俺はそんなこと、したことないだろ!


 俺がハルマの手を払ってにらみつけると、ハルマは何かを考えるように、じっと依頼書を見つめていた。


 何見てるんだ⋯⋯って、仮面つけてるせいで分からない⋯⋯!


 せっかく背後に回ったのに、なんの収穫もナシか。

 それじゃ面白くないよな⋯⋯。


 ⋯⋯そうだ、いつもやられっぱなしなんだから、たまには仕返ししてやろう!


 俺は魔力を猫じゃらしの形にすると、ハルマの首に当て、スゥーッと背中を滑らせる。


「ひぁ⋯⋯っ!?」


 ⋯⋯ひぁ?


 今の、誰から出た声だ?


 エルかディルか⋯⋯いや、ゲームに夢中だな。声を出すどころじゃなさそうだ。


 ってことは、ハルマ⋯⋯?


 口数の少ないハルマにしては、まあずいぶんと、かわいらしい声⋯⋯。


 ゾクッ。


「っ!」


 強大な敵を前にしたような危険を感じ、俺はバッととびのく。


 ヤバい、怒らせたか⋯⋯?


 ただならぬ気配に、エルもディルも床に手をついて、ハルマを威嚇してる。


「⋯⋯これ、ガンマの妖力じゃない? 放ってるのは、アイツ?」

「ハルマだよ」

「ハルマ?」


 ディルが不思議そうに首をかしげ、エルはパッパッと手を払って立ち上がる。


「ガンマって誰?」

「七柱の儀式のとき、序列三位だった妖だよ。血の気が多いヤツで、アルファに挑んで負けたんだ。もういないはずだけど⋯⋯」


 言われてみれば、妖の、しかも七柱クラスの気配がするかも⋯⋯?


 でもそれって、妖力ってことだろ?


 ハルマは普通に能力を使ってるし、人間なんだから、持ってるのは魔力のはずだ。


 俺はノアっていう妖と契約してるっぽいから、妖力も持ってるけど⋯⋯もしかしてハルマも?


 たしかにハルマは、初対面で俺とエルの正体を見破ったしな。


 それは、俺と同類だからってことなのか?


「ねぇ、こんなあからさまに妖力たれ流しって、どうなの。怒らせたなら、はやく謝って落ちつかせたほうがいいんじゃない?」


 ディルが振り向いて言うと、エルはハルマに視線を固定させたままうなずいた。


 言われて感覚を澄ますと、ピリピリと肌を刺すような緊張感が、探るみたいにただよってる。妖が侵入したときの、合図みたいなものだ。


 たしかにそうだよな。俺のせいだもんな。


 この山の頂上に俺の家、中腹や麓にだって、妖倒士の家が、少なからず建ってる。


 俺の家には母さんしかいないけど、すぐに異変を感じて、俺の部屋にもくるだろう。

 他のヤツらも、同様。


 そうすれば、ハルマが妖力を放ってることは誰だって分かる。

 なんでこうなってるかは分からないけど、とにかくバレたらダメだ。俺らも危ない。


 でも、謝るって、どうやって?


 そもそもなんで俺、ハルマにイタズラしようなんて思ったんだ?


 イタズラなんてしたことないし、謝ることだって、今まで少なかった。


 しかも⋯⋯なんだ、これ。


 ムキになってるような、意地をはってるような。

 呼びかけさえ、喉に引っかかって出てこない。


 なんなんだよ⋯⋯っ!


 面と向かって謝ることが、こんなにも難しいことだったなんて⋯⋯!

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