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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 三章
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8話

 エルは一瞬、顔を悲痛にゆがませたけど、すぐに真顔に戻った。


 辺りが一面、金色のスポットライトでうめつくされたように輝く。


 目を開けていられず、腕でかばう。


 光がおさまった後の光景にヒュッと息をのんでいると、突然ガンマが膝から崩れおちた。


 何が起きて⋯⋯。


「⋯⋯コ、待ってって! チョコ!」


 幼い声⋯⋯まさかあのガキ!?


 ここがゼータの作った空間だとしたら、一般人じゃ入れないはずだ。


 今きたらマズい⋯⋯確実に戦闘の邪魔になる!


 どこから出てくるのかと目を走らせていると、ゼータのわきを、茶色の丸い何かが猛スピードですりぬけた。

 ガキにつれていかれた猫妖だ。


 一直線に俺らのところに向かってきたかと思うと、グッと体を縮ませ、バネのようにとびかかってきた。


「嘘だろ⋯⋯。魔力の壁に爪がつき刺さってるんだけど⋯⋯」


 数ミリ刺さった爪を妖力で支え、必死にしがみついて、俺らを威嚇してる。


「チョコー! ⋯⋯うわぁ!?」

「うご、くな⋯⋯」


 妖に気をとられているうちに、妖を追ってきたであろうガキが、ゼータに捕らえられている。


 ゼータは一歩も動いてないから、空間操作(マニピュレーション)を使ったか、ガキが自分から突進してったか⋯⋯あーもう、最悪だ⋯⋯!


「俺に、何をした。答えろ。もし、俺に逆ら、えば、このガキがどうなる、か、分からないからな」


 恐怖で震えるガキに、ゼータが短剣をつき立てる。


「答える、答えるよ。ゼータだけが、アルファに作ってもらったモノを持ってるわけじゃない。僕も作ってもらったんだ」

「⋯⋯無償で?」

「いやいや、何とは言わないけど、差し出したよ」

「そうか。じゃあ次は⋯⋯っ!?」


 妖がハッとしたように攻撃をやめ、はねるように壁をけると、猛スピードでゼータにつっこんでいった。


「チッ! なんで俺に向かってくるんだ! ⋯⋯しまっ⋯⋯!」


 人間を捕らえているからか、反射のように、ガキをおさえていないほうの手が出てしまう。


 ゼータも、何かのダメージを受けているせいで、うまく体を動かせず、短剣の先を向けてしまった。


 マズい、刺さるぞ⋯⋯!


 俺とエルが、ゼータのところまでジャンプしようと、膝を曲げたときだった。


「ダメッ!」


 小さな影が、妖と短剣の間に滑りこむ。


 ギュッと妖と抱き上げると、力がぬけたように倒れこんだ。


 ボウゼンと腕を垂れるゼータの短剣から、何かしたたって⋯⋯まさか、血!?


「あのガキ⋯⋯!」


 妖をかばって刺されたのか!?


 タンッと地面をけって、動物たちを踏まないように着地し、ガキを抱き起こす。


 ⋯⋯背中を軽くつかれた跡がある。


 血が出ているとはいっても、そんなに傷は深くないみたいだ。


「エル、何か傷口を塞げるもの、持ってないか?」

「んー⋯⋯ってあれ? 僕、こんなの持ってたっけ?」

「ちょうどいい。それをこっちに」


 手のひらサイズの四角い絆創膏を、つまんで首をかしげるエルから奪い、ガキの傷にはりつける。


 ジワ、とうっすら血はにじんでるけど、ないよりはマシだろ。


「さて⋯⋯」


 ゴミをポケットにつっこみ、エルにガキを預けて、ゼータを見下ろす。


 ゼータは、動物に剣を向けてしまったことか、人間が体をはって動物を守ったことか、ショックを受けたように宙を見つめている。


「ゼータ。人間が身勝手に動物の命をもてあそんでいるのも事実だが、こうやって、命をかけてまで動物を守ろうとするヤツがいるのも事実だ。お前が言うこと、人間を守る立場の俺も、すごく正しいと思った」


 動物たちだって、同じ生き物だ。


 同じ地球に存在しているのに、ないがしろにしてもいいものなんて、あるのだろうか。

 捨てられるペットが増えている今、命という価値が、人間と動物では違うと、勘違いしてはいないだろうか。


 俺は、背後に積み上げられた動物たちを振り返り、エルの腕の中の子どもを見る。


「だけど、コイツみたいな人間と、そんな人間を、一緒に同じ『人間』としてまとめていいとは思えない。全部消してもいいとは思えない。⋯⋯だから、俺は人間を守る」

「⋯⋯知っていた。それでも俺の前には、蔑むような目で動物を捨てていく人間が、絶えるどころか増えていった」


 やり場のない感情を吐き出すように、ゼータが小さく息をつく。


 苦しげに顔をゆがめるゼータに、同情してしまいそうになるけど、俺は振り払うように、強く片手を上げた。


 指先に魔力を集め、剣の刃の形を作る。


「⋯⋯妖帝様、申し訳ございません⋯⋯」


 ほとんど息を吐き出すだけの言葉も切るように、腕を振り下ろす。


 首が落ちるより先にゼータに触れ、魔力を流す。


 渦巻いて俺の手のひらにおさまった水晶は、なんだか輝きがないように感じた。


 ⋯⋯ゼータは、他の妖みたいに、理由なく人間を殺していたわけじゃなかった。


 いつから動物を妖化させていたのかは知らないけど、聞いた話だけだと、捨てた人間がその動物に襲われるっていう、自業自得な展開だ。


 これからも、無責任な人間は絶えないだろうから、玩具のように扱われる動物は、増え続けるだろう。


 ゼータが妖化させて生き延びていた動物も、この辺一帯だけとはいえ、多いから、今後死んでしまう動物も多くなるだろう。


 ゼータは妖だ。人間をためらいなく殺す。


 だから、俺が退治するしかなかった。


 俺は妖倒士だから。

 人間に害を加える妖は、殺さないといけない。


 でも本当に、ゼータは人間にとって、害だったのか?


 理由があるからって、命を捨てていいことなんて、絶対にない。


 人間の中のクズだけを殺すなら、ゼータを退治する必要なんて、なかったんじゃないのか?


 ⋯⋯俺は、間違ってない、よな⋯⋯?

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