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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 三章
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5話

「⋯⋯アンタたち! 何をやってるの!」


 突然、金切り声が耳にとびこんできて、俺とエルはハッと顔を上げる。


「ここは猫を捨てる場所じゃないんだよ! 飼うと決めたなら、最後まで責任とりな!」


 白髪の短いおばあさんが、金属バットを手に、仁王立ちしていた。

 キリリと意思の強そうな目をつり上げ、俺らをにらんでいる。


 猫を捨てるって⋯⋯そんなことしてないんだけどな。


 完全に誤解されてるし、おばあさんはどいてくれなさそうだ。


「僕たちは猫を捨ててなんかいないですよ。最近猫が増えてて困るって依頼を受けて、調査にきたんです。もしお時間よろしければ、話を聞かせていただけないでしょうか」

「⋯⋯証拠は?」

「え?」

「猫を捨てていない証拠は?」


 エルが愛想のいい笑顔のまま凍りつく。


 そうなるよな⋯⋯!?


 ないものの証明って、悪魔の証明だよな?


 証明する人だって、俺とエル以外誰もいないし、そもそも人気(ひとけ)のない公園に、こんな時間にいたら、疑われて当然⋯⋯!?


 どうすればっ⋯⋯!


「⋯⋯証拠はないです」


 バッと隣を見ると、エルが真っすぐにおばあさんを見つめていた。


「ないですけど、僕たちは本当に調査にきただけなんです。この公園にきたのも初めて⋯⋯というか、別に信じてもらわなくても結構ですよ。僕たちはもうここで休みますので。猫を捨てた証拠を探すなら、ご勝手にどうぞ」


 淡々と言い放ったエルは、おばあさんに背を向けると、俺の腕をつかんで歩き始めた。


 えぇ⋯⋯?


 これ大丈夫か?


 あの金属バットで殴りかかられるんじゃ⋯⋯。


「待ちな」


 静かに、有無を言わさぬ迫力の声が、背後から引きとめる。


「ここで休むって言ったね? 体を壊すから、アタシの家にきなさい。泊めてあげるよ」


 泊めて、あげる⋯⋯?


 晩ご飯、風呂、ベッド⋯⋯と、順に頭の中をめぐる。


 野宿しなくていいんだ⋯⋯!


 期待をこめてエルの背を見つめていると、エルが肩ごしに振り返った。


 けど、強い警戒の色がにじんでいて、提案をよく思っていないことが、ありありと伝わってくる。


「⋯⋯どうして急に? あなたは僕たちを疑った。そんな僕たちを家に入れようなんて、どういった気持ちの変化です?」


 あぁ、終わった。


 こんな冷たい態度じゃ、おばあさんも泊める気、失せるだろ⋯⋯。


 ひそかに野宿を覚悟していると、植木がガサッと音を立てた。


 それを合図に、何かが動く音が波打って広がる。


「⋯⋯なんていう数⋯⋯」


 エルが驚いたように周りを見回す。


 ⋯⋯たしかに、俺らが囲まれてるの、全部妖だ。


 殺気が、さっきの猫妖に似てるな。

 ってことは、不純妖か。


 植木のすき間に見え隠れする鋭い瞳は、百をこえてる。


 一斉に襲われたら、さすがに⋯⋯!


「アンタたち逃げな⋯⋯って、うわぁ!?」

「コア! 引くよ!」


 エルが残像を残して消えたと思ったら、おばあさんをおぶってる。


 速いなぁ⋯⋯って、もう走り出してる!?


「ま、待って⋯⋯!」


 エルは普通の人間の全力くらいの速度で公園を出る。


「すまんねぇ、老いぼれの体は重いだろ?」

「いえ、全然。むしろ軽いくらいです」

「まったく、そんなこと言っても何も出ないよ? ⋯⋯あ、そこの細い道を曲がっておくれ」


 なんとか追いついた俺は、なんでもないように建物の間に入るエルを、冷たい目で見る。


 なーに素直に聞いてんだ。

 もう泊まる気だろ。俺の覚悟を返せよ!


 頭の中でエルに文句を言いながら、路地へと一歩踏み出す。


 と、急に横から何かに抱きつかれた!


 不意のことでバランスを崩し、肩を地面に打ちつける。


「いっ⋯⋯! って、エル!? お前、肩からめっちゃ血が出てるぞ!?」


 痛む肩をかばいながら身を起こすと、エルがぎこちない動きで立ち上がり、俺を守るように背に隠した。


 肩の部分が大きくさけた服は、暗闇のせいで、どれだけ血に染まっているかは分からない。


 けど、ポタッポタッと音を立てるしたたりかたは、どう考えたって危ないだろ⋯⋯!


 俺も立ち上がろうと、片膝をついたときだった。


「ニャァ」


 場違いな鳴き声が異様に反響し、俺はパッと顔を上げる。


「キサマがコアだな? 同行願おう」

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