表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 四章
34/78

7話

「ハ、ハルマ、何し⋯⋯っ!」


 抗う間もなく、肌を焼くような暑さに襲われ、地面――妖の毛の上に下ろされる。


 炎がないのは、エルがそこの妖力を分解(ディサセンブル)してるからだ。

 ということは、エルも近くにいるはず。


 隣にいるハルマが、無言で俺の奥を指さす。


 つられて顔を向けると、ギラギラと目を光らせ、今にもためこんだ妖力を使いそうなエルが立っていた。


「はやく」

「あ、ああっ!」


 重低音で急かされ、声が裏返ってしまった。

 ⋯⋯恥ずかしい。


 慌ててポーチから猫じゃらしをとり出し、魔力を流す。


 エルがあんなに興奮してるのは初めてだけど、たぶん大丈夫だ。

 不機嫌になってても、狩りがいのある獲物はここにいるわけだし。


「エル!」


 俺の呼びかけに、エルが殺気のこもった視線をよこす。


 数秒間見つめあい、誘惑に負けたかのように、エルがフラフラと歩いてくる。


「グルル⋯⋯」


 落ちついたように猫じゃらしをもむエルを確認し、俺は魔力を引き上げた。


 エルがピタッと凍りついて、動きを止める。


 俺はルーティンのように、ニヤニヤとエルをのぞきこみ――たかったけど、エルが我に返ったことで、妖の肌が熱を帯びる。


 このままだと、また火傷する⋯⋯!


 俺は、まだ固まっているエルの腕をつかみ、思いっきり妖をけって空にとび上がる。

 俺らを追うように、ゴォッと火柱が上がった。


 近くの木に⋯⋯って、ない!?


 そうか、妖が燃やしちゃったからか。


 くそっ、また落ちる⋯⋯!


 今度こそは、と落下し始める前に魔力で足場を作り、トッと着地する。


「⋯⋯うわ、すごい量の妖力が僕の中にあるんだけど。こんなに暴走してたんだ」

「ああ。あの熊の妖の妖力を、一発で分解(ディサセンブル)しようとしてたしな」

「なんか悔しいけど、迷惑かけちゃったみたいだから、コレ使われても、なんとも思わないなぁ」


 エルが、はい、と猫じゃらしを差し出す。

 俺はそれを受けとって、ポーチにしまった。


 そういえば、ハルマはどこに行ったんだ?


 あれだけ速く動けるんだから、無事だとは思うけど⋯⋯。


 俺らが妖力を持ってることを知っていながら、なんで助けてくれたのか⋯⋯正直、何か裏があるとしか思えない。

 妖倒士からして、妖力を持つモノは所詮、討伐対象でしかないんだから。


「⋯⋯ぇ?」


 エルがかすれた声をもらし、どうした、と聞く間もなく、俺もハッと息をのんだ。


「グァアアァァァ⋯⋯!」


 一面にうねる、炎の海。


 その中心――俺らの真下で、熊妖が苦しげにうめいてうずくまる。


 動きが全く見られなくなったと思うと、フッと炎が消え、視界には青い残像が残った。


 俺の魔力が通らないくらい頑丈な妖が、あんなにあっけなく倒れるなんて⋯⋯!


 目の前の光景を信じられないでいるのは、俺だけじゃない。


 エルも、目を見開いて妖を見つめている。


「誰が⋯⋯」

「俺」

「「っ!」」


 二人してビクッと肩をはね上げ、バッと振り返る。


 何事もなかったように魔力の足場に立っているハルマが、不思議そうに首をかしげた。


「⋯⋯妖力と魔力は察知できるのに、気配は感じられないのか」

「ぐっ」

「うっ」


 仮面に隠れて表情は分からないけど、嫌味とかじゃなくて、心底不思議そうな様子が、余計に刺さる⋯⋯。


「まぁいい。行くぞ」


 パッとハルマが消えると、グイッと腰を持ち上げられ、視界が青から焦げた木々に変わる。


 フッと胃が浮くように感じ、顔に猛烈な風が吹きつける!


「待て待て待て! 首もげる⋯⋯! 寒い⋯⋯!」

「舌かむぞ⋯⋯って、何やってるんだ! 抵抗が大きくなるだろ!」

「風よけくらい、いいだろ!」

「我慢しろ! 落とすぞ!」

「ムリだって!」


 ギャーギャー言い合う俺らを、同じくハルマに抱えられているエルが、ニコニコしながら見ている。


 そんな視線に気づかないまま、ヒュッと風の音が変わると、すぐに地面に落とされた。


 なんとかつま先と手をつき、四つんばいで着地する。


 どうせ地面に近いなら、もっと優しく降ろしてくれたってよくないか?

 重い荷物をポイッて手放す感じだったぞ。


 まぁ、運んでくれたから、文句は言え⋯⋯言え⋯⋯ない⋯⋯けど。


 俺は、乱れた髪と服をパパッと雑に直しながら立ち上がる。


 タタタッと駆けよってくる足音に視線を上げると、アドニスたちが心配そうな表情で走ってきていた。


「大丈夫? すごい咆哮がしたし、先生たちが、血相を変えて妖訓練場に向かっていったんだけど⋯⋯」

「ハル!? 何その火傷!」

「あ、あのっ! わわ、私でよければ、応急処置します⋯⋯!」

「⋯⋯いい。大したことない」

「えいっ」

「っ! やめろ」

「痛いんじゃん」


 あっという間にハルマが囲まれ、俺ら部外者は、ペッとはじき出される。


 ⋯⋯火傷?

 あの熊妖は、ハルマが倒したって言ってたけど、そのときに?


 痛がるハルマを面白がったトゥレーラが、再び手を伸ばす。


 ズザザッと後ずさったハルマは、アドニスたちをとびこえ、逃げるように1−10の教室に入っていった。


 いつものことなのか、慣れたようにアドニスがトゥレーラをたしなめる。


 口をとがらせたトゥレーラがそっぽを向き、バッチリ俺らと目が合ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ