8話
「⋯⋯で? なんでお前がいるんだ?」
「だから、私はアルファみたいに強くないから、反妖だと消されるんだよ。ラムダもいるんだし、いいでしょ?」
「よくないよ。あと、ラムダじゃないから。エルだから」
テレビの前で行儀よく正座しながら、コントローラーをたたく、二人の背中。
⋯⋯えー。端的に言おう。
同居人が増えた。
俺は昨日、エルに抱えられたまま寝て、起きたのが今さっき。
なんか騒がしいなって思って、身を起こしてみれば、部屋着姿のデルタが、エルと一緒にゲームをしていた。
「一晩でいろいろ進めたんだよ。明日には、ここの書庫管理人になる予定」
「いや、なんで?」
「だから⋯⋯」
「そうじゃなくて! まぁそうじゃなくもないんだけど、結界は? デルタ、入ってこれないだろ」
「あー、そんなことか」
そんなことってなんだ。めっちゃ大事だろ。
デルタはコントローラーを置いて体をこっちに向けると、ニヤリと口角を上げた。
「昨日食らったコアの魔力、私の体に投与した。使えはしないけど、擬態くらいならできるよ」
「えぇ⋯⋯」
アルファもデルタも、自力で入ってこれるなら、もう結界の意味なんてなくないか?
絶対安全な場所のはずなのに、七柱がホイホイ入ってこられてたまるかよ。
俺は半眼になって、デルタを見下ろす。
「あ、そうだ。私もデルタじゃなくて、エルみたいな名前がほしいなー。エルはどうやって決めたの?」
「僕たちの名前はギリシャ語でしょ。だから、ただアルファベットの読みに戻しただけ」
「ふーん。それだけなのに、コアはエルが七柱って分からなかったんだ?」
「うん。コアは七柱すら知らなかったからねぇ」
エルがあきれたように言い、デルタは目を見開いた。
⋯⋯なんで俺が火の粉被ってるんだ? デルタの名前の話だよな?
「じゃあ私は、ディー、かな。んー⋯⋯なんかしっくりこない⋯⋯」
「なら、ディル、なんてどうだ? エルから一文字とってさ」
「え、僕?」
エルが驚いてる俺のほうを向くけど、もうヤケクソだ。
どうせなら、おそろいにしてやる!
「エルから一文字とって⋯⋯うん! めっちゃいい! ねーコア、一回呼んでみて」
「え? ちょっ⋯⋯!」
「いいぞ。ディル」
エルが立ち上がりかけたのと、俺がディルを呼んだのは、ほぼ同時だった。
魔力が流れていく感覚がしたと思うと、パッと部屋中が白く光る。
反射的に腕で目をかばい、光が収まってから下ろすと、エルが頭を抱えていた。
え⋯⋯? 俺なんかした⋯⋯?
「こんなことになるなら、教えておけばよかった⋯⋯。コア、服従の意思がある妖を、本来の名前以外で呼ぶと、使い魔にできちゃうんだよ」
「は?」
「ふふふ。今日から私も、コアの使い魔だ」
「はあ!?」
エルはハァ、と重いため息をつき、ディルはすごく満足そうにニコニコ笑ってる。
使い魔⋯⋯ってことは、ディルをもうここから追い出せなくなったってことか。
名前呼ぶだけで使い魔になるとか、システム弱すぎだろ。
⋯⋯まったく、なんでこうなった。
こうして、俺の家には七柱の妖が二人も、しかも使い魔として住みつくことになったのだった。




