表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 四章
33/78

6話

「なん、だ、あれ⋯⋯」


 低くうなるソレは、巨大な熊だった。


 見上げるほどの、どころじゃない。


 俺はほぼ木のてっぺんにいるのに、二足で立っているとはいえ、すぐそこに頭が見えるくらいだ。


 動物型だから、中級?

 いや、でも、こんなデカいの、聞いたことない⋯⋯!


 一撃で木をなぎ倒せるなら、上級に入るかもしれない。


 でも、こんな危険な妖、放っておいていいのか⋯⋯?


 俺の限界は中級まで。

 身の程をわきまえて、逃げるべきなのかもしれない。


「とりあえずエルと合流してから⋯⋯って、逃げるのもムリそうだな⋯⋯っ」


 鼻をヒクつかせていた妖が、ゆっくりと顔を上げる。


 ばっちりあってしまった鋭い視線に、スッと息をのんだ。


「ガアアアアァァアアアァ!」


 森全体を揺るがす咆哮に、周囲の妖がクモの子を散らすように逃げていく。


 俺を狙って振り下ろされた爪をスレスレでかわし、その毛むくじゃらの腕にヒラリととびのる。


 一撃一撃が重い分、大振りだからかわすのは簡単だ。

 あとは、近づけるだけ近づいて、魔力で首を切断するだけだ。


 これだけデカいと、いつもの魔力濃度で刃が通るのか⋯⋯少し濃くするか。


 俺は毛に足をとられないように肩まで駆け上がり、妖の喉の前に細長いブレード状の魔力を出現させる。


 抵抗する間なんて、与えない⋯⋯!


「いけっ!」


 サッと腕を横に振って、妖の首めがけてブレードをぶつける。


 グッと食いこんだ感覚に、小さく息を吐いた。


「ガアッ!」

「なッ⋯⋯っあつッ!」


 妖が不快そうに体をゆすり、全身から炎を吹き出した。


 振り落とされないように身を低くした俺は、近距離で炎を食らい、グラリと視界が傾く。


 マズい⋯⋯! 落ちるッ⋯⋯!


 魔力で保護しようにも、炎のダメージが大きくて、うまく形にならない⋯⋯!


 十階建ての建物くらいの高さから無防備で落下、なんて、本当に洒落(しゃれ)にならないって!


 クッソ⋯⋯!

 俺は、死ぬのか⋯⋯?


 俺が、最悪の場合を覚悟したときだった。


 横からひざと肩をすくわれ、上向きだった風が横から吹きつける。


 ダンッと着地の振動を感じたあと、そっと地面に下ろされた。


 エル⋯⋯?


 いや、違う。エルの妖力じゃない。


 でも、エルの他に誰が俺を助けてくれたんだ?


 頭の中で疑問がグルグルと回っている間に、口に筒状の何かをつっこまれる。


「⋯⋯プハッ⋯⋯! あれ、痛みがひいていく⋯⋯?」

「上級薬液」


 上から降ってきた声に、バッととび起きる。


 ヤギの仮面と浴衣風の忍者装束をまとった少年が、静かに妖を見上げていた。


「ハルマティア⋯⋯!?」

「⋯⋯ハルマでいい」


 チリッと火の粉がハルマティ⋯⋯ハルマの仮面をかすめたかと思うと、グイッと首根っこ辺りの服を、後ろに引っ張られた!


 そのままフッと地面が遠のき、俺は木の枝の上に座らされる。


 妖の爪が、数秒差でさっきまで俺らがいたところにつきささる。


 ブワッとインクが広がるように、炎が周囲の草木を巻きこみながら広がっていく。


 あっぶな⋯⋯!


 ハルマが助けてくれなかったら、今頃俺は火葬まで完了していただろう。


 俺も、いつでも動けるように立ち上がる。


「ありが⋯⋯」

「エル」

「ん?」

「妖力。あんなに使うのは、まずいと思う」


 ハルマの指さした先を見ると、炎に包まれている妖の肩の一部、毛が円状に露出していた。


 あれは⋯⋯エル⋯⋯?


 今にも一気に分解(ディサセンブル)しそうなくらい興奮しているのが、遠目でもよく分かる。


 たしかに、あれだけ大きい妖の妖力を分解(ディサセンブル)するには、エルも相応の妖力が必要だ。


 ハルマが言いたいのは、さっき狼の妖に使った妖力は少なかったから、他の人にはバレなかった。けど、多く使えば、バレるぞ、ってことか。


 じゃあ、今まさに危ないんじゃ⋯⋯!?


 止める方法なら、猫じゃらしを使えばどうにかなる。


 でも、俺じゃあ、妖の肩まで行くのに時間がかかる。

 その間にエルは、妖力を使ってしまうだろう。


「止められる?」

「え? あぁ、エルに近づければ⋯⋯」

「なら、いい」


 ハルマは感情の読めない声でそう言うと、俺のひざをすくい上げた。


「ハ、ハルマ、何し⋯⋯っ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ