2話
事の始まりは、一つの不可解な依頼だった。
何が嬉しいのか、満面の笑みで俺の部屋にとびこんできた、母さんが持ってきた依頼だ。
今まで俺が拒絶してきたせいで遠慮がちだった母さんの、急な変わりように戸惑いつつ、受けとった依頼書には、こう書かれていた。
『最近、近所に猫がうろついていて困っています。以前からもそれなりにいたのですが、この頃は異常すぎるくらいです。どうにかなりませんでしょうか。』
妖倒士は普段、妖退治以外にも、こんな感じの一般の依頼も受けている。
本部いわく、地域の人との交流も大事だよー、だそうだ。
それらは一般の依頼なだけあって、報酬も安いものが多いから、俺は断ってるんだけどな⋯⋯。
母さんだって分かってるから、今まで回してきたことなんてなかったのに。
なんか裏があるのか⋯⋯?
そんなことを考えながら、おそるおそる顔を上げる。
「コアもエルも、これに行ってきなさい。ほら、今日から一週間、家を修理してくれる業者さんがくるでしょ? あなたたちは基本、ずっと家にいるから邪魔になるの。これ、妖倒士の名義で本部が立てかえてくれるカードだから、これでどこかに泊まってきなさい」
「それ全部、僕が準備したやつ⋯⋯」
俺の横でエルがボソリとつぶやくと、母さんがニッコリと迫力のある笑みを向ける。
負けじとエルも、笑顔の圧力をかける。
エル、対抗しなくてもいいだろ⋯⋯。
無言の圧の戦いにたえきれなくなった俺は、母さんの手からカードをとると、エルの手を引いて、家からとび出したんだ。




