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12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜  作者: 流暗
12の魂〜トゥエルブ・ズ・コア〜 三章
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3話

 本当に、エルは一応雇われてるんだから、ああいうときくらい大人しくしててくれよ。


 エルは妖であることを、バレたらいけないんだから⋯⋯。


「おにーちゃんたちっ、またねーっ!」


 タタタッと遠ざかっていく足音に、俺はハッと意識を戻す。


「コアおにーちゃん」

「うるさいっ」

「いたっ」


 ニヤニヤとのぞきこんでくるエルの頭を軽くはたくと、わざとらしく手でおさえた。


 エルのやつ⋯⋯ガキの雰囲気にのまれたか?


 いつもはこんなことしないだろ。


 俺が嫌がってもやめないことは⋯⋯あれ、あるな。


 だからガキは嫌いなんだ。


 自分中心に世界が回っているような態度で、相手の都合なんか、考えもしない。

 自分が拒絶されることなんてないと思ってる。


 だから、そんな態度でいられるんだ。


「あっ、そういえばさぁ。人間って屋根の下で暮らすのが一般的?なんだよね?」

「? ああ、少なくとも俺は⋯⋯」


 エルがチラチラと視線を左に動かす。


 なんだ? 何か気になることでも⋯⋯。


 何気なくエルの視線を追い、俺はサーッと血の気がひくのを感じた。


 地平線にうまるように、真っ赤な太陽が、もう姿を消そうとしている。


 我に返って見回した公園も、街灯がないせいで闇に沈みかけている。


「⋯⋯なぁ、こういうことはもっとはやく言うべきだろ」

「僕は野宿でもいいからねぇ。コアに会うまでは、外で暮らしてたし」


 あー⋯⋯妖は基本、屋根なんていらないんだったか。


 依頼の調査が終わってから、泊まるところを探そうと思ってたのに⋯⋯ここは観光地でもなんでもないんだぞ。


 近くに宿なんてあるのか? なかったら野宿?

 ご飯は? 風呂は? ベッドは?


 あぁくそっ、予想外なタイムロスだ。


「ねぇ、もう野宿でよくない?」


 エルがしびれを切らして、足元の枝を拾い上げる。


 まさか、それで火でもおこすつもりか!?


「おいエルっ、ボヤ騒ぎになるからやめろって」

「えー? でも最近冷えてきてるよ? 戦闘服じゃないし、夜はどうやって過ごすつもり?」

「それは⋯⋯」


 ガサガサッ。


 もうすっかり暗闇が支配する公園で、草をかき分けるような音が響いた。


 猫か?


 それにしては気配がおかしい⋯⋯?

 独特な気配⋯⋯そう、妖みたいな。


 困るな。この辺は妖が出るのか。


 戦闘服じゃないと、少しかすっただけで傷ができるし、俺の銀色の髪は暗闇で目立つし。


 アルファとの戦いでの傷だって、まだ万全じゃないんだ。


 できれば接触は避けたかったけど⋯⋯あからさまな殺気だ。


 敵意を向けてくる妖を、放っておくことはできない。


「⋯⋯エル」

「え、僕?」

「そうだ。こう⋯⋯ヒュッてできるだろ」

「妖使いの荒い主だなぁ」


 エルはしかたなさそうに苦笑すると、前に腕をつき出した。


 つかんで引きよせるように手首を返すと、エルの手には茶色の子猫がぶら下がっていた。


 一見すると普通のどこにでもいるような猫、だけど⋯⋯。


「妖だな」

「フシャーッ!」


 妖は意外と、その辺にいる動物と見分けがつかないヤツも多い。


 人間社会の今、うまく溶けこめたほうが、妖倒士に見つかりにくいからだ。


 住んでいた場所は人間たちに奪われ、かといって、反撃すれば妖倒士に退治される。


 それでも人間を無意味に襲う妖は絶えないわけだけど⋯⋯。


 妖倒士の俺が言うのもアレだけど、妖も大変だよな。


「⋯⋯この猫、不純妖だ」


 エルが、暴れる妖の背を見つめ、真顔でつぶやいた。


 ⋯⋯ふじゅん、よう?


「なんだそれ」

「妖の生まれ方は、今のところ二種類あるっていわれてて、妖の親から生まれる純系と、動物や植物が、途中から何かが起きて妖になる、不純系があるんだ。僕は生まれたときから妖だから、純系。この猫は、少し前に妖じゃなかった時期があるみたいだ」

「⋯⋯つまり?」


 純系と⋯⋯不純系?


 少し前に妖じゃなかった時期って、そんなの聞いたことないけどな⋯⋯?


 エルは何を考えたのか、ニーッコリと黒い笑みを浮かべた。


「アルファのときを機に、妖に関する資料を読んどいてって、渡したよね? 今どこまで読んだの?」

「⋯⋯⋯⋯だ」

「ん?」

「まだ⋯⋯一文字も、読んでない⋯⋯」


 うっ、エルの表情は変わらないのに、どんどん圧が大きくなっていってる⋯⋯!


 し、しょうがないだろ。


 あんな、机をうめつくす紙の束なんて、読む気がしなかったんだよ⋯⋯!


 アルファが暴れたせいで傷だらけになった部屋だったから、一回紙の重さで床が落ちたよな?

 今にも崩れそうだったとはいえ、紙だぞ?


 あのペラッペラな紙が⋯⋯どれだけの重さだよ⋯⋯。


「⋯⋯まぁいいよ。帰ったら、絶対に、ぜっっっっったいに読んでよ」


 エルはハァッとため息をつき、まだ手足をバタバタと振り回す妖に目を戻した。


 グッと軽く膝を曲げ、妖を持ったほうの手を遠心力で後ろに回す。


 は⋯⋯? エル、何やって⋯⋯。


「え。まっ、エル!」

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