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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 四章
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1話

「うぅ、寒い⋯⋯」


 俺は首に巻いたマフラーを引きよせ、ブルリと身震いをする。


 風になびいていた葉は、いつの間にか見あたらなくなっていて、枝だけが残されている。

 スッと吸った空気までもが体温を奪っていくようで、俺は首を縮めて、マフラーに顔をうずめた。


「そうかなぁ? 僕はそこまで寒くないけど⋯⋯」

「えぇ⋯⋯?」


 涼しげな顔で隣を歩く人型の妖――エルをうらやましく思いながら見上げる。


 そんな俺に気づいたエルが、困ったように苦笑いし、前を指さした。


「ほら、あと少しなんだし、我慢してよ」

「嫌だ。歩きたくない」

「ワガママ言わないの。気の合う子とか、できるかもしれないでしょ?」

「できない。俺は誰とも関わらない」


 ムスッとふくれっ面になると、エルはますます困り顔になった。


 俺らが今歩いてるのは、踏み固められてはいるものの、整備はされていない、山奥の獣道。

 耳が圧迫されるような静けさの中に、どこか神秘的な雰囲気が漂っている。


 エルが指さした先には、俺らの目的地――和風な大きい学校が建っていて、見上げるのも大変な門が大きく口を開けている。


 あーもー、行きたくないって⋯⋯。

 どうして俺が、学校に通わないといけないんだ⋯⋯。


 そりゃ、俺は十三歳だし、一般的に見れば学校に通うべきなのは分かるんだけどさ。


 なんで今なんだ。


 もう中学一年生なんて終わる時期だろ。

 一月も半ばだぞ?


 今まで何も言われたことなかったのに⋯⋯ゼータのデータを送ったせいだ。


 七柱も動き始めてるから、本部にもデータを送って、はやめに対策を考えといたほうがいいよなって、そう決めたのは俺らなんだけど。


 でもまさか、妖倒士養成学校に通わされるとは思わないだろ!


「⋯⋯帰りたい」

「本部の命令なんだから、しかたないでしょ。まだ、僕と同じクラスなだけ、よかったじゃん」


 エルにつられて足を止めると、目の前には『1−10』と書かれたプレートの教室があった。


 いや、教室? これは教室というより⋯⋯。


「小屋? 倉庫と間違えてないか?」

「でも、僕たちの教室は1−10だよ。おかしいな、こんなオンボロで、校舎からも離れたところに、僕たちが通うわけ⋯⋯」


 ドォン⋯⋯ッ。


 どこからか聞こえてきた爆発音に、エルが警戒するように木々の奥をにらみつける。


 結構遠い、な。


 爆弾か、とも思ったけど、この独特な感じは、魔力っぽい。


 妖倒士の学校なだけあって、魔力の実習でもしているのだろうか。


 それにしても、離れているはずの俺らのところでも感じられる魔力。

 相当な魔力濃度だ。


「⋯⋯この教室に人の気配は感じられない。たぶん、あっちにいるんだ」


 エルが、どうする?という視線を俺に向けてくる。


 どうするって⋯⋯校長とかへの挨拶が先じゃないのか?


 何気なく背後の校舎を振り返ると、窓いっぱいに並んだ人の頭が、ピャッと下に引っこむのが見えた。

 とはいえ、しゃがみきれていない人の髪の毛がのぞいて見えるんだけど。


 キャー⋯⋯!


「叫び声⋯⋯? って、待てエル!」


 かすかに聞こえた悲鳴に、ピクリと反応したエルが、木々の間へと消える。


 助けに行くとか、エルはたぶん、そういう正義感で動いてない。


 俺の言葉は聞こえてないみたいだったし、バッと木々の奥を振り返ったエルは、好戦的な瞳をしていた。


 この山は、妖は入ってこられないはずだけど⋯⋯エルの変わりようは、妖を狩るときのものだったからな。


「最近は、落ちついてきたと思ったんだけどな⋯⋯」


 また猫じゃらしの出番か、と口元が緩むのを感じながら、エルを追う。


 不規則に地面から生える木の幹をけって進むと、次第に人が言い争う声が聞こえてきた。


 二、三、四⋯⋯エルを除いて五人か。


「だから! うちらだけでも倒せたの! 余計なことしないで!」

「ああぁああアルトちゃん⋯⋯! 助けてもらったのは本当だってぇ⋯⋯!」

「アルトもセピアも、一旦落ちつこう。ね?」


 光がさしこむ先に出ると、そこは見渡すかぎりの平野だった。

 山の中だから、多少傾いてはいるけど、ほぼ地平線に近いところに、ポツポツと木々が立っている。


 訓練場か何かなのか、ところどころ芝生がえぐれてたり、こげていたりしていて、魔力の濃度が高い。


 この山に、こんなところがあったのか⋯⋯。


 外から見た感じだと、そんなに大きく見えなかったんだけどな。


「いや、なんか、ごめんって⋯⋯あっ、コア!」


 数人に囲まれてうろたえていたエルが、俺を見つけて、分かりやすくホッと眉を下げた。


 それとほぼ同時に、三人の少年少女がバッと振り返った。


 エルのやつ、勝手にとび出していったくせに、調子がいいよなぁ。


 俺はため息をつくと、観念してエルのほうへ歩いていく。

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