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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 五章
39/78

4話

 どこかフワフワした声に視線を向けると、向かいの屋根に、二人の人影が立っていた。


 逆光でよく見えない⋯⋯。アレは、鳥の羽根?


 けど、エルは黒いシルエットに覚えがあるようで、威嚇するように鋭くにらみつけた。


「デルタ、なんの用?」

「変わったね、ラムダ。昔はそんな目しなかったよ」


 デルタ⋯⋯まさか七柱!?


 今日アドニスに教えてもらったばかりだから、覚えてる。


 七柱は、ギリシャ語のアルファベットの名前をつけられるんだそうだ。

 もちろん、アルファのαがトップ。

 デルタってたしか⋯⋯Δ。ってことは、エルやゼータより強い!?


 あーもう! なんでこんなに七柱と遭遇するんだ!


 エルを除いて、もう三人目だぞ!?


「⋯⋯あれ、ノアじゃ、ない?」

「? ああ。俺はコアだ」


 ノアって、俺がときどき思い出す、妖のことか。


 今じゃ思い出したときの記憶も曖昧だけど、少なくとも髪は長かったし、羽根もあったはずだ。


 とても俺と見間違えるとは思えないけど⋯⋯?


「デルタは目が見えないんだ。でもそのかわり、妖力や魔力を探知する能力に長けてる。菌というか粒子というか、そういうモノを操って攻撃してくるスタイルだから、気をつけて」

「傷口から入れるとか、空気で感染させるってことか?」

「まぁ、そういうことだね」


 遠距離も中距離もってことか。

 さすがは七柱上位。面倒な能力してるな。


 デルタがユラリと体を揺らし、俺とエルは身を低くして構えた。


 デルタの隣の人影が、弓を構える姿勢をとる。


 ⋯⋯くる!


 パッと矢が手から離れたのを見て、俺とエルは左右にとんでよける。


「やっぱりコイツじゃダメかぁ。使えないよね、人間って」


 ⋯⋯人間?


 デルタは、邪魔なものをどかすように足で払うと、隣の人影はあっけなく地面へと落下する。


「っ!」

「コア! 罠かもしれないよ!」


 考えるよりも先に、体が動いていた。


 頭から落ちてるから、地面につけば、まず助からない。


 見殺しになんて、できるかよ⋯⋯!


 俺は少しだけ余裕をもって下につき、全身で受け止め、身体を沈ませて衝撃を逃がす。


 とりあえず地面に寝かそうと、その人をあお向けにしたときだった。


「アルト⋯⋯!?」


 緑がかった黒髪。俺より背の高い体。

 意思の強い瞳は閉じられていて、眠っているようだ。


 そのアルトが、俺に矢の先を向けてる。


 もう目と鼻の先だ。よけられない⋯⋯!


 ドッ!


「っ! ⋯⋯?」


 何かに矢が刺さる、重い音。


 衝撃がこないことを不思議に思って、目を開ける。


「ぅ⋯⋯っ」

「エルっ!?」


 俺とアルトの間にねじ入ったエルが、苦しそうに倒れてる。


 俺はとりあえず心の中で謝ってから、アルトを縄で近くの電柱にしばりつけ、すぐにエルを抱き起こした。


「エル、エル! 大丈夫か!? ごめん、俺のせいで、また⋯⋯っ!」


 俺がうかつに動いたから、またエルが⋯⋯!


 泣きそうに声を震わせた俺に、エルはムリして笑った。


「気に、しないで。それより、さ、この矢ぬいて、止血、してくれない⋯⋯?」

「っ分かった⋯⋯!」


 俺は言われた通りに肩の矢をぬき、首に巻いていたマフラーをキツくしめる。


 黒色のマフラーでも分かる血のにじみ様に、俺は顔をゆがめた。


「そんな顔しない。ほら、前のラムダのときのほうが傷が大きかったし、大丈夫⋯⋯」

「いつまでそう言ってられるかな」


 大また何歩かの距離に、デルタがフワリと着地する。


 バッと身を起こしたエルが、俺をかばうように間に入った。


「だから、それが甘いって言ってるの。なんで分からないかなー。私は前のラムダが好きなのに」


 デルタが軽くはねるように一歩進むと、エルが腰のポーチに手を回した。


「ムダムダー。誰に向かって投げようとしてるの? アルファのソレなんか、とっくに対策済みだよ」


 ソレって、この前ゼータに投げてた、妖を弱らせるヤツ?


 アレがあったから、ゼータに勝てたようなものなのに⋯⋯効かない?


 俺はもちろん、エルでも歯が立たないなら、勝ち目なんてないんじゃ⋯⋯!?


 ポタッポタッ⋯⋯。


 液体がしたたる音に、俺はキョロキョロと辺りを見回す。


 少し重い、粘着質な音。


 聞き慣れたその音の出所(でどころ)を探すけど、見当たらない。


 ってことは、まさか⋯⋯!?

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