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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 四章
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2話

 俺はため息をつくと、観念してエルのほうへ歩いていく。


 二、三歩進んだところで、シュッと風を切る音がし、俺は反射的に後ろへとんだ。


「アンタ、誰? この、うさんくさいのの仲間?」

「アルトちゃんっ⋯⋯!」

「うさんくさい!?」


 緑がかった黒い髪を、高い位置で結んだ子が、片手にナイフを構えて、俺をにらんでくる。


 焦げ茶色のボブカットの子が、オロオロと袖を引っ張るけど、全く動じない。


 俺は、ひそかにショックを受けているエルに、自業自得だ、と冷めた視線を送り、両手を上げた。


「俺は怪しい者じゃない。今日からこの学校に通う、ただの編入生だ。俺もソイツ――エルも、1−10に入る予定だ。まだ信じられないか?」


 まだガルガルと警戒している彼女は、何か言おうと開けた口を、そっと誰かの手で塞がれた。


「ごめんね。アルトは悪い子じゃないんだ。ただ、少し警戒心が強いだけで」

「⋯⋯お前は、俺らのことを信じてくれるのか?」

「まぁ、編入生のことは聞いてたし、妖倒士の服を着てるし。危険な人ではないかなって」


 ⋯⋯つまり、完全に信じているわけではない、と。


 砂色の透き通るような髪をセンター分けにし、穏やかな顔立ちに、王子様スマイルが浮かんでる。


 どう見ても、エルよりコイツのほうがうさんくさいだろ。

 はりつけの笑顔なんて、エルで見慣れてんだよ。


 俺がじーっと白けた目を向けていたからか、彼は眉を下げた。


「そんな目で見ないでよ。僕はアドニス。この子はアスベルト、こっちの髪が短い子はセピア。⋯⋯ってあれ、ハルとレイラは?」

「ハルくんは、あそこの木陰にいるけど⋯⋯」


 アドニスの問いに、セピアがオドオドと目を泳がせながら答える。


 彼女の震える指先を目で追うと、ボーッとしている少年が、木の根元に座っていた。


 ヤギの仮面を顔につけ、青が強い紺色の髪は三つ編みにして、背中に流している。


 彼がゆっくりと首を回して俺らのほうを見ると、ピンッと張りつめた空気が漂った。


「お前、妖(くさ)い」

「っ!?」


 耳元でささやかれた低い声に、バッととびのく。


 さっきまで俺がいたところには、彼が静かにたたずんでいて、光のないヤギの瞳が俺を見つめていた。


 なんだ⋯⋯なんなんだ⋯⋯!?


 妖(くさ)い?

 いや、そんなはずない。


 俺は妖力を持っているとはいえ、見た目は人間だ。


 母さんにだってバレてないし、アドニスもアスベルトもセピアも、なんの反応もない。


 ⋯⋯まさか、コイツにはバレてるのか?


 心臓がドッドッと早鐘を打ち、背中を冷や汗が伝う。


 だとしたら、妖であるエルなんて、お見通しなんじゃないのか?


 マズいな、こんなところでバラされたら、エルは討伐されるし、俺は妖帝討伐に行かされて、その後はおはらい箱だ。

 母さんお父さんの立場も危うくなる。


 そんなのは、絶対に嫌だ。


 考えろ。どうすればいい!?


「ハル! 編入生の子だから、驚かせたらダメだよ」

「ん。あの⋯⋯」


 淡々とうなずいた彼の声に、ハッと顔を上げる。


 まさか、俺とエルのことを言う気か!?


 ああぁあああぁあどうしよう⋯⋯!?


 実力行使で口封じが一番手っとりばやいけど、アドニスたちが不審に思うよな。

 何か言って言葉をさえぎるにも、コミュ力底辺の俺じゃあ、内容が思いつかない⋯⋯!


 何か方法はっ――!


「まっ⋯⋯!」

「トゥレーラが魔力過多になっているが⋯⋯」

「えぇ!? それはやく教えてよ!」

「ごめん」


 ⋯⋯え?


 俺らのことじゃ、ない、のか⋯⋯?


 安心するのははやいと思いつつも、肩の力がぬけていくのを感じる。


「コア。なんかあったの?」


 トン、と肩をたたかれて振り向くと、エルが心配そうに俺を見ていた。


「ああ。あの紺色の髪のやつ、俺が妖力を持ってることに勘づいたみたいでさ」

「え!? ってことは僕も⋯⋯?」

「だな。無闇に能力を使うのは、やめといたほうがいいかもしれな⋯⋯」

「なんで持ってないの!」


 大声のほうを見ると、アスベルトがアドニスにつめよっているところだった。


 セピアは相変わらずオロオロと二人の顔を交互に見ていて、ヤギの仮面の少年は我関せずというふうに少し離れている。


「今日は妖退治だって分かってたよね!? アドニスがいつも持っていくから、うちらはアドニスが持ってるものだと思うじゃん!」

「ごめんって⋯⋯!」

「ごめんじゃないよ! レイラが、レイラが死んじゃうじゃん⋯⋯!」


 最後は泣きそうに声を震わせたアスベルトが、やりきれない感情のままに動くように、俺らのほうに走ってきた。


「待ってアルト!」

「ねぇ待ってって言ってるよ?」


 エルの脇を駆けぬけようとしたアスベルトの腕を、エルがつかんだ。


「エル、面倒事に⋯⋯」

「離して! 間に合うかもしれないでしょ、今からとりに行ったら!」


 アスベルトが殺気をこめて、エルをにらみつける。


 けど⋯⋯エルの顔を見た瞬間、おびえたようにペタンと座りこんでしまった。

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