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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 五章
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1話

「欠陥、クラス⋯⋯」


 俺――コアは、アドニスの顔をポカンと見つめる。


 なんだ、それ。


 欠陥って、いい言葉じゃないよな。

 なんでそんなところに、俺とエルが?


 仮にも、七柱の一人であるゼータを倒したんだぞ。データだって、エルがしっかり送ってくれた。


 別に、俺は学校なんて、真面目に通う気ないからいいけど、軽んじられてるみたいで、気に食わないな。


「⋯⋯そんな顔で見ないでよ。僕たちだって、入りたくて、欠陥クラスにいるわけじゃないんだ」


 アドニスは寂しそうに眉を下げ、隣のホワイトボードに、ペンで文字を書き始めた。


「二年生と三年生は、基本こないか、僕たちと被らない時間にいるか、その二択なんだよね。本当に、先生たちも手を焼いてるらしくて、何度も謹慎を食らってる」

「ボクも会ったことなーい!」


 沈んだ空気の中で、唯一明るい声のほうに顔を向けると、アスベルトの向こうに座ったトゥレーラが、ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべていた。


 なんでトゥレーラのヤツ、笑ってるんだ⋯⋯?


 場に浮きすぎて、思わず逆に座っているセピアたちとトゥレーラを二度見する。


 ほら、セピアだって、うつむいて暗い顔してるし、ハルマだって⋯⋯いや、平然としてるな。


 仮面のせいで表情が見えないけど、外で見たときと同じ感じだ。


 トゥレーラは、俺が見ていることに気づくと、一層ニッと口角を上げた。


「僕は欠陥クラスにきて、よかったって思ってるんだぁ。魔力暴走を起こしやすい体質だからさ、みんなが面倒見てくれて、嬉しいの!」


 屈託(くったく)のないその笑みに、アドニスとセピアがパッと顔を上げる。


「レイラ⋯⋯。そうだね。僕も、みんなに会えてよかった」

「わわわ、私もっ」


 ワアー、ナンテアツイセイシュンナンダー。


 うらやましいとか、混ざりたいとか、微塵(みじん)も思わないけど、予想してたよりも絆が強そうだ。


 どういう経緯をたどってきたのかは、知らない。


 けど、欠陥クラスに入ってるくらいだし、それなりの事情があって、それなりの苦労もしてきたんだろう。


 だから余計に、仲間意識が強いのかもしれない。


「⋯⋯アルトちゃん? どうかした?」


 トゥレーラが、アスベルトを心配そうにのぞきこんでる。


 トゥレーラ、心配なんてできたのか⋯⋯。

 他人のものとか勝手に盗んで、気に入らないヤツはソッコー手にかける、ヤバいヤツだと思ってた。


 ⋯⋯って、違う。今はトゥレーラじゃないだろ。


 アスベルトがどうかしたって⋯⋯なんだ? 深刻そうな顔をしてるな?


 これは、何か言えない秘密を、隠してるときの表情だ。

 エルが俺のプリンを勝手に食べたときに似てる。


 もちろん、マイナスのこと。後ろめたいことだ。


 アスベルトはハッとしたように顔を上げると、すぐに作った笑みをはりつけた。


「ごめんごめん! ちょっとボーッとしてた。で、何何? なんの話?」

「⋯⋯本当に大丈夫?」

「うん! なんでもない!」

「ならいいけど。何かあったら、いつでも相談してね」


 アドニスの言葉に、アスベルトはアハハと笑ってごまかした。


 ハルマを除く三人は顔を見合わせ、不穏な沈黙が部屋を漂う。


 あれ、そんなに強い絆でもないかもな。


 セピアとトゥレーラは、純粋な心配が多いんだろうけど、アドニスは違う。


 強い疑いの目だ。


 今の一瞬が疑いにかかるほどの何かが、前にあったのか。

 たったそれだけで疑うなんて、信じきれてない証拠だ。


 まぁ、俺には関係ないことだけど。


 俺は別に、このまま茶番を見ていたっていいけど、エルとハルマはどうだろうな。


「⋯⋯ねぇ」

「⋯⋯なぁ」


 エルとハルマの呼びかけが重なり、二人は一瞬だけ視線をかわす。


「自己紹介しない?」

「自己紹介」


 また被り、エルとハルマがバチバチッと火花を散らす。


 ⋯⋯カンベンしてくれよ。


 なんでみんな、変な空気なんだよ。

 収集がつかなくなるだろ。


 俺が、じとっとあきれの視線を送っていると、エルがしかたなさそうに苦笑いした。


「とりあえず、自己紹介しようよ。自分の名前と能力、趣味とか好きなものとか? まあ、なんでもいいけどね」


 エルがしきり直すように手をたたくと、アドニスがハッとしたように笑顔を作った。


 それを合図に、他も動き出す。


「僕はアドニス。風を操るっていう、ただそれだけの能力だよ。趣味は⋯⋯そうだね、イノシシ狩りかな」


 イノシシ狩り!?

 そんな王子様みたいなナリで!?


 なんかもっとこう⋯⋯上品な感じのことが好きなのかと思った。


 人って、見た目じゃ全然分からないんだな。


 ガタッと勢いよく椅子から立ち上がる音がして、ほぼ反射でそっちを見る。


「ボクはトゥレーラ! お前ら二人も、レイラって呼んでもいいよ。能力は破壊(デストラクション)で、好きなものは気に入ったヤツ、嫌いなものは邪魔だと思うヤツ!」

「レイラ、それはたぶん、誰でも一緒だよ。行動に移さないだけで」

「そお?」


 レイラの返事に、アドニスは慣れたようにため息をつく。


 俺だって、気に入ったヤツは嫌いじゃないし、邪魔なヤツは嫌いだ。


 それを行動に移すかどうか⋯⋯まったくアドニスの言う通りだな。


 さすがに、嫌いだからって、消そうとはしない。

 ましてや、初対面のヤツにいきなりなんて、ぶっとんでるにもほどがあるだろ。


「私はアスベルト。みんなからはアルトって呼ばれてる。能力はね⋯⋯」


 順番周りを察したアルトが話し出し、何かを一瞬手のひらに出現させて、消した。


 弧を描いた木の枝と弦、一本の枝の端にとがった金属と羽。


 アレは⋯⋯弓と矢?


「見ての通り、弓と矢を何もないところからとり出せるだけ。ショボいし使えないから、妖と戦うときは、いつもこっちの短剣。好きな動物は鳥。以上! はい次ー!」


 やたら終わりだけ元気だな⋯⋯。


 って、次は俺か。


「コアだ。能力は魔力を形にすること。⋯⋯趣味?」


 考えてみると、俺は何をすることが好きなんだ?


 寝て起きてご飯食べて妖退治。


 それのくり返しじゃないか?


 趣味なんて⋯⋯いや、好きなもの?

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