表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 五章
37/78

2話

「コアだ。能力は魔力を形にすること。⋯⋯趣味?」


 考えてみると、俺は何をすることが好きなんだ?


 寝て起きてご飯食べて妖退治。


 それのくり返しじゃないか?


 趣味なんて⋯⋯いや、好きなもの?


「⋯⋯好きなものは報酬の高い依頼だ。まぁ俺はあまり学校にくる気はないから、放っておいてくれると助か⋯⋯」

「何言ってる。コアはここにこい」


 俺の言葉をさえぎった低い声は、ハルマだ。


 仮面をつけていても、感じられる視線の圧に、俺は思わず身を引いた。


 ⋯⋯なんだ?


 なんで怒ってる? しかも、学校にこいって何?


 俺がきたってこなくたって、ハルマは困らないだろ。


 そもそも俺は、面倒なことが嫌いだ。学校にくる気は、さらさらない。


「なんでハルマに、そんなこと言われないといけないんだ。お前には関係ないだろ」

「ないな。でも俺は、コアにきてほしい。こないなら、迎えに行く」

「ハァ? こなくていい。そもそも、お前は俺の山までこれないだろ。遠いんだから」

「俺ならすぐだ。コアを抱えても」

「連行する前提の話をするな。いいか、俺は行かないからな」


 なんなんだ、コイツ。


 何言っても返ってくる。

 まるで俺に会いたがってるみた⋯⋯やめよう。さすがにそれはない。


「ハルマがあんなに食い下がるなんて、珍しいね」

「いや、それもだけど、依頼? 迷子探しとかで、そんなに額のいい依頼なんて、あったっけ?」

「も、もしかして、もう妖退治の依頼、受けてたりして⋯⋯」

「えー!? 何それ、ボクも行きたいー!」


 ワチャワチャと、騒がしい空気が教室を満たす。


 てか、ハルマのヤツ、全っ然諦めてくれない⋯⋯!


 行かないって言ってるのに、全く話が通じない。


 なんなのマジで!


 ハルマの身体能力が高いのは知ってる。

 エルと同等あるかないかくらいだろう。


 でもだからって、ワープする魔道具を使わないと、半日はかかるんだぞ!?


 そもそもハルマは、俺の山知らないだろ。


 あれ、もしかして迎えなんてこれないんじゃ?


 ってことは、不毛なやりとりじゃん、これ。


「僕はエル!」


 しびれを切らしたように声をはったエルに、全員の視線が集中する。


 待てよ⋯⋯?

 あの鳥肌が立つようなキレイな笑みは、若干キレてる⋯⋯!?


 叫んだわけでもないのに声が響いたのは、妖力をのせたからか。


 いやでも、さっきエルだって、ハルマとにらみ合ってたじゃん!


 そんなんでキレるなよ!


 エルは俺のおびえた顔を見て、心を落ちつかせるように息を吐いた。


「僕はエル。能力は妖力を吸うことで、魔力も頑張ればイケるよ」


 いや逆だろ。妖なんだから。

 しかも吸うことじゃなくて、操ること、だろ。


 ⋯⋯って、この場では言えないか。


「趣味は妖狩りで、好きなことは妖狩り。これからよろしくねー」


 追加。嫌いなものは猫じゃらし。


 エルはひらひらと片手を振ると、隣りに座ってるセピアに視線を向ける。


 キョトンとした顔でエルを見つめ返したセピアは、ボッと赤くなって、うつむきがちに口を動かした。


「わ、私は、セピア、でひゅ⋯⋯っ。その、能力はなくて、魔力も使えません⋯⋯。趣味は絵を描くことです⋯⋯」


 能力が、ない?

 なのに妖倒士になろうって?


 危険すぎじゃないか?


 驚いてセピアを見つめる俺とエルに、セピアはますます肩を縮めた。


「⋯⋯分かってるんです。でも、私には、この選択肢しかないので⋯⋯」


 うつむいて、前に流れた横髪からのぞく瞳は、強い覚悟で光ってる。


 ⋯⋯意外だな。


 オドオドしてるから、もっと芯がないヤツだと思ってた。


「ハルマティア。能力は⋯⋯超高速」


 ハルマは淡々と言うと、すぐに黙りこんでしまった。


 ⋯⋯なんだ、今の間。


 能力なんてしょっちゅう使うから、悩むこともないだろ。


 それとも何か⋯⋯隠した?


 セピアといいハルマといい、このクラスはみんな、何かしらの事情があるんだな。


 まぁ俺には関係ないことだけど。

 明日からこないつもりだし。


 俺が一人で納得している間に、アドニスは、部屋の隅のほうでたたまれていた長机を、俺らの前に広げた。

 サササッと目にも止まらぬ速さで菓子を並べると、満足そうに自分の椅子を持ってきた。


 デカいな、この机⋯⋯。

 七人が囲んだって、だいぶ余裕があるぞ。


 これを一人で持ってきたアドニスって、意外と力があるのか?


「二時限目は歓迎会だからね。好きなだけ食べていいよ。パーッと楽しんじゃおう!」

「うわ、ボクあれ食べたい! もーらいっ!」

「ちょっ、レイラズルい!」

「私はこれもらうね」

「⋯⋯⋯⋯」


 さっきの不穏な雰囲気なんて、なかったみたいに、それぞれが菓子に手を伸ばしてる。


 外にいたときもそうだったけど、仲直りというか、元通りになるのがはやいな。


「コアは食べないの?」


 エルがクッキーを片手に、不思議そうにのぞきこんでくる。


「腹減ってないし、別にいらな⋯⋯」

「え? プリンあるよ?」


 プリン!?


 サッと机に目を走らせる。


 ⋯⋯本当だ。ちょうど机の真ん中ら辺にある。


 ラスト一個のプリンには、ハルマが手を伸ばしているところだった。


 マズい⋯⋯このままじゃ、今から動いてもハルマのほうがはやい⋯⋯!


 いつもなら、誰かから奪うなんてしないけど、あの熊妖と戦った後だ。炎もモロに食らったしな。


 なんか、どうしても食べたい気分だ⋯⋯!


 俺はローブの中で小さく手を動かし、プリンをおおうように、魔力をドーム状に変形させる。


「っ!?」


 ハルマの手が、プリンに触れる前にはじかれ、困惑したように固まっているスキに、俺はサッとプリンをとった。


「⋯⋯コア」

「悪いな」


 俺は知らぬ顔でフタを開け、付属のスプーンでプリンを食べ始める。


 口をつければこっちのもんだろ。


 半分まで食べ進めたとき、俺の手からプリンが消えた。


「はっ!?」

「甘い」


 バッとハルマのほうを見たときには、もう空のプリンカップが机に置かれていた。

 同じように重なっているのが、二つ、三つ。


「⋯⋯おい、お前そんなに食べたなら、一個くらいくれたっていいだろ!?」

「俺が先だった。それを奪ったんだから、半分食わせてやっただけでも、感謝しろ」

「嫌だ。結果、俺がとったんだから、俺のものだろ」

「ガキかよ。じゃあ、俺に吐き出して返せって?」

「んなこと言ってない!」


 再びギャーギャー言い合う俺らを、他はポカンとして見ている。


 挟まれたセピアは、縮こまりながら菓子を食べ、エルはあきれたように肩をすくめて、机に手を伸ばした。


「⋯⋯プリンごときで、こんなに熱くなるなんてね。二人とも、プリンが好きなんだ」

「ボクも好きだけど、あそこまでじゃないかなぁ」

「私も。でもアレ、見ててちょっと面白いよね」


 同意とでも言うように、アドニスとレイラがうなずいたのを見て、エルは頬を引きつらせた。


(三人はもう見学モードだし、セピアも止められないだろうし⋯⋯このまま二人を言い争わせる気? ハルマは分からないけど、コアは他のスイーツに興味がない分、プリンへの執着がすごいんだよねぇ。だからコレ、止めないと当分終わらないと思うんだけど⋯⋯)


 エルはもう一度、みんなを見回す。


(⋯⋯ダメだ。誰も止める気なんてない)


 さっきから同じような内容で言い争ってるし。


「はいはい、ストップストップ。能力使ってまで、プリンのとり合いしないの」

「でもハルマが⋯⋯!」

「でもじゃない。家にあるから」

「⋯⋯⋯⋯」


 エルの言葉を聞いたコアは、バツが悪そうに他のお菓子に手を伸ばす。


 コアから逃れたハルマは、もうとっくにスイーツタイムだ。


(僕がこれからも、こんなことしないといけないのかな⋯⋯?)


 エルは先を思いやって、ハァと大きくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ